胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第二章

78 理想

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今回の風呂には男風呂、女風呂しかなかった。まぁ、だいたいそうなんだけど、男風呂の混み具合によってはちょっとな。
  
  鉄堅は、葉月に風呂の暖簾をくぐる前に、廊下で待っていてもらおうと声をかけた。

  「葉月ちゃん、ちょっと中見てくるからここで待ってて」
「いいよ、大丈夫だって、もぅ、お前は心配し過ぎだよ、二人で行けばいいよ」

    むしろ、その二人の一方の僕がもしかしたら一番の危険人物かもしれないしね。
    仕方なく、脱衣場にいくと、子供連れの親子が入ってるみたいで、子供の声が聞こえる。

「子供とお父さんなら大丈夫そうだね」
「おう、ちゃっちゃと入っちゃお」

    鉄堅は、なるべく葉月の脱衣をみないようにして、湯気が立ち込める風呂のドアをあける。三歳くらいの男の子と、お父さんが湯船に入ってた。しっかり腰にタオルをまいた葉月を確認したあと、二人で中に入った。 
    ペコッと頭を下げて失礼しますと、挨拶をする。男の子は誰かきたと、大きな声を出したので、お父さんは、シーッてやり取りが微笑ましい。

    身体を洗う所が丁度三つあったので、葉月ちゃんを端に寄せて身体を洗った。男の子が、興味津々でお兄ちゃんたち洗ってるねぇなんてあどけない声に癒される。

「あ、ママ来た」

    その一言に二人は同時に固まった。まて、ここは男風呂だったはず……。頭の泡を流すのが怖い。

    チラッと、鉄堅は、葉月をみた。葉月も鉄堅をみた。どうしよう。このまま頭を洗い続けて家族が出ていくのをまつか?いやだがしかし、男の子が、空気を読まずに、お兄ちゃん達ずっと洗ってるねぇ、なんて発言する。やめて。

「ママ、遅かった」
「ごめんごめん、スマホを部屋の何処に置いたか探しててさ、わりぃ」

まって、ママの声男の人なんだけど。二人はまた固まって、視線を交わす。つまりそういうことなのか。

三つ目のシャワーに、ママ?がきて、鉄堅達に声をかける。

「すみませんね、騒がしくて」
「あ、いえ、こちらこそ……親子水入らずのところへ」

「貸し切り風呂じゃないから、気を使わせたね、なに?大学生?」
「や、まだ高校生です」
「へぇ、何処から来たの?」
「東京です」
「あら、一緒だ」

ママ、凄い喋りかけてくるんですけど!?

「マーマはやくっ!! 」

男の子がトテテテと、こちらに来て、ママに抱きついた。

「ごめんごめん、ちょっとまってね、君達も遠慮せず温泉に入ってね」
「はい、ありがとうございます」

    そっか、僕たちが固まってたから気を使って話しかけてくれたのかと、ホッとする。

   ようやく、鉄堅と葉月は、頭を洗い終え、湯船へ浸かった。いっしょに、男の子を抱っこしたママらしき男性も入ってくる。予想以上に背が高くてびっくり。長い髪に隠された顔は、なかなかのイケメンだった。

「あ、あのっ」

珍しく葉月が、ママに声をかけた。

「あの、その子、あなたが産んだんですか?」

ママは、一瞬、表情を固くしたけど、葉月の真剣な様子に、こくりとうなずいた。

「そうだよ、俺が産んだ」
「あのっ……俺も、えっと、オメガで、その、あなたもオメガなのかなって」

ママは、優しい顔で、そっかと、呟いた。

「男オメガって、あんまりいないもんな、うん、俺もオメガだよ、そんで旦那がアルファ、チビはまだわからないけどアルファぽいと思ってる」

「そうなんですね」

男の子をあやしながら答えてくれて、葉月はニコッと男の子に微笑んだ。

「ママ、お兄ちゃん可愛いね」
「あらら、一目惚れか? だめだぞ、この子はもう恋人いるから、後ろの子、恋人?」

ママが、鉄堅をみる。鉄堅は、すぐに頷いた。その様子をみて、ママはそっかそっかと、旦那にもたれかかった。

「高校生のカップルだってさ、可愛いね」
「懐かしいな、俺達も高校からの付き合いなんだよ、もう10年前か」

旦那さんが、ぽんと、ママさんの頭を撫でるのが愛し合ってる感じが滲み出てる。

「そうなんですね、ずっと……素敵だな」
「ありがとう、君達も早くツガイになれるといいね、彼氏君がんばれよ」
「はい」

鉄堅は緊張した面持ちで頷く。自分の理想が具現化したみたいな家族に、憧れを抱かずにいられなかった。






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