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社交シーズン秋①
伯爵、手紙を読む
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ガサガサとやたらと分厚い封筒から、兄上の手紙を出して読み始める。
兄上……俺へのご機嫌伺いだけで二枚も便箋を使っちゃダメだよ。相変わらずセシル愛がすごいな。
手紙の内容は、俺がおっさん王子から親友認定を勝手にされて文通友達になってしまった報告への返事だった。
「ふむふむ。ええーっ! ふ~ん」
つい、シャーロットちゃんがいない寂しさから独り言を多めに呟いてみました。むむ、イタイ行動が、ちょっと自分のメンタルにクリティカルヒットしてしまった。ディーンも涼しい顔をしていないで、主人の挙動不審な行動に反応しろっ。
じとーっと恨みがましい視線を送っていると、書類整理をしていたディーンがため息を吐いて、こちらへと顔を向けた。
「で? ハーディング侯爵様の手紙にはなんと?」
勝った! と俺はニンマリと笑顔になり、嬉々としてディーンに手紙の内容を話してやった。
つまり……ダドリー王子の兄である王太子殿下は、学園に通っていたころ兄上であるレイフ・ハーディングを側近に迎えようとスカウトしたことがあった。
その誘いを兄は……スッパリと断ったそうだ。
「断ったんですか? 王太子の誘いを?」
なかなか気持ちの良いディーンの反応に、俺は機嫌よく「うむ」と頷いた。
「ああ。ハーディング侯爵家は王太子の側近として問題ない身分だし、兄上は文武両道の貴公子だったが、やっぱり母上のことが……」
自分にそっくりなセシルだけを溺愛した、実は自己愛のみのモンスター。その歪んだ愛の前には常識やルールなんて意味をなさない。
あのババア、優秀な兄上を蹴落としてセシル君に爵位を継がせようとかしてたし。ハーディング侯爵家に伝わる家宝を自分のものとして扱って、実は何品か闇ルートで売りさばいたこともあったらしい。
兄上が学園に通っていたころは、俺はオールポート伯爵令嬢と母上との婚約攻撃に精神が参っていたはずだ。
きっと、母上のその異常な行動に兄上は侯爵家の存続を危惧して、王家には近づかなかったんだろうな。王太子の側近の身でハーディング侯爵家に何か瑕疵ができたら、それこそ責任問題で没落コース待ったなしになってしまう。
兄上は、側近辞退の理由が言えなかったため、しばらく王太子にストーカーのように纏わりつかれた。王太子が卒業するころは、兄上の婚約者問題もあって、ますます王太子の相手なんてできないから、かなり強引に断ったと手紙に書いてある。
強引? 王家に使える強引な手ってなんだろう? まさか、王太子の弱みを握って脅したとかじゃないよね?
もし、そうならその王太子の弱みを俺にも教えてください! いざとなったら俺もその弱みで……ふふふ。
「セシル様。不気味な笑い方しないでくださいよー」
「してないだろう。ちょっと悪巧みを考えていただけだ」
失礼な奴だな。
兄上の手紙には、未だに王太子と会うと側近にならなかった嫌味を言われるので、弟のダドリー王子はセシルを側近にして、兄である王太子に自慢したいのだろうと書かれていた。
子どもかっ! おっさん王子の中身は子どもかっ!
俺はなんとも言えない気持ちで八枚の便箋を丁寧に畳んだ。兄上……これ、内容は便箋一枚で足りると思います。
今日は大人しく王都屋敷でお仕事ですよ。
ラスキン博士と薬師の婆さんは毎日出かけて、夜は一緒にご飯を食べて、その後は老人二人で毎晩酒盛りをしているとヴァスコから報告を受けている。
何しにきてんだ? 昔馴染みに会いに来て、オールポート伯爵家に酒飲みにきたのか?
クラリッサ女史は王宮の敷地内にある王都図書館に足繫く通い、シャーロットちゃんの教材を作ってくれている。
知ってた? この時代の家庭教師って、自前で教え子に教材を作るんだよ。共通の教科書が発行されていないからだ。……活版印刷の技術はあるのかな?
レックスは、俺の許可が出たのでパートナーを屋敷に連れてきた。楽しそうにラブラブ生活を過ごしている。俺もパートナーくんに挨拶したよ。……地味な人だった。背は高いけどやや猫背で眼鏡をかけた短髪黒髪の色白なひょろりとした青年。うん、役所の文官ってカンジ。
そのレックスは朝、パートナーと一緒に屋敷を出て、シャーロットちゃん用のダンスシューズや初心者ダンス用の楽譜を手に入れ、午後はピアノの練習をしている。
二人の家庭教師は、とても熱心にシャーロットちゃんを教え導いてくれていて、なんちゃって父親の俺も嬉しい。
ペッタン。
オールポート伯爵家の紋章を模ったハンコを押す。
秋の社交シーズンは社交が中心……ではなくて、税金の申告という恐ろしい役目がある。俺はその書類に目を通しペッタンとハンコを押している。
緊張する仕事だよ。何度もクラークとベンジャミンと確認し、こちらに来てからはヴァスコの意見も取り入れ、いよいよ明日最終確認してもらうのだ。
誰に? そりゃ……ハーディング侯爵様である兄上と有能なその側近たちに。何度も秋の税金申告をやり遂げたハーディング前侯爵にもだ。
そう、とうとう明日、俺はハーディング侯爵家に帰る! 領地にはババアがいたために幼少期のほとんどを過ごしたハーディング侯爵の王都屋敷に!
あー、緊張するぅぅぅぅっ。
兄上……俺へのご機嫌伺いだけで二枚も便箋を使っちゃダメだよ。相変わらずセシル愛がすごいな。
手紙の内容は、俺がおっさん王子から親友認定を勝手にされて文通友達になってしまった報告への返事だった。
「ふむふむ。ええーっ! ふ~ん」
つい、シャーロットちゃんがいない寂しさから独り言を多めに呟いてみました。むむ、イタイ行動が、ちょっと自分のメンタルにクリティカルヒットしてしまった。ディーンも涼しい顔をしていないで、主人の挙動不審な行動に反応しろっ。
じとーっと恨みがましい視線を送っていると、書類整理をしていたディーンがため息を吐いて、こちらへと顔を向けた。
「で? ハーディング侯爵様の手紙にはなんと?」
勝った! と俺はニンマリと笑顔になり、嬉々としてディーンに手紙の内容を話してやった。
つまり……ダドリー王子の兄である王太子殿下は、学園に通っていたころ兄上であるレイフ・ハーディングを側近に迎えようとスカウトしたことがあった。
その誘いを兄は……スッパリと断ったそうだ。
「断ったんですか? 王太子の誘いを?」
なかなか気持ちの良いディーンの反応に、俺は機嫌よく「うむ」と頷いた。
「ああ。ハーディング侯爵家は王太子の側近として問題ない身分だし、兄上は文武両道の貴公子だったが、やっぱり母上のことが……」
自分にそっくりなセシルだけを溺愛した、実は自己愛のみのモンスター。その歪んだ愛の前には常識やルールなんて意味をなさない。
あのババア、優秀な兄上を蹴落としてセシル君に爵位を継がせようとかしてたし。ハーディング侯爵家に伝わる家宝を自分のものとして扱って、実は何品か闇ルートで売りさばいたこともあったらしい。
兄上が学園に通っていたころは、俺はオールポート伯爵令嬢と母上との婚約攻撃に精神が参っていたはずだ。
きっと、母上のその異常な行動に兄上は侯爵家の存続を危惧して、王家には近づかなかったんだろうな。王太子の側近の身でハーディング侯爵家に何か瑕疵ができたら、それこそ責任問題で没落コース待ったなしになってしまう。
兄上は、側近辞退の理由が言えなかったため、しばらく王太子にストーカーのように纏わりつかれた。王太子が卒業するころは、兄上の婚約者問題もあって、ますます王太子の相手なんてできないから、かなり強引に断ったと手紙に書いてある。
強引? 王家に使える強引な手ってなんだろう? まさか、王太子の弱みを握って脅したとかじゃないよね?
もし、そうならその王太子の弱みを俺にも教えてください! いざとなったら俺もその弱みで……ふふふ。
「セシル様。不気味な笑い方しないでくださいよー」
「してないだろう。ちょっと悪巧みを考えていただけだ」
失礼な奴だな。
兄上の手紙には、未だに王太子と会うと側近にならなかった嫌味を言われるので、弟のダドリー王子はセシルを側近にして、兄である王太子に自慢したいのだろうと書かれていた。
子どもかっ! おっさん王子の中身は子どもかっ!
俺はなんとも言えない気持ちで八枚の便箋を丁寧に畳んだ。兄上……これ、内容は便箋一枚で足りると思います。
今日は大人しく王都屋敷でお仕事ですよ。
ラスキン博士と薬師の婆さんは毎日出かけて、夜は一緒にご飯を食べて、その後は老人二人で毎晩酒盛りをしているとヴァスコから報告を受けている。
何しにきてんだ? 昔馴染みに会いに来て、オールポート伯爵家に酒飲みにきたのか?
クラリッサ女史は王宮の敷地内にある王都図書館に足繫く通い、シャーロットちゃんの教材を作ってくれている。
知ってた? この時代の家庭教師って、自前で教え子に教材を作るんだよ。共通の教科書が発行されていないからだ。……活版印刷の技術はあるのかな?
レックスは、俺の許可が出たのでパートナーを屋敷に連れてきた。楽しそうにラブラブ生活を過ごしている。俺もパートナーくんに挨拶したよ。……地味な人だった。背は高いけどやや猫背で眼鏡をかけた短髪黒髪の色白なひょろりとした青年。うん、役所の文官ってカンジ。
そのレックスは朝、パートナーと一緒に屋敷を出て、シャーロットちゃん用のダンスシューズや初心者ダンス用の楽譜を手に入れ、午後はピアノの練習をしている。
二人の家庭教師は、とても熱心にシャーロットちゃんを教え導いてくれていて、なんちゃって父親の俺も嬉しい。
ペッタン。
オールポート伯爵家の紋章を模ったハンコを押す。
秋の社交シーズンは社交が中心……ではなくて、税金の申告という恐ろしい役目がある。俺はその書類に目を通しペッタンとハンコを押している。
緊張する仕事だよ。何度もクラークとベンジャミンと確認し、こちらに来てからはヴァスコの意見も取り入れ、いよいよ明日最終確認してもらうのだ。
誰に? そりゃ……ハーディング侯爵様である兄上と有能なその側近たちに。何度も秋の税金申告をやり遂げたハーディング前侯爵にもだ。
そう、とうとう明日、俺はハーディング侯爵家に帰る! 領地にはババアがいたために幼少期のほとんどを過ごしたハーディング侯爵の王都屋敷に!
あー、緊張するぅぅぅぅっ。
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