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陰謀編 社交シーズン春②
伯爵、使用人の性格にうんざりする
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はああああぁぁぁぁぁっ。
クラークが応接室を出ていったあと、俺は深い深~いため息を吐いた。そんな主人に「かわいそうな子」を見る視線を向けるディーンとヴァスコ。
クラークは、商業ギルドで代々オールポート伯爵家が結んできた鉱山の不当な契約を繰り返さないため、ハーディング侯爵家の名前まで出してヴァゼーレから採掘される魔石の取引を優位に進める戦いを勝ち取ってきた。その報告まではいい。思ったよりもこちら側の利益が多い契約で、俺はとっても満足だ。けど、その商業ギルドで声をかけてきた人物が問題である。
プレイステッド辺境伯家の使用人、いや文官? とにかくプレイステッド辺境伯家の者だった。なんでも、オールポート伯爵領のヴァゼーレで魔石鉱山が見つかったことを知っていて、是非魔石の取引をしたいとの申し出。しかも、プレイステッド辺境伯家のご子息が王都に滞在しており、話だけでもしたい。至急、話し合いの場を設けましょう……って、爵位が上の奴にグイグイ来られてたら、役所の代官の身分で断れないだろうがっ!
おのれ~、プレイステッドの黒蛇め~っ。
「セシル様。その会合にセシル様は出席されないほうがいいのでは?」
ディーンの助言に俺はコクリと頷く。だって、その話し合いの場にはプレイステッド家の代表として奴が出席するんでしょう? 妖しい美貌のラファエルがさぁ。なんなの? その蛇の巣穴に自ら入っていくシチュエーションは? いやだよ、俺。出席したら最後、絶対無事に帰ってこれないでしょう?
「あ~でも、誰かには行ってもらわないと……。クラークは……ううん、ラファエルに対抗できないし……」
困った。オールポート家の権限があり、ヴァゼーレの魔石のやり取りができる人物で王都にいるとなると……俺しかいねぇじゃねぇか!
頭を抱えてウンウンと唸っている俺に救世主が現れる。
「セシル様。差し出がましいかもしれませんが、その話し合い、私が出席いたしましょう」
「ヴァスコ……」
「さすがにプレイステッド家の方と私では失礼になりますので、できましたら、ハーディング侯爵家のイライアス様に同席を」
「ああ! そうだな。兄上ではあの野郎の毒牙にかかるかもしれないが、イライアス様なら大丈夫!」
ヘビとマングース! 毒花に剣花! よくわからんが、イライアス様ならラファエルの悪手にはかからないと断言できる! ヴァスコのナイスな人選に俺はようやく胸を撫でおろした。
「ディーン。イライアス様に手紙を」
「はい。すぐに」
ディーンがシュパッと応接室からでていくと、ヴァスコは笑顔でにじり寄ってきた。なんだなんだ? 特別手当でも欲しいのか? いいぞ、あの黒蛇との会談を肩代わりしてくれたんだ、特別報酬ぐらい払ってやる。俺ってば、太っ腹~って、痩せたんだよっ。
「セシル様。その会合の翌日早朝にはオールポート領へと出発してください。王都にいれば別の手でプレイステッド家はセシル様と接触しようとなさるでしょう」
「うぇっ、やっぱり? 夜会は終わったし俺はいいけど、シャーロットちゃんはどうしよう?」
お友達とお茶会だ、買い物だ、観劇だ、と予定が目白押しだったはず。だけど、シャーロットちゃんだけ王都に残して俺だけ帰るのも不安です。
「お茶会や観劇の予定はお済みになっております。そのほかの予定はまだございますが……たぶんお嬢様もセシル様と一緒に領地にお戻りなることを望まれると思いますが……」
「う~ん、そうだよなぁ。王都にいてラファエルの悪巧みに嵌るわけにはいかないし……。シャーロットちゃんを連れて、早めに領地に戻ることにしよう」
そうなれば兄上や付き合いのある貴族たちにも手紙を書かなければ。あ……ルーカスはどうしよう? おっさん王子にも伝えないと、あとでグチグチうるさそうだし……。
「今日は手紙を書きまくるか……。すまないがヴァスコ、手配を頼む。でも本当に……いいのか? プレイステッド家との話し合いを任せてしまって?」
いまさらだが、あんな黒蛇に会わせてしまう苦行を押し付けた罪悪感がムクムクと湧いてきてしまった。しょんぼりと項垂れる俺の耳にヴァスコの楽しそうな声が聞こえてきて……え?
「お気になさらずに。私はとっても楽しみです。あのプレイステッド家のラファエル様が何を起こそうとしているのか。なんの目的でセシル様に近づこうとしているのか。それを特等席でじっくりと見られるのてすから、私にとってはご褒美ですよ」
「……あ、そう……」
なんじゃこいつーっ! 主人が変な奴に絡まれて困っているのに楽しんでいるだとーっ。そんなに楽しいなら特別手当なんて出さないからな! それがご褒美なら、俺からは別に報酬を出さないからなーっ!
「ヴァスコ……。お前、悪趣味だったんだな」
部屋を出るとき思わず呟いた俺に、ヴァスコはキレイに微笑んでみせた。
ウッキー! オールポート家にはマトモな使用人はいないのかーっ!
こうして、俺は予定よりも早く王都を出て領地へと帰ることになった。シャーロットちゃんには秋に王都にきたら一緒に王都を散策することを約束して許してもらい、イライアス様にはヴァゼーレでまだ採れるクズ宝石を献上することで話がついた。
ヴァスコ? なんか……話し合いに参加したあと、ものすごっく機嫌がいい。だから、怖い。ヴァスコが喜ぶほどのトラブルが今後、俺を待っているってことだもん。
ひいいいぃぃぃっ。早くおウチに帰りたぁ~い。
クラークが応接室を出ていったあと、俺は深い深~いため息を吐いた。そんな主人に「かわいそうな子」を見る視線を向けるディーンとヴァスコ。
クラークは、商業ギルドで代々オールポート伯爵家が結んできた鉱山の不当な契約を繰り返さないため、ハーディング侯爵家の名前まで出してヴァゼーレから採掘される魔石の取引を優位に進める戦いを勝ち取ってきた。その報告まではいい。思ったよりもこちら側の利益が多い契約で、俺はとっても満足だ。けど、その商業ギルドで声をかけてきた人物が問題である。
プレイステッド辺境伯家の使用人、いや文官? とにかくプレイステッド辺境伯家の者だった。なんでも、オールポート伯爵領のヴァゼーレで魔石鉱山が見つかったことを知っていて、是非魔石の取引をしたいとの申し出。しかも、プレイステッド辺境伯家のご子息が王都に滞在しており、話だけでもしたい。至急、話し合いの場を設けましょう……って、爵位が上の奴にグイグイ来られてたら、役所の代官の身分で断れないだろうがっ!
おのれ~、プレイステッドの黒蛇め~っ。
「セシル様。その会合にセシル様は出席されないほうがいいのでは?」
ディーンの助言に俺はコクリと頷く。だって、その話し合いの場にはプレイステッド家の代表として奴が出席するんでしょう? 妖しい美貌のラファエルがさぁ。なんなの? その蛇の巣穴に自ら入っていくシチュエーションは? いやだよ、俺。出席したら最後、絶対無事に帰ってこれないでしょう?
「あ~でも、誰かには行ってもらわないと……。クラークは……ううん、ラファエルに対抗できないし……」
困った。オールポート家の権限があり、ヴァゼーレの魔石のやり取りができる人物で王都にいるとなると……俺しかいねぇじゃねぇか!
頭を抱えてウンウンと唸っている俺に救世主が現れる。
「セシル様。差し出がましいかもしれませんが、その話し合い、私が出席いたしましょう」
「ヴァスコ……」
「さすがにプレイステッド家の方と私では失礼になりますので、できましたら、ハーディング侯爵家のイライアス様に同席を」
「ああ! そうだな。兄上ではあの野郎の毒牙にかかるかもしれないが、イライアス様なら大丈夫!」
ヘビとマングース! 毒花に剣花! よくわからんが、イライアス様ならラファエルの悪手にはかからないと断言できる! ヴァスコのナイスな人選に俺はようやく胸を撫でおろした。
「ディーン。イライアス様に手紙を」
「はい。すぐに」
ディーンがシュパッと応接室からでていくと、ヴァスコは笑顔でにじり寄ってきた。なんだなんだ? 特別手当でも欲しいのか? いいぞ、あの黒蛇との会談を肩代わりしてくれたんだ、特別報酬ぐらい払ってやる。俺ってば、太っ腹~って、痩せたんだよっ。
「セシル様。その会合の翌日早朝にはオールポート領へと出発してください。王都にいれば別の手でプレイステッド家はセシル様と接触しようとなさるでしょう」
「うぇっ、やっぱり? 夜会は終わったし俺はいいけど、シャーロットちゃんはどうしよう?」
お友達とお茶会だ、買い物だ、観劇だ、と予定が目白押しだったはず。だけど、シャーロットちゃんだけ王都に残して俺だけ帰るのも不安です。
「お茶会や観劇の予定はお済みになっております。そのほかの予定はまだございますが……たぶんお嬢様もセシル様と一緒に領地にお戻りなることを望まれると思いますが……」
「う~ん、そうだよなぁ。王都にいてラファエルの悪巧みに嵌るわけにはいかないし……。シャーロットちゃんを連れて、早めに領地に戻ることにしよう」
そうなれば兄上や付き合いのある貴族たちにも手紙を書かなければ。あ……ルーカスはどうしよう? おっさん王子にも伝えないと、あとでグチグチうるさそうだし……。
「今日は手紙を書きまくるか……。すまないがヴァスコ、手配を頼む。でも本当に……いいのか? プレイステッド家との話し合いを任せてしまって?」
いまさらだが、あんな黒蛇に会わせてしまう苦行を押し付けた罪悪感がムクムクと湧いてきてしまった。しょんぼりと項垂れる俺の耳にヴァスコの楽しそうな声が聞こえてきて……え?
「お気になさらずに。私はとっても楽しみです。あのプレイステッド家のラファエル様が何を起こそうとしているのか。なんの目的でセシル様に近づこうとしているのか。それを特等席でじっくりと見られるのてすから、私にとってはご褒美ですよ」
「……あ、そう……」
なんじゃこいつーっ! 主人が変な奴に絡まれて困っているのに楽しんでいるだとーっ。そんなに楽しいなら特別手当なんて出さないからな! それがご褒美なら、俺からは別に報酬を出さないからなーっ!
「ヴァスコ……。お前、悪趣味だったんだな」
部屋を出るとき思わず呟いた俺に、ヴァスコはキレイに微笑んでみせた。
ウッキー! オールポート家にはマトモな使用人はいないのかーっ!
こうして、俺は予定よりも早く王都を出て領地へと帰ることになった。シャーロットちゃんには秋に王都にきたら一緒に王都を散策することを約束して許してもらい、イライアス様にはヴァゼーレでまだ採れるクズ宝石を献上することで話がついた。
ヴァスコ? なんか……話し合いに参加したあと、ものすごっく機嫌がいい。だから、怖い。ヴァスコが喜ぶほどのトラブルが今後、俺を待っているってことだもん。
ひいいいぃぃぃっ。早くおウチに帰りたぁ~い。
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