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第一章
20☓☓年7月10日、くもり
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気持ちを伝えるなんて、自己満足だと思ってた。好きだと告げる、その先に望む事は私にはない。彼女になりたいって思ってないから。隣に居られたら良いとは思うし、理解者で居たいとも思う。でも勇気がない。そもそも私と彼は、釣り合わない。私は、選ばれない人間。選ばれちゃいけない。私のネガティブなアレが、周りにいる人に良くないものを、与えるから。与えるというより……。
「またネガティブオーラ出してる」
放課後の教室。日直の仕事が終わるまでは帰れない。雑に終わらすのは嫌いだから、丁寧に日誌を書いていく。声の主を探すまでもなく。
「適当にやれないって、厄介だな」
従兄弟で幼馴染といえば少女漫画のような関係だけど、私とこの人は違う。
「私のネガティブモードに毒されないのはラッキーなの?」
「俺は、ポジティブだからね。それに女のコの憂い、気怠そうな雰囲気、良いと思うんだよなあ。それが従兄妹であっても」
「変わってるね」
「こんなふうに気楽に話せる男、ポジティブな俺、どう? そこらにいない感じ、良いと思うけどね。とはいえ、従兄妹だからお前からすれば論外だろうな」
確かにこの人は、他の人とは違う。現実的な関係性を抜きにしても。それより何より、私が好きなのは、……。
「まあ、俺とはタイプが真逆なあいつがす好きなら、しょうがないよな。でも、話した事あるわけ? あいつに限らずだけど。男子だけじゃなくて人を寄せ付けない系女子だと思われてるよね」
「うるさいよ。日誌もう書き終わるから、帰っていいよ」
「素っ気ないなあ。あ、じゃあ、あいつを呼び出しておこうか。俺、あいつのバイトが今日は休みだって聞いたから」
「そういう冷やかしがしたくてそこに居るの?」
一旦、シャーペンを置いた。おかしな文章がないかを確かめるためでもある。
「少しぐらい、あいつと接点持とうとしようよ。人生、楽しむべきだ。たとえ、アレが面倒でも」
「幸也、静かにして」
放課後の教室、二人きりのそこに誰かが近づいてくる。イヤな気配を感じた。無害な生徒ではない。悪い予感がしたから、私は気を集中する。
なんだろう、これ。ネガティブなエネルギーじゃない。端的にいえば、異様?
「おい、瑠香」
従兄弟の幸也が私の腕を掴む。意識が飛びそうになっていたらしい。
「大丈夫か?」
何かヤバイものがこちらに来る。最初は感じなかったのに、それは次第に明確に、悪意という認識に変わっていく。
目を合わしたらいけない。姿を見てはいけない。ヤバイ悪意を纏う何者かが、教室に入ってきた。幸也はすぐさま教室の入り口に向かって──
「おい、おま……、え? な……に、瑠香、ヤバイッ」
幸也の動揺と同時に床に叩きつけらる音が響き、それから嫌なニオイが鼻についた。
足が言うことをきかない。幸也の無事を確かめたいのに、椅子から立ち上がれない。異様な何者かが入り口から私を見ている。その視線で動けない。動いたらだめだと、本能が感じている。
「るか、逃げろ……」
幸也の弱々しい声。靴が擦れる音が教室に響いていて、それは教室の外に向かおうとしているようだった。
幸也は、這う力しか残っていない。私を助けようと、している。私が逃げるスキを作ろうと。
「瑠香、またあとで、な」
幸也のチカラが私を助けたのはたぶんこれが初めて。幸也がそのチカラを使ったのは何度目かわからない。世界をポジティブに変えるんだと言っていたから、使ったことがあるんだと思う。
とにかく、そこでイヤな気配は消えた。
幸也も、消えた。
「またネガティブオーラ出してる」
放課後の教室。日直の仕事が終わるまでは帰れない。雑に終わらすのは嫌いだから、丁寧に日誌を書いていく。声の主を探すまでもなく。
「適当にやれないって、厄介だな」
従兄弟で幼馴染といえば少女漫画のような関係だけど、私とこの人は違う。
「私のネガティブモードに毒されないのはラッキーなの?」
「俺は、ポジティブだからね。それに女のコの憂い、気怠そうな雰囲気、良いと思うんだよなあ。それが従兄妹であっても」
「変わってるね」
「こんなふうに気楽に話せる男、ポジティブな俺、どう? そこらにいない感じ、良いと思うけどね。とはいえ、従兄妹だからお前からすれば論外だろうな」
確かにこの人は、他の人とは違う。現実的な関係性を抜きにしても。それより何より、私が好きなのは、……。
「まあ、俺とはタイプが真逆なあいつがす好きなら、しょうがないよな。でも、話した事あるわけ? あいつに限らずだけど。男子だけじゃなくて人を寄せ付けない系女子だと思われてるよね」
「うるさいよ。日誌もう書き終わるから、帰っていいよ」
「素っ気ないなあ。あ、じゃあ、あいつを呼び出しておこうか。俺、あいつのバイトが今日は休みだって聞いたから」
「そういう冷やかしがしたくてそこに居るの?」
一旦、シャーペンを置いた。おかしな文章がないかを確かめるためでもある。
「少しぐらい、あいつと接点持とうとしようよ。人生、楽しむべきだ。たとえ、アレが面倒でも」
「幸也、静かにして」
放課後の教室、二人きりのそこに誰かが近づいてくる。イヤな気配を感じた。無害な生徒ではない。悪い予感がしたから、私は気を集中する。
なんだろう、これ。ネガティブなエネルギーじゃない。端的にいえば、異様?
「おい、瑠香」
従兄弟の幸也が私の腕を掴む。意識が飛びそうになっていたらしい。
「大丈夫か?」
何かヤバイものがこちらに来る。最初は感じなかったのに、それは次第に明確に、悪意という認識に変わっていく。
目を合わしたらいけない。姿を見てはいけない。ヤバイ悪意を纏う何者かが、教室に入ってきた。幸也はすぐさま教室の入り口に向かって──
「おい、おま……、え? な……に、瑠香、ヤバイッ」
幸也の動揺と同時に床に叩きつけらる音が響き、それから嫌なニオイが鼻についた。
足が言うことをきかない。幸也の無事を確かめたいのに、椅子から立ち上がれない。異様な何者かが入り口から私を見ている。その視線で動けない。動いたらだめだと、本能が感じている。
「るか、逃げろ……」
幸也の弱々しい声。靴が擦れる音が教室に響いていて、それは教室の外に向かおうとしているようだった。
幸也は、這う力しか残っていない。私を助けようと、している。私が逃げるスキを作ろうと。
「瑠香、またあとで、な」
幸也のチカラが私を助けたのはたぶんこれが初めて。幸也がそのチカラを使ったのは何度目かわからない。世界をポジティブに変えるんだと言っていたから、使ったことがあるんだと思う。
とにかく、そこでイヤな気配は消えた。
幸也も、消えた。
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