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第一章 新たなる人生
第十話 一件落着
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村長がアレンを背負い集合場所へと向かっている頃、ミーナたちやその他の子供たちに加え彼らの母親が集合場所にてアレンと村長の帰りを待っていた。
そこは、ゴブリンの話でもちきりであった。
子どもたちは好奇心旺盛なのかゴブリンに近づき、「これがゴブリンか」と興味を示している者もいれば、少し離れたところから「もう動かないよね」と怖がっている者もいた。
また、母親たちは「あの子たち無事でよかったわね」と安心する者や「どうしてこんなところにゴブリンがいるのかしら」と疑問を抱く者たちがいた。
ゴブリンに襲われた当の本人たちは母親にこっぴどく叱りつけられてる。
幸いにも軽傷者が一名で済んだ。カイルの取り巻きの一人がゴブリンから逃げている際に、転んだ時にできた小さなすり傷だけである。
ゴブリンに襲われ、死者が出なかったことが奇跡ともいえる。
「……この子って子はもう、本当に心配かけてぇ……。無事でよかったよ」
ミーナの母、リネットはそう言うと我が子を強く抱きしめた。力強くミーナを抱きしめるリネットの姿からどれほど心配していたのかが窺える。リネットの目の端にはキラリと光るもの浮かんでいた。
「ゔっ……ごめんなざああああぁい!」
初めて魔物に襲われ、ここまで逃げてきたのだ。母親に抱きしめられたことにより、込み上げてくるものがあったのだろう。声を上擦らせ泣きながら謝った。
「おばさん! 悪いのは俺なんだっ。俺が……俺がゴブリンを見に行こうって誘わなきゃ……。だ、だから……、怒るなら俺を怒ってくれ」
カイルがリネットに怒られるのを覚悟して話しかけにいく。これから悪の組織にでも殴り込みに行くかのようにカイルの顔は強張っており、両手は強く握りしめられている。
リネットはミーナを放し、カイルのもとまで歩を進めていく。リネットの表情からは怒りなど微塵も感じらず、子を想う母のような優しい表情を覗かせていた。
「誰も怒ったりなんかしてないわ。カイル、よく無事に戻ってきたわね。心配したのよ」
カイルの頭を優しく一撫でし、悪戯をした子どもを諭すような声で言う。余談であるが、リネットは村では子ども好きとして有名である。彼女は近所の子どもたちに手作りの料理を振舞ったり、怪我をした子どもの手当てなどをよくしている。
「どうしてゴブリンを見に行こうとしたの。村長に奥には行かないようにって言われてたわよね」
リネットの表情は一変し、真剣な眼差しでカイルを見つめそう問いかけた。
「そ、それは……。アレンのやつが、その……」
何か後ろめたいことでもあるのかはっきり言わず口ごもっている。
「そう、まあいいわ。村長とアレン君が戻ってきたらゆっくり話しましょう。ほら、カイルも皆のところに行っておいで」
今度はカイルの頭をクシャクシャと少し乱暴に撫で、背中を叩いて笑顔で子どもたちのもとへと送り出した。
「大丈夫よ、エレン。アレン君ならきっと無事だわ。ほら、元気出して」
まだアレンが森の奥にいると知り、先程から顔をしわくちゃにさせ涙を流しているエレンに声をかけるリネット。その様子は傍から見ると、まるで泣き叫ぶ子どもとその子どもをあやしている母親のようである。
「……して、どゔぢて、そんな事が言えるの。アレンはまだ3つなのよ。ゴブリンに襲われて無事な訳ないじゃない」
「何言ってるのっ。母親が自分の息子を信じてないでどうするのっ!」
リネットが励ますと、「そうよね」と目に涙を浮かべながら微笑み返すエレン。
村長がアレンのもとへと向かってから数十分後、森の奥から人影が見えた。
森を抜けて姿を見せたのは、アレンを助けに向かった村長であった。その背中にはぐっすりと眠っているアレンの姿も見受けられる。
「村長っ! アレンは……、アレンは無事なんですかっ」
「落ち着きなさい。ほら、この通りアレンは無事じゃよ。今はぐっすり眠っておるがの」
迫りくるエレンに少し気圧されながらもアレンを地面に寝かせて何があったのかを説明する。
村長が見つけた時には全身傷だらけであったこと、さらにゴブリンの食糧となる寸前であったこと、応急処置として足に木の棒を巻きつけたこと、そしてそれから眠ってしまったことを話した。
その話を聞いたエレンは、その場にぐったりと倒れこみ「あぁ、よかった。ありがとうございます」とお礼を言うと、アレンを抱き寄せた。
「さあ皆! 少し想定外の事が起こったが、これで魔の森の散策はお終いじゃ。村に帰るぞ」
村長が声をかけると、皆村長の後に続いていった。アレンはエレンの背中でまだ眠っている。
こうしてアレンの初めての親睦会、魔の森のの散策が幕を閉じた。
そこは、ゴブリンの話でもちきりであった。
子どもたちは好奇心旺盛なのかゴブリンに近づき、「これがゴブリンか」と興味を示している者もいれば、少し離れたところから「もう動かないよね」と怖がっている者もいた。
また、母親たちは「あの子たち無事でよかったわね」と安心する者や「どうしてこんなところにゴブリンがいるのかしら」と疑問を抱く者たちがいた。
ゴブリンに襲われた当の本人たちは母親にこっぴどく叱りつけられてる。
幸いにも軽傷者が一名で済んだ。カイルの取り巻きの一人がゴブリンから逃げている際に、転んだ時にできた小さなすり傷だけである。
ゴブリンに襲われ、死者が出なかったことが奇跡ともいえる。
「……この子って子はもう、本当に心配かけてぇ……。無事でよかったよ」
ミーナの母、リネットはそう言うと我が子を強く抱きしめた。力強くミーナを抱きしめるリネットの姿からどれほど心配していたのかが窺える。リネットの目の端にはキラリと光るもの浮かんでいた。
「ゔっ……ごめんなざああああぁい!」
初めて魔物に襲われ、ここまで逃げてきたのだ。母親に抱きしめられたことにより、込み上げてくるものがあったのだろう。声を上擦らせ泣きながら謝った。
「おばさん! 悪いのは俺なんだっ。俺が……俺がゴブリンを見に行こうって誘わなきゃ……。だ、だから……、怒るなら俺を怒ってくれ」
カイルがリネットに怒られるのを覚悟して話しかけにいく。これから悪の組織にでも殴り込みに行くかのようにカイルの顔は強張っており、両手は強く握りしめられている。
リネットはミーナを放し、カイルのもとまで歩を進めていく。リネットの表情からは怒りなど微塵も感じらず、子を想う母のような優しい表情を覗かせていた。
「誰も怒ったりなんかしてないわ。カイル、よく無事に戻ってきたわね。心配したのよ」
カイルの頭を優しく一撫でし、悪戯をした子どもを諭すような声で言う。余談であるが、リネットは村では子ども好きとして有名である。彼女は近所の子どもたちに手作りの料理を振舞ったり、怪我をした子どもの手当てなどをよくしている。
「どうしてゴブリンを見に行こうとしたの。村長に奥には行かないようにって言われてたわよね」
リネットの表情は一変し、真剣な眼差しでカイルを見つめそう問いかけた。
「そ、それは……。アレンのやつが、その……」
何か後ろめたいことでもあるのかはっきり言わず口ごもっている。
「そう、まあいいわ。村長とアレン君が戻ってきたらゆっくり話しましょう。ほら、カイルも皆のところに行っておいで」
今度はカイルの頭をクシャクシャと少し乱暴に撫で、背中を叩いて笑顔で子どもたちのもとへと送り出した。
「大丈夫よ、エレン。アレン君ならきっと無事だわ。ほら、元気出して」
まだアレンが森の奥にいると知り、先程から顔をしわくちゃにさせ涙を流しているエレンに声をかけるリネット。その様子は傍から見ると、まるで泣き叫ぶ子どもとその子どもをあやしている母親のようである。
「……して、どゔぢて、そんな事が言えるの。アレンはまだ3つなのよ。ゴブリンに襲われて無事な訳ないじゃない」
「何言ってるのっ。母親が自分の息子を信じてないでどうするのっ!」
リネットが励ますと、「そうよね」と目に涙を浮かべながら微笑み返すエレン。
村長がアレンのもとへと向かってから数十分後、森の奥から人影が見えた。
森を抜けて姿を見せたのは、アレンを助けに向かった村長であった。その背中にはぐっすりと眠っているアレンの姿も見受けられる。
「村長っ! アレンは……、アレンは無事なんですかっ」
「落ち着きなさい。ほら、この通りアレンは無事じゃよ。今はぐっすり眠っておるがの」
迫りくるエレンに少し気圧されながらもアレンを地面に寝かせて何があったのかを説明する。
村長が見つけた時には全身傷だらけであったこと、さらにゴブリンの食糧となる寸前であったこと、応急処置として足に木の棒を巻きつけたこと、そしてそれから眠ってしまったことを話した。
その話を聞いたエレンは、その場にぐったりと倒れこみ「あぁ、よかった。ありがとうございます」とお礼を言うと、アレンを抱き寄せた。
「さあ皆! 少し想定外の事が起こったが、これで魔の森の散策はお終いじゃ。村に帰るぞ」
村長が声をかけると、皆村長の後に続いていった。アレンはエレンの背中でまだ眠っている。
こうしてアレンの初めての親睦会、魔の森のの散策が幕を閉じた。
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