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次の日、朝起きてもうこのまま眠っていたいと思った。しかし、葉栗が待つ病院へ行かねばならず、バターロールを一欠片食べてみたけど食欲がなくて、結局食べずに袋へ戻した。顔を洗う気力もない。
適当に服を着替えてアパートを出た。病院には両親も来てるはずだ、またあの人達に会うのかと思うと胃がキリキリと傷んだ。実家にいた頃は、無いものとして過ごしていた、1人暮らしが楽しくて。自分は1人があってたんだなと改めて思った。
同じ血が通ってようと、憎まれるんだなと知ったのはいつだったか。ずっと要らない子だった僕。可愛くなかった僕。
ピロンとメールが、とどいた。
『おはよ! なるみ、お泊まりはできないのは解ったけど1月1日は時間作って会おう、会いにいく』
雪夜君からのメールだった。嬉しくて涙が出そうになったが、会いに来られるのは不味い。
『会いにいきます』
返事を打とうとした時、背後から名を呼ばれた。母と義理父だった。咄嗟にスマホを隠した。
「なるみ、まだ病室へいってなかったの? もう十時過ぎてるのよ、時間を守れない人間て本当に信用できない」
母に言われた言葉の中で、時間に遅れるダメ出しは一番多い。確かに自分はルーズで、雪夜君の時も遅刻した。
「はい、すみません」
「まったく、愚図すぎて嫌になるわ。誰ににたのかしら」
「君じゃなさそうだ」
義理父が、笑いながら母を慰める。母は、笑顔を義理父へ向けた。
「まぁ、いいわ、急ぎましょう、葉栗君が待ってる。病院なんて慣れない所で困ってないといいけれど」
「大丈夫さ、看護師さんにチヤホヤされてるさ」
「まぁ! 確かに、葉栗君格好いいもんね」
「俺に似てな」
「ふふふっ」
夫婦仲が良いのは良いことだ。もしそこがこじれたら、もっときつい罵声を浴びるのは自分だから。
少し距離をとって歩く。すれ違った人に家族だと思われない距離。他人に思われる距離。本当に他人になれたら良いのにと心の中で思った。
病室のドアを開けると、葉栗はスマホをいじっていたが、破顔して顔をこちらに向けた。
「父さん、母さん来てくれたの」
「葉栗、どうだ困ったことないか?」
「充電もってきてくれた?」
葉栗に母さんは充電器の先を手渡し、コンセントへさしてあげる。葉栗の世話が焼けることを楽しんでいるようにもみえた。
「ここにあるわ、それと、退院の時に着る服と、財布と上着」
「ありがとうございます、助かります」
「もぅ、そんな他人行儀なこと言わないで、私は貴方の母なのよ、他にいるものない?」
「大丈夫です、困ったときは鳴水に頼むから」
「……そうね、あの子は暇だし遠慮せずこき使って」
「父さんと母さんはこれから仕事でしょ?」
「そうなんだが。休もうかと」
「大丈夫だよ、検査をしてるだけだし、メールするよ」
「そうか? 無理するなよ、本当に鳴水なんかのアパートでいいのか? 不便じゃないか?」
「大丈夫だよ、友達にも先輩にも行くって言ったら、流石柔道バカだって笑われた」
「ははは、好きこそものの上手なれだな」
和やかな雰囲気で、面会は終わり、父と母は、ちらりと僕を見たけど無言で、病室から出ていった。パタンと病室に僕と葉栗の二人っきりになる。
「こっちにこいよ」
殴られたりはしないだろうけど、びくびくしながら近寄った。
「スマホ貸して」
「え?」
「貸して」
「……」
有無を言わせない高圧的な言い方で、逆らえず、ポケットからスマホを出して渡した。葉栗は、画面を開き、固まった。
「誰に会いに行くつもり」
ハッとした、さっき雪夜君の返事をそのままにしてた。葉栗はさっと、履歴をみて、僕たちが1月1日に会おうとしていたことを知ってしまった。指先が震える。
「ふーん、誕生日に会うつもりだったんだ? 残念だな、会えなくて」
「……」
「俺に怪我をさせたのに、自分は浮かれてこんなメール送ってたんだ、どういう神経してるんだよ? 悪いとか思わないの?」
「……ごめん」
「雪夜ね、これが例のアルファか、もう会うなよ」
「え?」
「当たり前だろ、俺にこんなことして自分だけ楽しもうなんて許されないだろ?」
目の前が真っ暗になった気がした。雪夜君ともう会えない? なんで? なんでそんな意地悪なことを言うんだ? そんなに怒ってるってこと?
そりゃ、怪我をさせたのは悪かったけど……でも、あの時追いかけてきたのはそっちなのに。僕は、恐くて逃げただけなのに。
何もかも全部僕のせいになるのか。僕を好きだと言いながら、僕を下げずんでいるのは葉栗じゃないか。自分の言うことは全部正しくて、反論を認めないって、そんなやつ、どうやって好きになれって言うんだよ。好きにならない。なれるわけがない。
どんなに僕を篭に閉じ込めたって、お前のものにはならないよ。なるくらいなら、死んだ方がまし。僕の冷たい瞳を、葉栗は、憎々しげに睨んでいる。
適当に服を着替えてアパートを出た。病院には両親も来てるはずだ、またあの人達に会うのかと思うと胃がキリキリと傷んだ。実家にいた頃は、無いものとして過ごしていた、1人暮らしが楽しくて。自分は1人があってたんだなと改めて思った。
同じ血が通ってようと、憎まれるんだなと知ったのはいつだったか。ずっと要らない子だった僕。可愛くなかった僕。
ピロンとメールが、とどいた。
『おはよ! なるみ、お泊まりはできないのは解ったけど1月1日は時間作って会おう、会いにいく』
雪夜君からのメールだった。嬉しくて涙が出そうになったが、会いに来られるのは不味い。
『会いにいきます』
返事を打とうとした時、背後から名を呼ばれた。母と義理父だった。咄嗟にスマホを隠した。
「なるみ、まだ病室へいってなかったの? もう十時過ぎてるのよ、時間を守れない人間て本当に信用できない」
母に言われた言葉の中で、時間に遅れるダメ出しは一番多い。確かに自分はルーズで、雪夜君の時も遅刻した。
「はい、すみません」
「まったく、愚図すぎて嫌になるわ。誰ににたのかしら」
「君じゃなさそうだ」
義理父が、笑いながら母を慰める。母は、笑顔を義理父へ向けた。
「まぁ、いいわ、急ぎましょう、葉栗君が待ってる。病院なんて慣れない所で困ってないといいけれど」
「大丈夫さ、看護師さんにチヤホヤされてるさ」
「まぁ! 確かに、葉栗君格好いいもんね」
「俺に似てな」
「ふふふっ」
夫婦仲が良いのは良いことだ。もしそこがこじれたら、もっときつい罵声を浴びるのは自分だから。
少し距離をとって歩く。すれ違った人に家族だと思われない距離。他人に思われる距離。本当に他人になれたら良いのにと心の中で思った。
病室のドアを開けると、葉栗はスマホをいじっていたが、破顔して顔をこちらに向けた。
「父さん、母さん来てくれたの」
「葉栗、どうだ困ったことないか?」
「充電もってきてくれた?」
葉栗に母さんは充電器の先を手渡し、コンセントへさしてあげる。葉栗の世話が焼けることを楽しんでいるようにもみえた。
「ここにあるわ、それと、退院の時に着る服と、財布と上着」
「ありがとうございます、助かります」
「もぅ、そんな他人行儀なこと言わないで、私は貴方の母なのよ、他にいるものない?」
「大丈夫です、困ったときは鳴水に頼むから」
「……そうね、あの子は暇だし遠慮せずこき使って」
「父さんと母さんはこれから仕事でしょ?」
「そうなんだが。休もうかと」
「大丈夫だよ、検査をしてるだけだし、メールするよ」
「そうか? 無理するなよ、本当に鳴水なんかのアパートでいいのか? 不便じゃないか?」
「大丈夫だよ、友達にも先輩にも行くって言ったら、流石柔道バカだって笑われた」
「ははは、好きこそものの上手なれだな」
和やかな雰囲気で、面会は終わり、父と母は、ちらりと僕を見たけど無言で、病室から出ていった。パタンと病室に僕と葉栗の二人っきりになる。
「こっちにこいよ」
殴られたりはしないだろうけど、びくびくしながら近寄った。
「スマホ貸して」
「え?」
「貸して」
「……」
有無を言わせない高圧的な言い方で、逆らえず、ポケットからスマホを出して渡した。葉栗は、画面を開き、固まった。
「誰に会いに行くつもり」
ハッとした、さっき雪夜君の返事をそのままにしてた。葉栗はさっと、履歴をみて、僕たちが1月1日に会おうとしていたことを知ってしまった。指先が震える。
「ふーん、誕生日に会うつもりだったんだ? 残念だな、会えなくて」
「……」
「俺に怪我をさせたのに、自分は浮かれてこんなメール送ってたんだ、どういう神経してるんだよ? 悪いとか思わないの?」
「……ごめん」
「雪夜ね、これが例のアルファか、もう会うなよ」
「え?」
「当たり前だろ、俺にこんなことして自分だけ楽しもうなんて許されないだろ?」
目の前が真っ暗になった気がした。雪夜君ともう会えない? なんで? なんでそんな意地悪なことを言うんだ? そんなに怒ってるってこと?
そりゃ、怪我をさせたのは悪かったけど……でも、あの時追いかけてきたのはそっちなのに。僕は、恐くて逃げただけなのに。
何もかも全部僕のせいになるのか。僕を好きだと言いながら、僕を下げずんでいるのは葉栗じゃないか。自分の言うことは全部正しくて、反論を認めないって、そんなやつ、どうやって好きになれって言うんだよ。好きにならない。なれるわけがない。
どんなに僕を篭に閉じ込めたって、お前のものにはならないよ。なるくらいなら、死んだ方がまし。僕の冷たい瞳を、葉栗は、憎々しげに睨んでいる。
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