胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第二章

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お腹パンパン、汗がたらり。熱々のほうとうを食べきって、膨らんだ腹をポンポン葉月が叩く。

「はーー満足、お腹いっぱい、美味しかったぁ」
「量が多いくらいだったね、うかうかしてると、麺が汁をすってどんどん太くなっていくし、最後の方減らなくてちょっと焦った」

「もっちもちウマウマだったよなぁ~レジの所で麺売ってたから買って帰ろっかな、父さんにも食べさせたい」
「そっか、もう夕食は家だもんね」

最後の晩餐、いや昼餐だったのだ。お盆の上の真っ黒な箸を揃えながら、未練がましく空のお椀を見つめてると、お店の人が、氷のはいったお水を新しく持ってきてくれた。

「どうぞー」
「ありがとうございます」

カラリと鳴る涼しげな音、ひんやりとした、水滴のついたコップをつかんで、勢い良く飲んだ。冷たい水が、喉を清めるみたいに通ってく。とても美味しかった。

目の前の葉月も、こくこくと水を飲んでる。ことりと、机の上に氷だけになったコップが置かれ……目と目があう。こういう時、先陣を切るのはいつも葉月ちゃん。

「さて、帰るか?」
「うん」

荷物とレシートを持って立ち上がる。忘れ物はないか、目視で確認する、もしあったとしても戻ってこれないから。
でも、日本は落とし物は、拾った人が警察へ届けてくれたり、店できちんと保管してくれたりで、ほぼ手元に戻ってくるらしいけど……本当だろうか?

本当だったら良いなと思う。もちろん、自分も拾ったらすぐに警察に届けるだろうし。そういう優しい国で在りたい。

レジへ向かい、お会計の時に、葉月ちゃんはほうとうの生麺を1袋買った。お父さんと食べるのだろう。もう、そこに今夜からは加われないのだ。

店の外に出ると、太陽が真上から燦々と熱気を発し、僕と葉月ちゃんは、はーーっとため息をはいた。それは、暑さに対してだし、次の電車に乗れば、旅が終わることをお互いに、さびしくて、言葉にできない気持ちがもれたのだ。無言で歩く道、一歩一歩駅に近づいていく。苦しい時は永遠で楽しい時は一瞬だと人は言うが、正にその通り。飛ぶように過ぎ去った楽しい日々だった。旅行だけでも楽しいのに、そこに葉月ちゃんが24時間いるのだもの、夢みたいな旅だった。

青春18きっぷ、五枚つづりの最後の1枚を改札へ通し、調度、ホームに入って来た電車に乗る。

昼時の電車は空いていて、窓が開閉できる席へ座った。もうこのまま一直線で、東京の高尾へ行くのだ。そこから家の最寄駅まで40分くらい。時間にして後、合計3時間弱。

例により、また空気クッションを葉月へ差し出し、一時間交代で使う約束をした。流れる車窓からの景色を見つめ、現実へ戻っていくのだなぁと、思った。現実といえば……

「葉月ちゃん、夏休みの課題はもう終わった?」
「え?全然終わってない」
「もし、よかったら、明日から暇をみつけて一緒にやらない?」
「でもお前、塾あるだろ?」
「う……月水金土日以外」
「うぁ、勉強漬けじゃんか、あ、俺もバイトがあるから、てか、曜日変えてもらうわお前の塾の日にあわせてシフト組んでもらえば、帰り道、会える?」
「うんうん、まってるよ」

旅は終われど、葉月ちゃんとの関係は続くのだ。それももう、永遠だと決めてる関係。

ガタゴト揺れる車内で、寄り添って座り、ぼーっとする。沢山のことを見て、感じて、話し合ってきた。
これからそれは、増えていく一方なのだとおもうと、心が満たされ、幸せだと思う。ゆっくりとまぶたを閉じて、幸せに浸る。これから行く未来に、一緒に行けることが何より嬉しい。

鉄堅は、隣で眠そうにしている葉月の肩をそっと抱いて、自分の方へ引き寄せた。揺れる電車の中で頭を固定しないと、窓にぶつけるかもしれないから。安定する位置を見つけた葉月は、スヨスヨと寝息をたてる。
好きな人が、お腹いっぱいで、寝てる顔って、何度みても飽きない。葉月は気を許してからは、よく鉄堅の前で寝てくれるので、この幸福な気持ちを味わうのはもっぱら鉄堅だけなのだ。そしてこれから先もずっと。













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