魔法が使えないメイドは同じ世界からの転生者に会いたい  ~魔法力0だけど、同じ世界からの転生者は最強魔法術士名門貴族令嬢でした~

牧野薪

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第2章:迷宮

02:ダンジョン1

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ふと気が付くと、顔を覗き込むようにメアリーが私を見つめていた。
私と同じ、赤い瞳に黒い髪。私たちの特徴だ。

「ルカ。大丈夫?」

「ごめん。少し考え事してた。」

「もう、ルカってば。ふとした隙に物思いにふけるんだから」

そう言いながら、メアリーは手にする槍をくるくると華麗に回して、私の少し前歩き、そして振り返る。
黒くて腰まである髪がさらっと揺れた。



前世の記憶を思い出した日。
つまり、栗きんとんを初めて口にしてから10年が経とうとしていた。

あの日、単なる偶然を疑った。
味は確かに、正月料理で定番の、あの、栗きんとんだった。
私は正月でしか食べられないこの1品が大好きで、前世でよく口にしていた。
なんなら、お年玉の一部を握りしめて、スーパーにまで買いに行ったほどだ。
間違いない。

次に、栗きんとんが入っていた木箱を確認してみた。
結果・・はっきりこの世界の発音で「KURIKINTON」と書いてあった。
聞き間違いではなかったのだ。
どういう経緯なのか不明だが「KURIKINTON」などと、この世界では聞かない発音だ。
私はますます、レシピを考案したという令嬢の事が気になって仕方がなかった。

彼女は、私と同じく記憶を思い出した人物ということなのだろうか。
もし、そうだとしたら、元々同じ世界にいたということになる。

それとも、別世界からインスピレーションが電波して、思いついたとか!?
それもありうるかもしれない。
なんなら、そのインスピレーション、私にも電波してほしい。

この後、銘菓「KURIKINTON」はこの世界で大流行を果たした。
私は、この栗きんとんの美味しさが多くの人々に伝わってうれしい。。。いやいや、そうではなくて。

その後、令嬢は、今までこの世界に存在しなかった、ゼリー・キャンディー・プリン・キャラメル・クレープ・アイスクリーム・シャーベット、と言った洋菓子から、豆大福、あんみつ、あんドーナツ、ぜんざい、羊羹、という和菓子に至るまで、数えるにも膨大な様々なバリエーションのスイーツを開発し、なんと前の世界そのままの発音で、広まっていたのだ。

偶然を考えるにはできすぎていた。
私は、さらにますます令嬢が気になって仕方がなかった。

しかし、令嬢と接触するには絶望的ともいう程、困難を極めるだろう。

この世界は、第1王国~第13王国まで存在する。
そして、それらを統括するのが大王国の大王という存在だ。

彼女は、第六王国に属する、貴族「シャーロット家」の一員だった。

そう。建前では。
「属している」ということになっている。

というのも、まず、彼女の母は大王の妹だ。
そのほかにも、シャーロット家には彼女の母ほどでは無いとはいえ、大王筋の血縁の者が多い。
シャーロット一族の勢力や名声は、第6王国やその他の王国と同等かそれ以上だと言われている。
いずれ、シャーロット家は第6王国を滅ぼし、大王の一番の側近になるという噂も、笑えない冗談だった。

と、いうことはつまり。

警備や魔法結界がそれはもう厳重にも張り巡らされているということになる。

私は頭をかかえた。

何故かこの世界で広まっているお菓子たちについて、どういった経緯で令嬢がレシピを考案しているのか、それはもう気になって気になって仕方ない。
でも、彼女には彼女の生き方というものがある。
むしろ「ある理由」がなければ、干渉しようなどという気はない。いや、したくない。
しかし、私には、ある下心、、ゴホゴホ、、思惑があるのであった。


「もうすぐで、学校も卒業ね。ルカ、卒業後はどうするの?」

前を歩いていたメアリーが立ち止まる。

今日は、私たちを含め卒業を控えた学生が、演習のため迷宮の初級エリアを討伐することになっていた。

「うーん。まだ保留?」

メアリーが瞬きをする。

「そうなの?てっきり、お父さん達の跡を継いで、宝石売りになるのだとばかり思ってたわ。ほら、ルカって外の世界にとても関心があるでしょう?そのショートカットの髪も、変装のためなのかと。」

私とメアリーの父は平民向けの「宝石売り」で、一族独自の黒い髪を隠し、外の一般民に成りすまして商いをしている。
魔法が使えないとなれば、宝石を盗まれる危険性があるどころか、身の危険も危うい。
また「宝石売り」は、外の世界での偵察も兼ねており、情報は随時、様々な方法で統領の元へ届けられていた。

「ううん。ほら。髪が早く乾くから楽でしょ?それに、私、短剣使いだから、短い方が戦いやすいのよ。」

俊敏性が求められる武器であるため、極力髪は短い方が良かった。
...それでもやはり、一番の理由は、髪が早く乾くからである。

「それもそうね」

メアリーはふふっと笑うと、前方遠くをみつめた。
メアリーは視力が非常によく、はるか先にある掲示板の文字もすらすらと読めるほどだ。

「あ!みんなもう集まってる!!ん...なにやってんのあの子たち???あ!爆発した!ルカ、早くいこ!」

メアリーは私の手を取り、前世では信じられない速度で駆け出した。




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