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元ブラック企業戦士は子供を救いたい
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さてさて、今日も朝のストーカー、イリヤさんを華麗に避けて、やってきました! アルカサル侯爵邸。
門番に挨拶して中に入り、玄関をトントン!
可愛いメイド(♂)が出てきて、案内されるままに屋敷内を歩き、昨日の応接室でソファに埋もれる俺、アゲイン。
お茶をうまうまと飲んでいると、カチャリと扉が開き、陰険冷血眼鏡イケメンのルイさんが来ました。
今日はちゃんと立ってお出迎えしよーっと。
「おはようございます」
ペコリと立礼。
「おはようございます。どうぞ、お座りください。早速ですが、雇用契約を交わしたいと思います。契約書をご確認ください」
ペラッと差し出される紙。
「ん? んん?」
……なんか、雇用条件がいろいろと変わってますが?
金額が跳ね上がっているし、出勤日も増えてますよ?
「不足ですか?」
キラーンと眼鏡の縁を輝かしてルイさんが問いかけるので、ちょいビビりながらギルドからの紹介と条件が違うことを申し出た。
「ああ、アオイさんの能力が高かったので、報酬を増やしました。仕事も増やすつもりですので、来てもらう日も増やしたいのですが……ダメですか?」
はぅっ!
クール系イケメンの、コテンと首を傾げてぇーの、あざといポーズが炸裂!
くそうっ、ギャップ萌えですな!
俺には効かないけどな!ワハハハハ!……噓です、ちょっと「きゅん」としました。
「俺は大丈夫ですけど? ギルドの方は?」
「ああ、ギルドには紹介依頼ですので、斡旋料を払えばいいのです。お気になさらずに」
「では、お願いします!」
俺は、もう一度契約書を隅々まで読んでから、サインした。
元社畜としては、契約書は鬼門なのだ!
他のブラック企業との取引で、契約書にどれだけ泣かされてきたことか……。
だから、小さい字とか紙の裏とか、不自然な改行、空欄は要注意だぞ!
俺は、一度ルイさんと別れて、庭師の爺さんのところへ。
今日は、土作りしたいって言ってたからな。
頑張って鍬で耕して肥料を撒くぜ! 美味しい野菜ができたら、おすそ分けしてもらって、宿のマッチョ夫婦に料理してもらおーっと。
どっせーい、と力仕事のあとは、キッチンに行って昼と夜の下拵えの手伝い。
料理長の新作料理の味見もして、庭師の爺さんにもらった果物を摘まみながら、デザートを作ってみたりして、楽しく美味しくお仕事しました。
お昼の賄を食べたあとは、ルイさんが迎えに来て、執務室でお仕事です。
今日も、まだまだ子供のアルカサル侯爵様が、大きい机と沢山の書類に埋もれるようにして、お仕事してます。
なんか、ホロリ。
まだ、子供なのに……。
そして、俺の目の前に翳される一枚の紙。
これって……昨日、俺が計算した収支報告書では?
「この報告書……巧みに誤魔化していましたが、不正が見つかりました」
「えっ!」
「というか、アオイさんが見つけてくれました。なので、今日は、この不正を行った者が処理した……」
ドンッと積み上げられる紙の山。
「書類の再計算をお願いします」
「……はい」
わー、正式雇用1日目から、ハードワークですね。
これも社畜の運命か?
やってやんよー! くっそーっ!
……、……、……。
「あのぅ……」
「なにか?」
座って作業する俺とは違い、立って本を持ってきたり、書類をどこかに運んだり、別の誰かに指示を出したり、子供侯爵様にお茶を淹れたりと、あらゆる業務をテキパキとこなすルイさん。
ただ……、ただ、ね。
「こんなに、黙って仕事しているんですか? いつも?」
無言ですよ。無言。シーン。
俺の会社は、音楽が流れる職場だったので、無言つーか、無音は……なんか……怖いんですが……?
「は? 普通、そうでしょう」
「ですよねー」
いやさ、アンタたち主従も喋らないのよ?
なんか、阿吽の呼吸で書類を捌いてるんですが……、侯爵様ってば、まだ子供ですよね?
ルイさんの躾の賜物? お、恐ろしいっ。
「……ルイ。アオイも。少し休憩するか?」
あ、ヤバい。
子供侯爵様に気を遣わせてしまった。
「そうですね。続けて仕事していても、効率も悪くなりますし」
いや、アンタ、仕事のことしか考えてないんかい? 子供侯爵様の成長つーか、情操教育としてどうよ? その態度?
「まだ、仕事に慣れないので、すみません」
いいよ、いいよ。俺が大人になって嫌な役をやってやるさー。
そして、今まで確かめ計算処理した書類だ。
持っていくがいい。
ドサッドサッ。
「……終わったんですか?」
「はぇ? まだ全部は終わってませんよ? やっと3分の2ぐらい?」
終わるわけねぇだろうが! あの書類のエベレストがっ。
「あのぅ……。この量は、今月までに処理してくれれば良かったのですが……」
ルイさんがちょっと引き攣りながら言う。
今月って……まだ半月残ってる。
え?
「わぁっ、すごいね! アオイ!」
おおぅ。子供侯爵様にも褒められた!
「……仕事に余裕が出来そうです」
ほんのり微笑むイケメンさん。
ん? 仕事に余裕が出来るのならば、俺は提案したいっ!
「じゃあ、少し……お休みしませんか? アルカサル侯爵様」
子供は、よく遊び! よく食べ! よく眠る!
ブラック体制をホワイトへ!
なにより、子供は外で遊ぶものですよ!
門番に挨拶して中に入り、玄関をトントン!
可愛いメイド(♂)が出てきて、案内されるままに屋敷内を歩き、昨日の応接室でソファに埋もれる俺、アゲイン。
お茶をうまうまと飲んでいると、カチャリと扉が開き、陰険冷血眼鏡イケメンのルイさんが来ました。
今日はちゃんと立ってお出迎えしよーっと。
「おはようございます」
ペコリと立礼。
「おはようございます。どうぞ、お座りください。早速ですが、雇用契約を交わしたいと思います。契約書をご確認ください」
ペラッと差し出される紙。
「ん? んん?」
……なんか、雇用条件がいろいろと変わってますが?
金額が跳ね上がっているし、出勤日も増えてますよ?
「不足ですか?」
キラーンと眼鏡の縁を輝かしてルイさんが問いかけるので、ちょいビビりながらギルドからの紹介と条件が違うことを申し出た。
「ああ、アオイさんの能力が高かったので、報酬を増やしました。仕事も増やすつもりですので、来てもらう日も増やしたいのですが……ダメですか?」
はぅっ!
クール系イケメンの、コテンと首を傾げてぇーの、あざといポーズが炸裂!
くそうっ、ギャップ萌えですな!
俺には効かないけどな!ワハハハハ!……噓です、ちょっと「きゅん」としました。
「俺は大丈夫ですけど? ギルドの方は?」
「ああ、ギルドには紹介依頼ですので、斡旋料を払えばいいのです。お気になさらずに」
「では、お願いします!」
俺は、もう一度契約書を隅々まで読んでから、サインした。
元社畜としては、契約書は鬼門なのだ!
他のブラック企業との取引で、契約書にどれだけ泣かされてきたことか……。
だから、小さい字とか紙の裏とか、不自然な改行、空欄は要注意だぞ!
俺は、一度ルイさんと別れて、庭師の爺さんのところへ。
今日は、土作りしたいって言ってたからな。
頑張って鍬で耕して肥料を撒くぜ! 美味しい野菜ができたら、おすそ分けしてもらって、宿のマッチョ夫婦に料理してもらおーっと。
どっせーい、と力仕事のあとは、キッチンに行って昼と夜の下拵えの手伝い。
料理長の新作料理の味見もして、庭師の爺さんにもらった果物を摘まみながら、デザートを作ってみたりして、楽しく美味しくお仕事しました。
お昼の賄を食べたあとは、ルイさんが迎えに来て、執務室でお仕事です。
今日も、まだまだ子供のアルカサル侯爵様が、大きい机と沢山の書類に埋もれるようにして、お仕事してます。
なんか、ホロリ。
まだ、子供なのに……。
そして、俺の目の前に翳される一枚の紙。
これって……昨日、俺が計算した収支報告書では?
「この報告書……巧みに誤魔化していましたが、不正が見つかりました」
「えっ!」
「というか、アオイさんが見つけてくれました。なので、今日は、この不正を行った者が処理した……」
ドンッと積み上げられる紙の山。
「書類の再計算をお願いします」
「……はい」
わー、正式雇用1日目から、ハードワークですね。
これも社畜の運命か?
やってやんよー! くっそーっ!
……、……、……。
「あのぅ……」
「なにか?」
座って作業する俺とは違い、立って本を持ってきたり、書類をどこかに運んだり、別の誰かに指示を出したり、子供侯爵様にお茶を淹れたりと、あらゆる業務をテキパキとこなすルイさん。
ただ……、ただ、ね。
「こんなに、黙って仕事しているんですか? いつも?」
無言ですよ。無言。シーン。
俺の会社は、音楽が流れる職場だったので、無言つーか、無音は……なんか……怖いんですが……?
「は? 普通、そうでしょう」
「ですよねー」
いやさ、アンタたち主従も喋らないのよ?
なんか、阿吽の呼吸で書類を捌いてるんですが……、侯爵様ってば、まだ子供ですよね?
ルイさんの躾の賜物? お、恐ろしいっ。
「……ルイ。アオイも。少し休憩するか?」
あ、ヤバい。
子供侯爵様に気を遣わせてしまった。
「そうですね。続けて仕事していても、効率も悪くなりますし」
いや、アンタ、仕事のことしか考えてないんかい? 子供侯爵様の成長つーか、情操教育としてどうよ? その態度?
「まだ、仕事に慣れないので、すみません」
いいよ、いいよ。俺が大人になって嫌な役をやってやるさー。
そして、今まで確かめ計算処理した書類だ。
持っていくがいい。
ドサッドサッ。
「……終わったんですか?」
「はぇ? まだ全部は終わってませんよ? やっと3分の2ぐらい?」
終わるわけねぇだろうが! あの書類のエベレストがっ。
「あのぅ……。この量は、今月までに処理してくれれば良かったのですが……」
ルイさんがちょっと引き攣りながら言う。
今月って……まだ半月残ってる。
え?
「わぁっ、すごいね! アオイ!」
おおぅ。子供侯爵様にも褒められた!
「……仕事に余裕が出来そうです」
ほんのり微笑むイケメンさん。
ん? 仕事に余裕が出来るのならば、俺は提案したいっ!
「じゃあ、少し……お休みしませんか? アルカサル侯爵様」
子供は、よく遊び! よく食べ! よく眠る!
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なにより、子供は外で遊ぶものですよ!
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