転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

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婚約破棄編

白豚、悪人を炙り出す

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俺の実家、今は侯爵家を継いでいる兄の計らいでやって来た、婚約解消アンド婚姻決済のできるお偉い司教様、リベリオ大司教様の活躍で、無事に我が娘シャーロットちゃんとぼんくら侯爵子息の婚約が解消されました!
ついでに俺の娘を詐称するニセ乳娘とぼんくら息子の婚姻も結ばれました。
ふふふ、ここまでくれば、あとはこちらが畳み掛けるような攻撃をかますだけだ。

まずは、ちゃんと血縁関係を整理しましょうね。

「伯爵の後継ということですか?」

ニタリと笑うコーディの姿に俺は「うむ」と頷いてみせる。
ディーンは俺の前だけに一枚の紙を置くと、今まで影の薄かった大司教の爺さんの付き添いがズズイと前に出る。

「こちらは教会で使用しています血縁判明魔道具です。先ほど皆様から少量の血液を採取させていただきました」

はい、ここまでで顔色が悪くなっているのは下品ママとコーディと……なぜにシャーロットちゃんも真っ青なの?

「まずは、リトルトン侯爵ご夫妻とご子息であるギデオン様との血縁関係は証明されました」

きょとんとしているリトルトン侯爵家のみなさん。君たちは前座ですのでお気になさらずに。
はい、これはオールポート伯爵家の正式な血縁者であり後継者をハッキリさせる目的の裏に、この家に巣食った害虫を叩きだす真の目的があるのです!

「そしてこちら。オールポート伯爵様とご息女シャーロット様との血縁関係も証明されました」

黒い服を着た若い男の淡々とした声だが、俺としてはその決定的な事実、異世界で知らない白豚に成っていて娘がいたことに、内心は何とも言えない気持ちだった。
シャーロットちゃんは「ほーっ」と安堵の息を吐いていたけどね。

「……ただし、モニカ嬢とオールポート伯爵様との血縁関係は証明できませんでした。モニカ嬢はオールポート伯爵様のお子ではありません」

神に誓ってとも言わんばかりに、男は神聖印を手に握り目を瞑って祈りの言葉を口にする。

「そんなっ!」

「……ち、ちがうわっ。モニカはセシル様との子よっ!」

ニセ乳と下品ママがソファーから立ち会がり騒ぎだすし、リトルトン侯爵家は眼が飛び出るほど驚いた顔をしている。
シャーロットちゃんも口元に両手を当てて目を見開いているね。

「そして、恐ろしいことに、モニカ嬢はそちらの奥様と執事長であるコーディ殿との血縁関係が証明されました」

「嘘をつけっ!」

血縁証明では、自分にとって不都合なことがわかるかもしれないと黙っていたコーディが、真実をバラされて激高する。
顔を真っ赤にして男に襲い掛かるが、ヒラリと体を躱され、無様に床に転がった。

「ディーン」

まだ、こいつらには突きつけたい罪があるんだ、ちょっとお前押さえつけておけよ、と命じたら、ディーンの奴、眉間にシワを刻んで嫌そうにコーディの腕を後ろ手にして締め上げた。

「イテテテッ」

「はいはい、大人しくしていてくださいね」

ついでとばかりに、ギュウウウウッと強く締め上げてないか? 別にいいけど。

「あ、あなた。嘘ですわ。モニカはあなた、セシル・オールポート伯爵様の子供です」

必死だね、下品ママ。でも教会自慢の魔道具が証明しちゃったんだから、無理だよ。

「俺の子はシャーロットだけ。そもそもオールポート伯爵は亡くなった妻の家だ。オールポート伯爵家を継ぐのはシャーロットのみ」

俺は当たり前の事実を、威厳たっぷりに宣言してやった。

下品ママとニセ乳がショックを受けた顔をするのはわかるけど、なんでリトルトン侯爵家もショックを受けてんだよ。
ぼんくら息子は頭悪そうだけど、あんたたちは侯爵家なんだから、他家の事情ぐらい知っているだろう?

つまり、シャーロットちゃんとの婚約がなくなったぼんくら息子は、オールポート伯爵家に婿入りできません!
ニセ乳と結婚してこの家を乗っ取ろうとしても、そもそもオールポート伯爵家の血が入ってないから無理ゲーなの!

「モニカと結婚しても僕は伯爵になれないじゃないか! そ、そんな……。僕を騙したな!」

真実の愛とかイチャイチャしてたくせに、ぼんくら息子が険しい顔でニセ乳へ突っかかる。

「うるさいっ。今はそれどころじゃないのよ。ママ! どういうこと? わたしのパパはあそこのデブじゃないの? なんで使用人なんかがパパなのよっ」

ニセ乳がヒステリックに叫ぶが……お前、いま俺のことデブってさりげなくディスったな?
自分の娘に「使用人」とバカにされたコーディは床に転がったまま、赤い顔でワーワー喚いてうるさいから猿轡でも噛ませておけ。

「お前たちにはオールポート伯爵家を謀った罪、乗っ取ろうとした罪もあるが、それ以外にも犯した罪がある」

ギロリと俺が睨むと下品ママはビクリと体を震わせた。

「な、なにを?」

ふふふ、もうそこまでお前たちの破滅の足音が聞こえてきてるんだよ。

文字どおり、執務室の外からドカドカと歩く複数の足音と、ギャーギャーと騒ぐ罪人たちの声。
そして、ガチャリと扉がノックもなく開くと、執事服のベンジャミンの姿が見え、その後ろから鎧を着て戦闘モードの騎士たちがズカズカと部屋の中に入ってきた。
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