【再々掲】異世界召喚に巻き込まれ転移中に魔法陣から押し出され、ボッチで泣いてたらイケメン幼馴染が追いかけてきた件<改定版>

緒沢利乃

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僕と幼馴染ともふもふと

褒めてほしい

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悠真はスライムを長剣でサクッと分断して倒している。真っ二つに斬られたスライムは、パチンと弾けるように消えて鈍い色の小さい魔石をその場に残す。
くず魔石でほぼ価値はないらしいけど、大切な討伐証明なので「無限収納」に仕舞っているみたい。
でも、悠真はもうスライム五匹以上は倒してないかな? Fランクのランクアップ条件は達成しているのでは?

さて、ヒョウガは……うーん、やっぱり無理だったかなぁ。
お尻を高く上げてフリフリして、スライム目がけてガバーッと襲い掛かるけど、ふよんと逃げられる。
ザクーッとまだ短い爪で猫パンチならぬ狼パンチを繰り出すけど、ふよん。
スライムの体って柔らかいもんねー。打撃系に強いし、悠真みたいに素早く斬らないと傷もつかないよ。

僕がハラハラしてヒョウガを見守っているのと、悠真がスタタタタと足早にヒョウガに近づき、ガシッとフリフリ尻尾だけを掴んで持ち上げた。
ひー、お尻が痛そう。悠真……ヒョウガの扱いがちょっとヒドイんじゃないかな?

「ガウッ! ハナセ。ハーナーセ!」

「馬鹿か、お前は。スライム相手に何を遊んでいる」

フーリフーリと尻尾を持って左右に揺らす悠真。キャンって高い声で抗議するヒョウガ。
あー、ヒョウガ、痛そう……。悠真、動物愛護じゃないや魔獣愛護? 従魔愛護協会から訴えられるちゃうよ?

「小さいお前の攻撃は軽いし、爪で裂けるほどの威力がないなら……魔法を使え」

「ワウッ?」

「お前、風魔法……使えるだろうが」

「ガウッ! ソウダ。エアカッター、ツカウ」

悠真は掴んでいた尻尾をパッと放す。ヒョウガは鈍くさく、びたんと地面に叩きつけられた。
……ヒョウガ、大丈夫かな? ちょっと僕、不安だよ。だってヒョウガってばスライム相手に負けちゃうそうなんだもん。

もう、今日はこれぐらいにして、宿屋に帰らないかなぁ。
なんか二人とも熱血スポ根マンガみたいなオーラが見えるんだけど……。意外と二人、いや一人と一匹……いいコンビだよねぇ。
僕はふうーっと息を吐き出すと、別の草むらにしゃがんで薬草を採取するのだった。








ブラックウルフの亜種でありまだ幼体であるヒョウガは、悠真が教えてくれた通りに風魔法「エアカッター」を使って、スライムをサクッと切り裂いていく。

その後ろで、薬草採取を終えた僕がくず魔石を回収する。五匹分のスライムの魔石が回収できれば、僕の討伐依頼の目標は達成される。
あー、良かった。あとは、のんびり町のお手伝い依頼とかをして、着実にEランクを目指していこう。

「ヒョウガ」

僕が呼ぶとタタタと走ってきてお座りをするヒョウガ、尻尾も嬉しそうにブンブン。あー、かわいい、癒されるぅ。

「ありがとう。おかげでランクが上げられそう。えらいねー、えらいねー。ヒョウガはいい子、いい子」

ヒョウガを褒めながらワシャワシャと頭や背中を撫でまくる。
ヒョウガも最初は誇らしそうに「ガゥッ」と胸を反らして吠えていたけど、あんまり僕がぐりぐり撫でるから、今はヘソ天してる。
野生としてはダメな姿勢だけど、僕はその柔らかい腹毛をワシワシ撫でる。あー、気持ちいい。顔を埋めたーい!

「……凛」

いつのまにか後ろに悠真が立っていた。

「あー、悠真。ヒョウガがちゃんとスライムを倒してくたよー。これで僕もEランクになれそう。ヒョウガがうちの子になってくれてよかったよー。あー、もうヒョウガ、だーい好き」

ヒョウガの前足脇を抱き上げて、僕はヒョウガのもふもふの頬にちゅっとキスをした。

「凛!」

グイッと悠真に肩を掴まれてヒョウガと離され、ハンカチでゴシゴシと僕の唇を拭うけど……痛いよ、悠真。

「ヒョウガはバッチくないよ? ちゃんと毎日僕が洗ってるもん」

「……そういう問題じゃない」

「えー、スライムを倒してくれたお礼のちゅーだったのにぃ」

動物を飼うなら、ちゃんと飼い主は愛情表現をしてあげないといけないんだよ? スキンシップはすごく大事!

「……なら、俺も倒してくる」

「は?」

え? 何? 悠真……、あ、すごいスピードで走って行っちゃった。
ツンツンと僕の周りにあるはずの「バリア」の膜を突く。
いやぁ、悠真が魔法で張ってくれた「防壁」があるからいいけど、急にどうしたの? 迷子にならないで戻ってきてね。
だって、僕一人じゃ道がわからなくて町に戻れないもん。

僕は走って行ってしまった悠真が戻ってくるまで、ヒョウガと遊ぶことにした。
そこら辺に落ちている手ごろな枝を拾ってポイッと投げて「とってこーい」……。あれ? ヒョウガはボーっと放物線を描いて飛んでいく枝を見つめるだけ。
落ちた枝を見て、僕を見て「ワウッ」と首を傾げる。
うそ、こっちの魔獣って「取ってこい」とかしないの? フリスビーとかも興味なし? ボール遊びもしないのかな?
うーん、どうしよう。今は他の遊び、思いつかないし。
とりあえず、投げた枝を僕が拾って、もう一度「投げた枝を拾ってきてね」とヒョウガに説明してから、「とってこーい!」とポーンと枝を投げた。
明らかにヒョウガの「しょうがないなー」の表情に焦ったけど、タッと走って取りに行き投げた枝を口に咥えて僕の元へ戻ってきた。

「よーしよしよし、いい子、いい子」

もふもふの顔をかいぐりかいぐり、揉みまわす。
そんなことを何回かしてたら、悠真が戻ってきた。

「悠真ぁ。おかえりー!」

僕は大きく手を振って悠真を迎える。
あれれ? いつもはほとんど変わらない表情に、僕だけがわかるドヤ顔してませんか?

「凛。お待たせ」

「ううん。急にどこに行ってたの?」

ニヤッと口を歪めて、「無限収納」からドサドサと複数の魔獣を出し始めた。

「……っ。ひぇぇぇ」

首を大きく切り裂かれた魔獣の数々。たぶん血抜きも済んでいるだろうけど……見たくなーい。狼、鹿、熊? 最後のは……ぎゃあああああ!
僕は悠真が取り出す最後の一体を見て、涙目でヒョウガをぎゅうううと力限りに抱きしめた。
だって、それ、それ……蛇じゃーん!

「……グウッ、リン、リン。クルチィ」

ヒョウガが可愛い前足で僕の腕をタップする。
あ、ごめん。パッと手を放したら、びたんと地面に落ちるヒョウガ。
あ、ごめん。

「どうした、凛。気に入らないか?」

しょんぼりとした声で僕を見る悠真の姿に、なんか、力なく垂れ下がった耳と尻尾の幻覚が見えるようです。

「えっと……蛇、そう、蛇が……怖いかなぁ」

「サーペントか。大丈夫、もう死んでるから」

「うん、そうなんだけど。でも、これどうしたの? わざわざ探して倒したの?」

「……スライムを倒して毛玉が褒められてたから。その、俺も……」

ちょっと頬を染めてもじもじしながらそんなことを言われたら、僕の胸がきゅんっとしてしまう。
そっかぁ、僕に褒められたかったのか! 悠真ってば昔からなんでもできて当たり前だから、褒められ慣れてないのかな?
よしっ。
僕は背伸びして悠真の頭をなでなで。

「悠真、いい子、いい子」

全力で褒めてみました!
悠真は暫し呆気にとられたあと、ぎゅうっと僕を抱きしめたよ。
おおう、そんなに褒められて嬉しかったの? で、でもこちら側に僕の顔を向けちゃうと、逃げられない状態で蛇とこんにちはなんだけど……。

「ガウウッ。オレモ、タオス。ツヨイノ、タオスーッ!」

悠真に張り合ってヒョウガがばびゅんと森の中へと走って行きました。
ヒョウガか目指すのは強い魔獣がいる森の奥……。

えー、もう、帰りたいよ、僕。
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