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第一章 出会い編
第16話 ガドの奮闘〜その香りと輝きが齎したもの〜
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「なぁロイド」
「………なんだ」
「あの花。誰にもらった?」
「……?何のこと…ああ、私の自室に飾ってあった花のことですか?あれは確か私の補佐役のケインという者からです。何でも他国にて時々発見される、大変珍しいものだとか。しかし何故今そんなことを?」
「アリスリリア」
「ガド殿は名前をご存知だったのですか。私は枯れにくい大変美しい花としか聞いていなかったものですから」
突然変わった話題にどことなく安堵を滲ませたロイドはしかし、次の俺の告げた名称に凍りついた。
「正式名称、アリスリリア。
世界的にも群生数の少ない、美しい花だ。
しかしな、この花にはもう一つ、知られていない別の呼び方がある。
ー『誘い花 という、な」
「~ッッ!!?」
誘い花・アリスリリア
主に医療の分野で精神患者に使用された希少なこの花は、かつてカリス帝国の後継争いの折に悪用され、採取・売買共に禁止令が発令された、魔性の呪い花。
採取され水につけることで通常の植物よりも遥かに長く咲き続けるこの花には特殊な香りと輝きがあり、その二つに囚われると、一時思考に靄がかかったようにはっきりしなくなる。
その思考が定まらなくなった状態時に他者から忘却や会話の誘導などを受けると、催眠にかかったように誘導内容がその人物の『現実』となってしまう。花が身近で咲き続けるだけ効果は続き、さらにはその期間が長ければ長い程、効果は加速し深まる。
つまり、虚実を現実とその人物に認識させてしまう。
「…ーて訳でな。かなり危険な花なんだよ、アレは。
ロイド。あんたアレをそのケインとかいう補佐役からいつもらった?」
「……職務のため領地から城内に移り、自室を賜った際だ…。ケインには領地の運営代理と管理の指示もしてもらっているので。
その後も領地からこちらにきた際に、私が気に入っているようだからと、度々差し替えに…」
「9年前が最初だな?」
「……ええ。しかし何故私が9年前に#王城__こちら_#に来たのを知っているのですか?」
「……。」
職務に勤しむ合間に愛でていた部下からの贈り物の正体を耳にして、呆然とするロイドは酷く哀れに映ったが、これからもっと残酷な『現実』を自覚させなければならないことを思うと、と俺は酷くやるせない気持ちになった。
しかし、やるしかないのだ。
ロイドは未だ、信じたくない、何故ケインが…何かの間違いでは、と否定の言葉を俺に求めているようだが。
(……あぁ~…鬱だ。
だがまぁ、やるとしますか)
「これからいくつか質問させてもらうぞ、ロイド。
素直に答えてくれ、な?」
「…え、ええ、分かりました」
そして今現在の彼の『現実』を確認していく ー
「………なんだ」
「あの花。誰にもらった?」
「……?何のこと…ああ、私の自室に飾ってあった花のことですか?あれは確か私の補佐役のケインという者からです。何でも他国にて時々発見される、大変珍しいものだとか。しかし何故今そんなことを?」
「アリスリリア」
「ガド殿は名前をご存知だったのですか。私は枯れにくい大変美しい花としか聞いていなかったものですから」
突然変わった話題にどことなく安堵を滲ませたロイドはしかし、次の俺の告げた名称に凍りついた。
「正式名称、アリスリリア。
世界的にも群生数の少ない、美しい花だ。
しかしな、この花にはもう一つ、知られていない別の呼び方がある。
ー『誘い花 という、な」
「~ッッ!!?」
誘い花・アリスリリア
主に医療の分野で精神患者に使用された希少なこの花は、かつてカリス帝国の後継争いの折に悪用され、採取・売買共に禁止令が発令された、魔性の呪い花。
採取され水につけることで通常の植物よりも遥かに長く咲き続けるこの花には特殊な香りと輝きがあり、その二つに囚われると、一時思考に靄がかかったようにはっきりしなくなる。
その思考が定まらなくなった状態時に他者から忘却や会話の誘導などを受けると、催眠にかかったように誘導内容がその人物の『現実』となってしまう。花が身近で咲き続けるだけ効果は続き、さらにはその期間が長ければ長い程、効果は加速し深まる。
つまり、虚実を現実とその人物に認識させてしまう。
「…ーて訳でな。かなり危険な花なんだよ、アレは。
ロイド。あんたアレをそのケインとかいう補佐役からいつもらった?」
「……職務のため領地から城内に移り、自室を賜った際だ…。ケインには領地の運営代理と管理の指示もしてもらっているので。
その後も領地からこちらにきた際に、私が気に入っているようだからと、度々差し替えに…」
「9年前が最初だな?」
「……ええ。しかし何故私が9年前に#王城__こちら_#に来たのを知っているのですか?」
「……。」
職務に勤しむ合間に愛でていた部下からの贈り物の正体を耳にして、呆然とするロイドは酷く哀れに映ったが、これからもっと残酷な『現実』を自覚させなければならないことを思うと、と俺は酷くやるせない気持ちになった。
しかし、やるしかないのだ。
ロイドは未だ、信じたくない、何故ケインが…何かの間違いでは、と否定の言葉を俺に求めているようだが。
(……あぁ~…鬱だ。
だがまぁ、やるとしますか)
「これからいくつか質問させてもらうぞ、ロイド。
素直に答えてくれ、な?」
「…え、ええ、分かりました」
そして今現在の彼の『現実』を確認していく ー
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