77 / 234
領地経営編②
領主、異世界の工事に驚く
しおりを挟む
ひょことかわいい男の子が顔を出した。
「あのっ……あの、初めまして。ぼ……私は、トレヴァー・ハーディングですっ」
顔を赤くして懸命に自己紹介をする少年。でも初対面の相手に緊張してるのか……いや白豚に慄いているのか、イライアス様のズボンを片手でしっかりと握りしめている。
兄上の子、セシル君の甥っ子だ。
俺は重たい体でよっこいしょとしゃがんで、トレヴァー君と目線を合わせると「初めまして」とご挨拶をした。
ふむ、ハーディング家の特徴である深緑色の髪は兄や父と同じだ。瞳はイライアス様と同じ紺色だが、トレヴァー君の瞳は好奇心でキラキッラしている。
ちょっと太めの眉は兄に似ているな。ふくふくとした頬を紅潮させ、俺の顔を興味深そうに見ている。
……喋る白豚だと思われていたら、どうしよう。
「セシル・オールポートだ。君の父様の弟だよ」
だから、人間だよーっ。喋る白豚じゃないよー。そのうち、ちゃんと見た目も人間になるぞー。
そんな気持ちを込めてトレヴァー君の頭を撫でる。
「セシル。君の家族も紹介してくれないか」
「ああ、そうだね兄上。……ちょっーと手を貸してくれるかな?」
しまった、うっかりとしゃがんだら、立てなくなってしまった。
兄上の大きくて肉厚な手を借りて立ち上がると、俺は後ろで様子を窺っているシャーロットちゃんを手招きした。
「ハーディング家の皆さん。この子が俺のかわいい娘、オールポート伯爵令嬢のシャーロットちゃんです!」
むふーっと満足げに娘を紹介すると、なんだか身内である後ろ陣営から冷気を感じる……なんでだ?
シャーロットちゃんはくすっと可愛く笑うと、ちょこんと膝を折ってご挨拶をする。
「シャーロット・オールポートです。ハーディング侯爵様、皆さま、どうぞよろしくお願いいたします」
うんうん、かわいい。かわいい。シャーロットちゃんはトレヴァー君に目線を合わすように屈むと、ニコリと笑顔を向ける。
「ト、トレヴァー・ハーディングです。シャーロットちゃん様、よろしくお願いします」
「シャーロットでいいですよ、トレヴァー様。仲良くしてくださいね」
「ぼっ、僕もトレヴァーでいいです!」
うわーっ、ちびっ子と美少女が和やかに微笑み合っているなんて、眼福、眼福。いやぁーっ、心が洗われますな!
イライアス様がギラギラした目でシャーロットちゃんを頭から爪先まで見ているけど、あれはたぶんデザイナーとしての性分だと思う。家庭教師のレックスよりは目線がイヤらしくないと思いたい。
「兄上。オールポートの信頼できる使用人たちです」
俺は兄上に執事長ベンジャミンと俺付きのディーン、騎士団長のハリソンを紹介する。そのあとはクラークとチャールズね。
「今回、ハーディング側からは騎士以外は連れてきていない。職人たちと魔道具師たちでかなりの人数になったからな」
「それは、ありがたいです、兄上。職人と……魔道具師?」
なんじゃそりゃ。
コテンと首を傾げる俺の耳に、「そおーれっ!」と野太いおっさんたちの声が入ってきた。
んん? なにごと?
兄上に促されゾロゾロと移動する俺たち。
着いた場所は、いずれ製糸工場を建てる予定地だけど……あれ? いつの間にか深い穴が掘られている。
「ベ、ベンジャミン。ここ、いつ掘った?」
確かまだオールポート領の職人たちは作業に着手してなかったよな? 今はロブを中心に作業工程を組んでいる真っ最中だと報告があったけど?
「いいえ。工事を始めたことも報告はありません」
ディーンは無言で首を横に振る。
「じゃ……じゃあ、誰が」
「ははははっ、セシル。ハーディング領の職人たちが持ってきた魔道具だよ。さっきラスキン博士とお会いしてね、魔道具の試運転にとここの掘削を許してもらったんだ」
兄上の言葉に改めて穴の底を見てみると、真ん中に四角い箱のようなものが置いてある。あれが、魔道具か?
「よう、セシル様」
「お早いお出でですな、セシル様」
穴を覗き込んでいた俺とは反対側にいたロブとラスキン博士が声をかけてきた。
「おう! 兄上に紹介するからラスキン博士とお前たちはこっちに来てくれ」
そして、この大穴の説明をしてください。こっちの世界の建設用車両って魔道具で全部補えるものなの?
大穴を迂回してこちらにやってきたラスキン博士とロブたちを兄上に紹介する。兄上はラスキン博士の教えを受けたことはないが、高名な学者なので名前は知っていたとのこと。うん、あとでこの爺さんが魔虫カイコを食用に改良しようとしていたことを教えてあげよう。
ロブたちは本物のお貴族様だと兄上たち、トレヴァー君にまで緊張している。
おい待て。俺だってちゃんとした伯爵様だぞーっ! ブヒーッ!
「ハーディング領から魔道具と魔道具師をできるだけ連れてきたから、工事なんてすぐに終わるぞ、セシル」
「へ? いやいや、年単位でかかるでしょ? まずは住民たちの住居と……」
「何を言っている。住居は一か月で、工場は三ヶ月で。セシルの望んだ施設とかは半年以内に作ってみせるぞ」
ニコニコ顔で自慢げに胸を反らす兄上に、俺は「ふわわわわ」と口を開けて驚くばかり。
おいおい、そんなに早く工場ができても、綿花や亜麻がまだ育ってないって!
「あのっ……あの、初めまして。ぼ……私は、トレヴァー・ハーディングですっ」
顔を赤くして懸命に自己紹介をする少年。でも初対面の相手に緊張してるのか……いや白豚に慄いているのか、イライアス様のズボンを片手でしっかりと握りしめている。
兄上の子、セシル君の甥っ子だ。
俺は重たい体でよっこいしょとしゃがんで、トレヴァー君と目線を合わせると「初めまして」とご挨拶をした。
ふむ、ハーディング家の特徴である深緑色の髪は兄や父と同じだ。瞳はイライアス様と同じ紺色だが、トレヴァー君の瞳は好奇心でキラキッラしている。
ちょっと太めの眉は兄に似ているな。ふくふくとした頬を紅潮させ、俺の顔を興味深そうに見ている。
……喋る白豚だと思われていたら、どうしよう。
「セシル・オールポートだ。君の父様の弟だよ」
だから、人間だよーっ。喋る白豚じゃないよー。そのうち、ちゃんと見た目も人間になるぞー。
そんな気持ちを込めてトレヴァー君の頭を撫でる。
「セシル。君の家族も紹介してくれないか」
「ああ、そうだね兄上。……ちょっーと手を貸してくれるかな?」
しまった、うっかりとしゃがんだら、立てなくなってしまった。
兄上の大きくて肉厚な手を借りて立ち上がると、俺は後ろで様子を窺っているシャーロットちゃんを手招きした。
「ハーディング家の皆さん。この子が俺のかわいい娘、オールポート伯爵令嬢のシャーロットちゃんです!」
むふーっと満足げに娘を紹介すると、なんだか身内である後ろ陣営から冷気を感じる……なんでだ?
シャーロットちゃんはくすっと可愛く笑うと、ちょこんと膝を折ってご挨拶をする。
「シャーロット・オールポートです。ハーディング侯爵様、皆さま、どうぞよろしくお願いいたします」
うんうん、かわいい。かわいい。シャーロットちゃんはトレヴァー君に目線を合わすように屈むと、ニコリと笑顔を向ける。
「ト、トレヴァー・ハーディングです。シャーロットちゃん様、よろしくお願いします」
「シャーロットでいいですよ、トレヴァー様。仲良くしてくださいね」
「ぼっ、僕もトレヴァーでいいです!」
うわーっ、ちびっ子と美少女が和やかに微笑み合っているなんて、眼福、眼福。いやぁーっ、心が洗われますな!
イライアス様がギラギラした目でシャーロットちゃんを頭から爪先まで見ているけど、あれはたぶんデザイナーとしての性分だと思う。家庭教師のレックスよりは目線がイヤらしくないと思いたい。
「兄上。オールポートの信頼できる使用人たちです」
俺は兄上に執事長ベンジャミンと俺付きのディーン、騎士団長のハリソンを紹介する。そのあとはクラークとチャールズね。
「今回、ハーディング側からは騎士以外は連れてきていない。職人たちと魔道具師たちでかなりの人数になったからな」
「それは、ありがたいです、兄上。職人と……魔道具師?」
なんじゃそりゃ。
コテンと首を傾げる俺の耳に、「そおーれっ!」と野太いおっさんたちの声が入ってきた。
んん? なにごと?
兄上に促されゾロゾロと移動する俺たち。
着いた場所は、いずれ製糸工場を建てる予定地だけど……あれ? いつの間にか深い穴が掘られている。
「ベ、ベンジャミン。ここ、いつ掘った?」
確かまだオールポート領の職人たちは作業に着手してなかったよな? 今はロブを中心に作業工程を組んでいる真っ最中だと報告があったけど?
「いいえ。工事を始めたことも報告はありません」
ディーンは無言で首を横に振る。
「じゃ……じゃあ、誰が」
「ははははっ、セシル。ハーディング領の職人たちが持ってきた魔道具だよ。さっきラスキン博士とお会いしてね、魔道具の試運転にとここの掘削を許してもらったんだ」
兄上の言葉に改めて穴の底を見てみると、真ん中に四角い箱のようなものが置いてある。あれが、魔道具か?
「よう、セシル様」
「お早いお出でですな、セシル様」
穴を覗き込んでいた俺とは反対側にいたロブとラスキン博士が声をかけてきた。
「おう! 兄上に紹介するからラスキン博士とお前たちはこっちに来てくれ」
そして、この大穴の説明をしてください。こっちの世界の建設用車両って魔道具で全部補えるものなの?
大穴を迂回してこちらにやってきたラスキン博士とロブたちを兄上に紹介する。兄上はラスキン博士の教えを受けたことはないが、高名な学者なので名前は知っていたとのこと。うん、あとでこの爺さんが魔虫カイコを食用に改良しようとしていたことを教えてあげよう。
ロブたちは本物のお貴族様だと兄上たち、トレヴァー君にまで緊張している。
おい待て。俺だってちゃんとした伯爵様だぞーっ! ブヒーッ!
「ハーディング領から魔道具と魔道具師をできるだけ連れてきたから、工事なんてすぐに終わるぞ、セシル」
「へ? いやいや、年単位でかかるでしょ? まずは住民たちの住居と……」
「何を言っている。住居は一か月で、工場は三ヶ月で。セシルの望んだ施設とかは半年以内に作ってみせるぞ」
ニコニコ顔で自慢げに胸を反らす兄上に、俺は「ふわわわわ」と口を開けて驚くばかり。
おいおい、そんなに早く工場ができても、綿花や亜麻がまだ育ってないって!
736
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます
水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。
しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。
このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。
そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。
俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。
順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。
家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。
だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる