プレゼント・タイム

床田とこ

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【5ー1】

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 長い踏切待ちで追いついてくる生徒を掻き分けて、後ろから肩を叩かれた。見覚えのある色合いの小柄なマッシュルームが、振り返った先で揺れていた。
 
「帰る方向、こっちじゃないよね?」
 
 昼休みに見たのと変わらない笑顔が、私の目線と同じ高さでキラリと光る。真中くんも私と違って常に日向にいる人で、私と違う世界の住人だと思い知った。
 
「……真中くんは、何でも知ってるんですね」
「だからカエデでいいって。もう知らない仲じゃないでしょ」
 
 そうかな。そうだっけ。人って、何回会話の往復をしたら、知った仲になれるのだろう。
 疑問。生じた疑問には、すぐに検証する。
 
「いつから……」

「僕はね、アイちゃんのことずっと知ってるよ。一年の春から、ずっと気になってたんだ。きっかけは……まあ、あるんだけどさ。今はそれはいいや。それより……昼間はごめん」

「え……?」
 
 最近、検証が不発になることが多い。
 何となくこの真中くんと私は嚙み合わないのは分かったけれど、唐突な謝罪にまた面食らった。
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