辺境の地へ飛ばされたオメガ軍医は、最強将軍に溺愛される

夜鳥すぱり

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 リュカとリズの周りにハートが飛び回るのが見えるようだと、ゼクスは、虚ろな目をした。二人が近づいてきても、足を組んで頬杖をついたままだった。

まわりの者が、敬礼の姿勢をとるなか、ゼクスはぶすっとして、ピクリとも動かない。咎めるなら咎めりゃいいだろと言わんばかりである。

動かないのは、怪我のせいだと思ったリズが、気遣わしげな顔をする。

「ゼクスさん、お加減はいかがですか」

リズの問いに、ギロリと睨む。

「お加減はいかがですかじゃないよ、先生、、どんだけ、どんだけ心配したと思ってるんだよ、あんたは俺の目の前で拐われて、行方不明で、俺は探しにさえいけなくて、無事に保護されたと思ったら、面会謝絶の、俺らには居場所さえ教えて貰えない、それがここ数日のことで、その間どんだけやきもきしたか、それなのに、そんなラブラブな感じで」

リュカと繋いでいる手を指差した。リズは、あわてて繋いだ手を離そうとしたが、リュカは余計に力を込め、リズを責めるものは何人たりとも許さんみたいな顔でゼクスを睨み付けた。

「へぇ、自分が弱くてこの人を危険なめに合わせといてよくそんな口が聞ける」

「だからっ、怒ってんだよ自分にも、あわせてくれなかった、あんたにも!!ずっと、心配だったんだ、それなのに、こんないちゃこら見せられたら、あーーーっ、どうせ、俺は心が狭いよ、ちくしょう…でも、先生が無事でよかった」


へにゃりと、ゼクスは笑った。苦笑とも、笑顔とも違う、複雑な顔で。


心配だったのだ、相手は人の命など簡単に奪い罪悪感すら感じないような男達だったから。そんなものに、リズを奪われて、なのに、自分は役に立てず、ベッドで寝ているしか出来ず、悔しくて悔しくて、無事に保護されたとの一報を受けたとき、どれ程、天に感謝したか。

でも、そんな想いは、先生にとってはどうでもいい事だったんだなと、幸せを振り撒いて歩いてくる姿をみて、少しだけ、ムカついた。

自分ばかりが思って、思いに返ってくる思いがない。でも、それはリズに何の咎も無いこと。


(どうせ俺の片思いだよ、オーピーなんかに敵うわけない、解ってたさ、解ってたけど、目の前で見せ付けなくても良いだろ)

ぷいっと、横を向くと、フンッと、鼻でリュカに嗤われる。

「フンッ、くだらない」

「なんだと」

「ちょ、どうして喧嘩になるんですか、謝るのは僕の方です、あの時僕が誰かに知らせに行けば良かったのに」

「リズは、謝らなくていい、悪いのはコイツだ」

「は?」

「お前は、自分に価値があると思ってたからリズを行かせた、いざとなったら自分が捕まればいいと、むしろそこでリズの代わりに連れ去られれば、英雄にでもなれると思ったか?」

「リュカさん!!」

「てめぇ」


ギロっと、ゼクスはリュカを居殺しそうな瞳で睨む。だが、リュカの方が冷えきった瞳をしていた。

「違うのか?自分でなくリズを連れ去られた時、お前は自分が無価値だと烙印を押された、そのへし折られたプライドのつけをな擦り付けようとしてないか」

ゼクスは、ごくりと、唾を飲み込んだ。そんなこと、思ってないと言い返したかったが、自分の怒りの根底は、いつも自分を軽んじられる事に起因してきた、あの時、俺は、自分が選ばれると思っていた。ドラクロン王国の皇子という、恥を、実は、根底では誇っていたのだろうか。

「ちくしょ、わかんねーよ」

「解らないのか、馬鹿め」

「リュカさんっ!!やめてくださいってば、そんなこと無いです、そんなこと考えてる暇なんかなかったんです、ゼクスさんは、僕を守ろうとしてくれました、逃げて良かったのに、大勢に殴られて蹴られて、殺されたかと思いました、僕のせいで、ひどい怪我を、させ、た、のに、もっと怒って、いいのに、心配して、くれてた、なんて」

ぽろぽろと、涙をながして、リズは、リュカの手を離し、ゼクスの手をとった。

「ゼクスさんありがとう、心配かけてごめんなさい」

「えっ、あ……いや、先生、ちが、あながち、あんたの将軍の言ったことは間違ってない、俺はあの時、俺が選ばれると思ってた、冷静に考えたら俺なんかよりあんたの方が遥かに価値があるって解るのに、咄嗟に、自分は王子なんだって、はははっ、情けない、すげぇ、ださい、アイツの子供で有ることが嫌で嫌でたまらなかったのに、咄嗟に、王子だって言って何を期待したんだろな、何の価値もないそんな称号に」

「ゼクスさんの価値はゼクスさんであることです、他のことじゃない、ゼクスさんだから、僕を助けようとしてくれた、僕を逃がそうと確率が一番高い言動をかましてくれたんです、なんで、謝るの、僕、僕も心配でした、ゼクスさん、命があってよかった、怪我をさせてごめんなさい」

「アーーー、あぁ、だめだよ先生……これ以上」

これ以上この人の言葉を聞いてたら、譲れなくなる。この目の前の、可愛い人を、獰猛な鬼から奪いたくなる。


「リズ、もう終わり」

ぐいっと、背後からリュカに抱きかかえられて、リズは、宙に浮いた。

「ひゃわ、リュカさん」

「おい、お前がこの人に惹かれるのは許さない」

リュカは、絶対零度の眼差しで、ゼクスを威圧した。ゼクスは、カッとなった。人の心の中をどんだけ読めば気が済むんだこの鬼は。

「ずいぶん、余裕ないじゃないですか、将軍、ちょっと他のアルファが言い寄るくらいで、嫉妬ですか」

「お前、アルファだったのか?すまん、気づかなかった、弱すぎて」

「ハァ~ー!?」

「フンッ」

「険悪にならないでください、もうっ、何でそんななの、僕はただゼクスさんの怪我の様子を見に来たのに、リュカさん離して」

「駄目すよ、もう帰る」

リュカに羽交い締めされたまま、我が儘な子供を抱く親のような早さで、リュカはずんずんと歩く。本当にこのまま帰ってしまうのを悟って、リズは、ゼクスに、叫んだ。

「ゼクスさん!!また来ますから、ごめんなさいーーおだーーい、じーにぃぃぃーーーっ」

リュカの歩く速度が余りに速くて最後の方は、微かにしかかこえなかったが、ゼクスは、ぷっと吹き出した。

「めっっちゃ、余裕ねぇ、オーピーアルファのくせに、なにあれ」

ゲラゲラ笑うと、なんだか、心がスッキリした。ずっと重苦しい何かが心の中にあって、それがいま、全部でて、霧散したみたいに、妙に、晴れやかで。それが悔しいけど、嬉しかった。痛いところを突かれた。リズを拐われた責は自分にある、迂闊だった、詰られて当然だった。

(あいつ、すげーわ、かないっこねぇ、でも、先生は、もしかして目覚めてすぐ俺に会いにきてくれたんだろうか)

期待してはいけないと、思いつつ、ゼクスは、やはり期待してしまう。あの人は自分のものには決してならないだろう、と解っていても。傾きだした、心は、たぶんもう止められはしない。








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