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第一章 出会い編
閑話 side:ルード〜未知との遭遇③〜
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今自分の目の前にいるこれは、本当に人間なのだろうか
※奇しくもその時ルードが抱いた感想は、シェイラと同じものだったが本人達が知るはずもない(内容は全くの別物である)
確かに二本足があり立っているからには人間なのだろうが、何せここは奇妙すぎる森の中。未だ見たことのない生物が生息していないとも限らない。赤茶けたボサボサの長い髪からあまり顔がはっきりと判別できない。
(取り敢えず…暗殺の類いでなければ良いが……。試してみるか)
ここにきて自身の中で一気に警戒レベルを上げた俺は知らず腰元に帯びる愛剣に手を伸ばし、
『何者だ』
カリス帝国の主国語であるルキア語で敢えてそれに問いかけた。これで帝国関連の人間ならば何かしら反応をー……
『初めて、それもこのようなところであった無防備且つ曲がりなりにも女性に対して。
ご立派な剣にお手をかけられ脅すようにお声を掛けられる貴方様はさて、それこそ“ナニ様”なのでしょう?』
『…』
反応が返ってきたのは良い。思いもかけず高く澄んだ声からそれが人間の女性であることもわかった上、口から発せられた言葉は俺と同じルキア語。がしかし、その内容に強烈な毒が含まれているように感じるのは俺の被害妄想か?
続いて
『きっとさぞかしご立派で高貴な身分のお方なのでしょう(ほんと偉そう)
ええ、そうに違いありませんわ、何せアルギス語が主のトリアドス王国領地内で出会った人間に対してかけられたお言葉がルキア語!(自国の言葉しか認められないとでも?郷に行ってはなんとやら、他国に足を踏み入れる際にその主国語の簡単な挨拶すら出来ないとは)
さぞ御身の母国語に誇りを持っていらっしゃるのでしょう!(ふん、お里が知れるな)』
『……!!』
やはりだ。会話が全て嫌味の副音声付きで聞こえる。思わず固まってしまった俺だが、徐々に笑いがこみ上げてきた。女に知られぬよう片手で口を覆い隠すが、身体の震えがどうにも御し難い。
何せこのような強烈な会話(副音声付き)を面と向かって言われたことなど皇帝に立して以来一度もない。
更に言えば、子供の頃ならいざ知らず、今は自身の容姿が他人に評価されるのか嫌というほど自覚している。
成人して22歳となる現在まで称賛や耳障りの良い言葉ばかり女性から聞かされてきた身としては、この扱いは斬新すぎる。
言ってしまえば、小気味いいのだ。
(…な、何か、続けなければ!)
『……先ほどからの発言から鑑みるに、つまり俺の態度や発言が不満で不愉快、と?』
そう言いたいんだろう?と問うと
『まぁ!そんな不満で不愉快だなどと(分かってんじゃねぇか)!
私は素晴らしい身なりの高貴なお方には私など理解の及ばない崇高なこだわりをお持ちなのではと愚考しての発言ですわ(本当に高貴な身分なら挨拶における一般常識くらい承知済みでは)?私の発言にご不快を感じられたのなら謝罪いたしますわ(こんな小娘の嫌味くらいで切れるほど安い神経してないよな?)』
トドメの、ドヤ顔。しかし前髪が邪魔でまるでドヤ顔をする意味がない。
『…そう、か。いや、……うむ…』
(だ、駄目だ俺!耐えろ、!耐え抜け!!ここで折れ(笑っ)たら何かに、何かに負ける気がするっっ…)
しかし。嗚呼、最早俺の腹筋と表情筋が限界だ。尋常でない震えは隠しようもない、
で。
『……くっっもう、駄目だっっ……。耐えられない……っっ!!』
『……あの、もしやどこかお加減でも悪』
はい限界突破。
『『ぶはっっ!!!』』
「は?」
『『あっははははははははははははははっっ!!!!』』
(………くそ、負けた。(何かに)それとガドよ、お前もか……。)
※奇しくもその時ルードが抱いた感想は、シェイラと同じものだったが本人達が知るはずもない(内容は全くの別物である)
確かに二本足があり立っているからには人間なのだろうが、何せここは奇妙すぎる森の中。未だ見たことのない生物が生息していないとも限らない。赤茶けたボサボサの長い髪からあまり顔がはっきりと判別できない。
(取り敢えず…暗殺の類いでなければ良いが……。試してみるか)
ここにきて自身の中で一気に警戒レベルを上げた俺は知らず腰元に帯びる愛剣に手を伸ばし、
『何者だ』
カリス帝国の主国語であるルキア語で敢えてそれに問いかけた。これで帝国関連の人間ならば何かしら反応をー……
『初めて、それもこのようなところであった無防備且つ曲がりなりにも女性に対して。
ご立派な剣にお手をかけられ脅すようにお声を掛けられる貴方様はさて、それこそ“ナニ様”なのでしょう?』
『…』
反応が返ってきたのは良い。思いもかけず高く澄んだ声からそれが人間の女性であることもわかった上、口から発せられた言葉は俺と同じルキア語。がしかし、その内容に強烈な毒が含まれているように感じるのは俺の被害妄想か?
続いて
『きっとさぞかしご立派で高貴な身分のお方なのでしょう(ほんと偉そう)
ええ、そうに違いありませんわ、何せアルギス語が主のトリアドス王国領地内で出会った人間に対してかけられたお言葉がルキア語!(自国の言葉しか認められないとでも?郷に行ってはなんとやら、他国に足を踏み入れる際にその主国語の簡単な挨拶すら出来ないとは)
さぞ御身の母国語に誇りを持っていらっしゃるのでしょう!(ふん、お里が知れるな)』
『……!!』
やはりだ。会話が全て嫌味の副音声付きで聞こえる。思わず固まってしまった俺だが、徐々に笑いがこみ上げてきた。女に知られぬよう片手で口を覆い隠すが、身体の震えがどうにも御し難い。
何せこのような強烈な会話(副音声付き)を面と向かって言われたことなど皇帝に立して以来一度もない。
更に言えば、子供の頃ならいざ知らず、今は自身の容姿が他人に評価されるのか嫌というほど自覚している。
成人して22歳となる現在まで称賛や耳障りの良い言葉ばかり女性から聞かされてきた身としては、この扱いは斬新すぎる。
言ってしまえば、小気味いいのだ。
(…な、何か、続けなければ!)
『……先ほどからの発言から鑑みるに、つまり俺の態度や発言が不満で不愉快、と?』
そう言いたいんだろう?と問うと
『まぁ!そんな不満で不愉快だなどと(分かってんじゃねぇか)!
私は素晴らしい身なりの高貴なお方には私など理解の及ばない崇高なこだわりをお持ちなのではと愚考しての発言ですわ(本当に高貴な身分なら挨拶における一般常識くらい承知済みでは)?私の発言にご不快を感じられたのなら謝罪いたしますわ(こんな小娘の嫌味くらいで切れるほど安い神経してないよな?)』
トドメの、ドヤ顔。しかし前髪が邪魔でまるでドヤ顔をする意味がない。
『…そう、か。いや、……うむ…』
(だ、駄目だ俺!耐えろ、!耐え抜け!!ここで折れ(笑っ)たら何かに、何かに負ける気がするっっ…)
しかし。嗚呼、最早俺の腹筋と表情筋が限界だ。尋常でない震えは隠しようもない、
で。
『……くっっもう、駄目だっっ……。耐えられない……っっ!!』
『……あの、もしやどこかお加減でも悪』
はい限界突破。
『『ぶはっっ!!!』』
「は?」
『『あっははははははははははははははっっ!!!!』』
(………くそ、負けた。(何かに)それとガドよ、お前もか……。)
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