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社交シーズン秋①
伯爵、城へ行く
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ど……どうしよう。
中堅貴族オールポート伯爵家に、王家からご招待状が届きました。やっほい! じゃねぇんだわっ。
しかも、使いの者はそのまま俺を王城へと連行すべく、エントランス横の待合室で茶を飲んでいる。当然、王家の紋章が入った美々しい馬車がデデーンと屋敷の玄関前に停められている。嘘だろ?
俺、ヴァスコ、ベンジャミン、ディーン、ハリソンで、真っ白な封筒と便せんを囲んで相談中。
「これって、とりあえず来いって呼び出し?」
どう読んでも、斜めに読んでも、逆さに読んでも王族から王城への召喚状で、つまり逃げられないし無視もできない。
白豚、急にお腹が痛くなりました。アタタタタタッて方法もダメ? あー、ダメですか、そうですか。ちっ。
「急いでお召替えを」
ディーンがバタバタと慌てて出て行った。
「セシル様。なにやらかしたんですか?」
ハリソンののんびりとした口調での詰問に、俺は眉をググッと寄せた。
王家には何もしていない。シャーロットちゃんとぼんくら貴族の婚約や婚約破棄に関しても、王家は関係ない。王命じゃなかったし、そもそもオールポート伯爵家なんて、王族は相手にもしていない凡庸な中堅貴族だ。
「今から兄上に相談ってわけにもいかないか……」
俺を連れて行くために使いの者が待機している。あいつを亡き者にする……なんて乱暴な作戦はやっちゃダメだし。王家の使いに手を出したら、こっちの首がチョンパするわ。
「行くしかありません。可及的速やかに」
ヴァスコの無情なセリフに俺はげええぇっと口から舌を出した。
いやさ、俺が記憶喪失でわりとこの世界の常識も忘れているとか、重要な設定を君たち忘れていないかね? 当然、王家にも報告していないセシル・オールポート記憶喪失事件。正しくは前世の記憶が生えてしまった事件を!
しかし、俺の意見は華麗にスルーされ、手際よく着替させられ身支度を整えられたら、あっという間に馬車に乗せられた。
「ちょっ、ちょっと待て! 本当に行くのか?」
王城に行くなら、せめて同行者はベンジャミンにしてくれえええぇぇぇぇぇっ!
王都屋敷の馬車の中にはミチミチに積まれた白豚一匹と、唖然茫然としているチャラ系イケメンのディーン。こちらの馬は俺のナイスなボディを見ても動揺しない逞しいお馬さんだったが、ディーンは動揺しまくりだ。
ちなみに、俺と同行しようとしていたベンジャミンは、笑顔のヴァスコに羽交い絞めにされている。なんで?
ハリソンは俺の乗った馬車とベンジャミンとを交互に見たあと、馬に飛び乗って追いかけてきた。お前、俺の護衛騎士だもんな。
こうして、白豚は王城へと出荷されたのである。ブヒブヒブヒーッ!
夜会に参加したときに通った正門ではなく、ちょっと横にズレている場所の簡素な門を通り王宮の敷地内へと入る。
……え? 正門じゃないところからって俺ってば罪人扱い? もしかして知らない間に何かやらかしていた?
ハハハ、まさか太りすぎで牢屋行とかないよね? 王都の美観を損ねたとか言いがかりでしょ?
ハッ! もしかして俺が怒涛のごとく登録している商業ギルドの利権が欲しいとか?
う~うむ、あれを取り上げられるのは、ちょっと痛いかも。だってあれ、結構使い勝手のいい臨時収入になっているのだ。
町の景観のための清掃代とか花代とか。いずれは領都クレモナから西側領地サレルノまでの乗合馬車も経営したい。あと、ライオネルに頼んで店の制服とか作ってもらったから、そのお代にも使った。
ラグジュアリーホテルは優美でクラシカルなデザインで、それぞれの役職が一目でわかるデザイン。他のホテルの職員もお揃いで動きやすいデザインにしてもらった。
トビーやヘクターたち店員の制服も作った。リタとヘレンはかわいい制服にご満悦だったので、俺の株も上がったに違いない。
そして……リベリオ大司教様たち教会関係者の祭服も作った! 普段着用だけ。式典用のは色とかデザインとか細かい決め事があるからね。シスターたちも新しい服に喜んでくれたし、炊事や掃除、孤児院のお世話用のエプロンドレスも評判がよかった。
最初はすべて無料で提供して、その後は教会関係者以外はライオネルの店で購入してもらう。へ? リベリオ大司教様への諂いがヒドイって? 当たり前だ! 強い者にはおもねる! これが中堅貴族の生き方だもん。
んで、このデザインとか役職や業務内容で制服のデザインを一部変えるとかのアイデアが商業ギルド登録案件になった、もちろん、ライオネルとの共同名義での登録です。
これら一切合切を王家に取り上げられるのはキツイなぁ。
馬車を下ろされてから考えごとをしながら歩いていたので、パッと気づくとどこのどこだかさっぱりわからなかった。
ただ、外廊下を歩いている俺の視界の中に王城が映っているということは、王城内ではない?
王宮の敷地には、王城がドンッとあって、その周りにお仕事する建物やら騎士たちの建物やら訓練場とか。お馬さんたちがいるところと、王城用の田畑や牧場まである。なんせ働いている人数が人数だからね。
高位貴族や外国のお客様をもてなす宮もあるし、王妃様や王子様、王女様それぞれの宮もある。
ここまで、俺たちを案内してきた男がコンコンと真っ白で美しい彫刻が施された扉を叩いた。
ゴクリ。俺……誰に呼び出されたんだっけ?
中堅貴族オールポート伯爵家に、王家からご招待状が届きました。やっほい! じゃねぇんだわっ。
しかも、使いの者はそのまま俺を王城へと連行すべく、エントランス横の待合室で茶を飲んでいる。当然、王家の紋章が入った美々しい馬車がデデーンと屋敷の玄関前に停められている。嘘だろ?
俺、ヴァスコ、ベンジャミン、ディーン、ハリソンで、真っ白な封筒と便せんを囲んで相談中。
「これって、とりあえず来いって呼び出し?」
どう読んでも、斜めに読んでも、逆さに読んでも王族から王城への召喚状で、つまり逃げられないし無視もできない。
白豚、急にお腹が痛くなりました。アタタタタタッて方法もダメ? あー、ダメですか、そうですか。ちっ。
「急いでお召替えを」
ディーンがバタバタと慌てて出て行った。
「セシル様。なにやらかしたんですか?」
ハリソンののんびりとした口調での詰問に、俺は眉をググッと寄せた。
王家には何もしていない。シャーロットちゃんとぼんくら貴族の婚約や婚約破棄に関しても、王家は関係ない。王命じゃなかったし、そもそもオールポート伯爵家なんて、王族は相手にもしていない凡庸な中堅貴族だ。
「今から兄上に相談ってわけにもいかないか……」
俺を連れて行くために使いの者が待機している。あいつを亡き者にする……なんて乱暴な作戦はやっちゃダメだし。王家の使いに手を出したら、こっちの首がチョンパするわ。
「行くしかありません。可及的速やかに」
ヴァスコの無情なセリフに俺はげええぇっと口から舌を出した。
いやさ、俺が記憶喪失でわりとこの世界の常識も忘れているとか、重要な設定を君たち忘れていないかね? 当然、王家にも報告していないセシル・オールポート記憶喪失事件。正しくは前世の記憶が生えてしまった事件を!
しかし、俺の意見は華麗にスルーされ、手際よく着替させられ身支度を整えられたら、あっという間に馬車に乗せられた。
「ちょっ、ちょっと待て! 本当に行くのか?」
王城に行くなら、せめて同行者はベンジャミンにしてくれえええぇぇぇぇぇっ!
王都屋敷の馬車の中にはミチミチに積まれた白豚一匹と、唖然茫然としているチャラ系イケメンのディーン。こちらの馬は俺のナイスなボディを見ても動揺しない逞しいお馬さんだったが、ディーンは動揺しまくりだ。
ちなみに、俺と同行しようとしていたベンジャミンは、笑顔のヴァスコに羽交い絞めにされている。なんで?
ハリソンは俺の乗った馬車とベンジャミンとを交互に見たあと、馬に飛び乗って追いかけてきた。お前、俺の護衛騎士だもんな。
こうして、白豚は王城へと出荷されたのである。ブヒブヒブヒーッ!
夜会に参加したときに通った正門ではなく、ちょっと横にズレている場所の簡素な門を通り王宮の敷地内へと入る。
……え? 正門じゃないところからって俺ってば罪人扱い? もしかして知らない間に何かやらかしていた?
ハハハ、まさか太りすぎで牢屋行とかないよね? 王都の美観を損ねたとか言いがかりでしょ?
ハッ! もしかして俺が怒涛のごとく登録している商業ギルドの利権が欲しいとか?
う~うむ、あれを取り上げられるのは、ちょっと痛いかも。だってあれ、結構使い勝手のいい臨時収入になっているのだ。
町の景観のための清掃代とか花代とか。いずれは領都クレモナから西側領地サレルノまでの乗合馬車も経営したい。あと、ライオネルに頼んで店の制服とか作ってもらったから、そのお代にも使った。
ラグジュアリーホテルは優美でクラシカルなデザインで、それぞれの役職が一目でわかるデザイン。他のホテルの職員もお揃いで動きやすいデザインにしてもらった。
トビーやヘクターたち店員の制服も作った。リタとヘレンはかわいい制服にご満悦だったので、俺の株も上がったに違いない。
そして……リベリオ大司教様たち教会関係者の祭服も作った! 普段着用だけ。式典用のは色とかデザインとか細かい決め事があるからね。シスターたちも新しい服に喜んでくれたし、炊事や掃除、孤児院のお世話用のエプロンドレスも評判がよかった。
最初はすべて無料で提供して、その後は教会関係者以外はライオネルの店で購入してもらう。へ? リベリオ大司教様への諂いがヒドイって? 当たり前だ! 強い者にはおもねる! これが中堅貴族の生き方だもん。
んで、このデザインとか役職や業務内容で制服のデザインを一部変えるとかのアイデアが商業ギルド登録案件になった、もちろん、ライオネルとの共同名義での登録です。
これら一切合切を王家に取り上げられるのはキツイなぁ。
馬車を下ろされてから考えごとをしながら歩いていたので、パッと気づくとどこのどこだかさっぱりわからなかった。
ただ、外廊下を歩いている俺の視界の中に王城が映っているということは、王城内ではない?
王宮の敷地には、王城がドンッとあって、その周りにお仕事する建物やら騎士たちの建物やら訓練場とか。お馬さんたちがいるところと、王城用の田畑や牧場まである。なんせ働いている人数が人数だからね。
高位貴族や外国のお客様をもてなす宮もあるし、王妃様や王子様、王女様それぞれの宮もある。
ここまで、俺たちを案内してきた男がコンコンと真っ白で美しい彫刻が施された扉を叩いた。
ゴクリ。俺……誰に呼び出されたんだっけ?
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