転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

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社交シーズン秋①

伯爵、昔の恋人判明する

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ハーディング侯爵家次男のセシル・ハーディング。

白金色の艶やかな髪と紫色の麗しい瞳。天使のごとく儚げで美しいその姿。

王都の学園は全寮制で、大好きな父と兄とは手紙のやり取りで近況を報告しあい、長期休暇でも母を警戒して寮から戻らないセシルを心配して兄は頻繁に面会にも訪れた。
そのセシル君の手紙に変化が起きたのは、卒業を控えた最終学年のころらしい。

最初は、毒親モンスターである母親が一方的に押し付けてくる、オールポート伯爵令嬢との婚約話の真偽を問う手紙。父はもちろん、そんな婚約は結んでいないし、今後も結ぶつもりはないと返した。

「オールポートの者の前で言うのもなんだが、政略としても意味のない縁だからな。オールポート家の寄親もハーディング家ではないし」

その次の手紙には、セシル君の結婚の条件の確認だった。父上が考えている結婚相手がいるのか? とか、結婚相手の条件は? とか。

「別にない。レイフのときは嫡男ゆえ条件を出したが、セシルの場合は婿入りするにしろ、嫁を貰うにしろ、ハーディング家と敵対している家でなければ問題なかった。あ……あと、外国はダメだ」

「それはどうして?」

「いや……だって。外国に嫁に行ったら、会えぬではないか」

父上、かわいいか! 六〇代にもなろうかという男が、もじもじと。かわいいかっ!
しかし、セシル君はどうしてそんな手紙を父上に送っていたのだろう? 結婚に興味があるお年頃だから?

「セシルは思う相手がいた。その相手と自分の結婚が許されるかどうか知りたかったのだ」

「思う相手。つまり恋人?」

今の俺では恋愛なんて夢の話だし、忙しくてそんな時間もないけど、学生時代のセシル君だったらモテてただろうなぁ……男に。ぐぎぎぎっ、やっぱり、セシル君の恋のお相手は男なんだろうか?

「最後の手紙には、相手の名前と婚約を許してほしいとあり、卒業後はすぐに、二人で挨拶にくるとのことだった」

フンッと面白くなさそうに鼻を鳴らす父上。あれだね、娘を嫁に出す父親の姿だね。

「そ、その相手は?」

知りたいような、知りたくないような。セシル君のプライベートだけど、俺のことでもある。昔の恋人とバッタリと会ったときの心づもりのためにも、相手は知りたい。知っておくべきだ。べ、別に好奇心からでのやましい気持ちではない。

で、誰? セシル君のお相手は? 俺の知ってる人?

「セシルの相手は難儀な相手でな。ハーディング家としては申し分ない相手だったが、向こうの家は不服だったろう。気難しい家だし、王家でさえ口出しできないからな」

ゴクリ。そんな家柄の人とセシル君の結婚。あれ? でもオールポート家のせいで破談になったんだよね?

「そのぅ、俺がオールポート家に婿入りすることで、その家とは何かありましたか? ハーディング家が慰謝料払うとか?」

セシル君も被害者だが、結婚しようと約束していた相手が、いきなり伯爵令嬢と結婚してしまったその人も被害者だ。ハーディング家との婚約の話が進んでいたなら、破談になった原因のセシル君側がなんらかの責任を負ったのでは?

「いいや。婚約も何も家同士では何も話が進んでいなかったし……相手もこちらへ連絡してくることもなかった」

「へ? それって……相手も本気じゃなかったとか?」

セシル君ってば、箱入り息子だったから悪い人に騙されてしまっていたのか? 本当に愛されてましたか?

「セシル。それはないよ。お相手は未だに独身で、恋人すらいないようだ。噂では学生時代の恋人が忘れられないとも。今はどう思っているかはわからないが、セシルとのことは本気だったと思うよ」

兄上に諭すように言われて、ちょっと反省。兄上は溺愛する弟が記憶を失い心細い思いをしているだろうと心配し、父上相手にセシル君のあれやこれやを改めて尋問……ゲフゲフン、聞き出していた。だから、俺が婚約を望んだ相手のことも調べ済とのこと。

「で、その相手は?」

女性? 女性だよね? ナイスバディなお姉ちゃんタイプ? それともあざとい妹タイプ? 俺は姉妹がそんなカンジだったから、素朴な幼馴染タイプがいいですっ!

























チーン……。

男だった……セシル君の恋のお相手。

まだ、俺がリードする側だったら百歩譲って我慢できたけど……お相手のほうがリードする側だよ。天使のセシル君には絶対に無理。もしかして、そういう性癖の人には刺さるかもしれないけど、たぶんセシル君があれこれとされる側です。

チーン。

「何をがっかりしている。いい相手だぞ? ウェントブルック辺境伯の弟君だ。学園時代はまだ辺境伯の次男だったがな」

「それで、強い騎士さんなんでしょ」

「ああ。本来、辺境伯の者は王都の軟弱な騎士団なんぞ入団しないが、彼は学園卒業後騎士試験に合格し入団。輝かしい活躍で瞬く間に出世し、いまや騎士団の副団長を勤めている猛者だ」

なんで父上が誇らしげに元婚約者候補を褒めているのか知らんが、俺にとってはどうでもいい。もう、興味すらないね。

だって、騎士だろう? もわっと男臭さが匂うゴツくて筋肉モリモリの男だろう? 柔らかいところなんてなくて、メシ食って剣振って寝る! みたいな生活が至高とか思っている奴だろう?

ないない。俺との婚約? ないない。もう、絶対にないから。これからも、赤の他人のままで結構ですよーだ。

「なんじゃ、王都で会っておらんのか? ああ、記憶がないんだったっか、すぐに忘れてしまうわい。セシルが婚約を望んだ相手は、王都騎士団副団長、ルーカス・ウェントブルックだ」

ルーカス・ウェントブルック? あれ? なんか引っ掛かるけど……会ってないよね? 向こうも白豚と化したかつての恋人に声なんてかけないだろうし……。

あれれ? 
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