胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第一章

35

コンコンと、病室のドアをノックすると、どうぞと鉄堅のお母さんの声が聞こえた。

「失礼します、おばさん昨日は挨拶もせず帰ってごめんなさい」
「葉月ちゃん、良いのよこちらこそごめんなさいね、驚いたでしょう……あの子、葉月ちゃんを忘れるなんて本当に信じられないの、ごめんなさい」
「謝らないでください!!まぁ、忘れられたのは寂しいけど、それで嫌いにはなれないので」
「ありがとう、さ、どうぞ、昨日はお花有り難うね、病室にお花が有るだけで華やぐわ」
「良かったです」

鉄堅から反応はないので、寝てるのかとおもって、チラッとベットの方を見たけど、鉄堅はきちんと起きていたし、無言で本を読んでいた。そっか、話したくない系か。

だが、そうはさせない。

「こんにちは、鉄堅」
「どうも」
「何読んでるの?」
「……洋書」
「へぇ、どんな話?英語なの?凄いね、鉄堅昔から頭よかったもんな、俺、勉強できないから凄いなって思うよ」
「あの、申し訳ないですが」
「全然、俺たち幼馴染みなんだよ、そんなの全然気にしない」

帰れって言うんだろ、せっかく来たのに何の成果も上げれずに帰れるもんか。せめて俺の名前くらい覚えて貰わないと。

「あ、そういや煎餅買ってきたんだけど食べる?あ、でも11時か、そろそろお昼の時間だから食べない方が良いか~病院食ってどう?味ないって本当に?」
「……」

「次来るときは何か欲しいもの買ってくるよ、本は?ケーキ食べれる?商店街にあるケーキ屋のチーズケーキお勧め、うまいよ」
「君は……空気が読めないのだろうか」

鉄堅は、じろりと葉月を睨んだ。しかし、葉月はそれくらいでは怯まない。

「読まない。これから1週間毎日きちゃうもんね」
「学校はどうする」
「もちろん休むよ」
「進級できなくなるぞ」
「良いよ」
「……馬鹿な事を、何でそこまでする、君に関係ないだろ」

うーん、流石にズキズキくるなぁ。鉄堅から、関係ないなんて言われる日がこようとは。

「関係を作りたいから来るんだよ、もう一回、好きになって欲しいから」
「……」
「俺の名前覚えてよ、葉月だよ、いっつもお前は葉月ちゃんて呼んでたけど、高校生になったし、そろそろ葉月で良いよな」
「すみませんが、もう帰ってください、疲れます」

鉄堅は、そう言うと、手に持っていた本をパタンと閉じて、反対側を向いてしまった。ははっ、ダイレクトに言われたか。

「しょうがないな、じゃぁまた明日来るよ、おやすみ鉄堅」
「……」

鉄堅のお母さんが、申し訳なさそうに困った顔をしてる。

「ごめんなさい、葉月ちゃん」
「いえいえ、また明日来ます、おばさんも無理しないで、あ、これ煎餅、良かったら食べて」
「まぁ、有り難うね」

明日は流れ的に、チーズケーキにするかぁ。でも食べないと邪魔になるし、クッキーにしとこ。

おばさんに、ぺこっと頭を下げて、病室の外へ出た。

(このまま、鉄堅が思い出さなかったら……もう俺のこと好きにならないのかなぁ)

「そっか、好きにならないってことも有るのか、そりゃそうだ、だいたい、そもそも、何で俺なんかを好きなのか解らなかったし、運命のツガイももしかしたら勘違いなのかもしれないし……そっか」

恋人に戻れなくても、友達にならなれるかな、と考えて、あぁ、なるほど、と思った。

鉄堅は、友達になるのは嫌だと言ってた。何でだよって、ずっとそばにいれるなら友達の方が確実にいられるのにって思ってた。

でも、これが、違うってことか。

友達じゃ、嫌だ。誰よりも好きになってくれないと嫌だ。

そうじゃないなら、そばに居られない。

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