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【2+1】
③
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「相葉アイさん、だったよね?」
余裕を持ってありつけた学食販売の『伝説のあんぱん』に、ようやく噛り付いた時だった。
教室の奥の隅、後ろの出入り口付近がにわかに騒がしくなる予兆。能天気で高い声が、私の名前を呼ぶ。
「(……え?)」
あんぱんが口に入っている。私はもぐもぐと咀嚼を続けながら、首を横に少し傾げた。
「だから、相葉アイさんでしょ? 君」
そんなにすぐに発声できませんよ。パンを嚥下するまで、少なくともあと16秒はかかる。そんな私の黙考はお構いなしに、目の前の席に後ろ向きに跨った小柄な男子が、双眸をクリクリとさせて私を見つめている。
「ね、ね、相葉アイさん。アイちゃんって呼んでいい?」
色素の薄い髪の毛はマッシュルームみたいに切り揃えてあって、男子特有の凄味みたいなものを感じない人だと思った。
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