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第一章 出会い編
第55話 三人目の愚者〜策に溺れた者(中)〜
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ー城内地下 最奥の牢ー
side:ケイン
『捕らえたか』
『ああ。考えてた通り、使用人口から出てきたんでな。
一発腹に入れたら気ぃ失いやがったよ。なんていうか歯応えなさ過ぎだ』
『そう言ってやるな、頭脳派だったんだろうこれでも』
『ヘイヘイ』
ルキア語で交わされる会話が耳に入り、ゆっくりと意識を覚醒させる。
僅かに反響しているところを考えれば、おそらく地下かどこかの牢にでも入れられているのだろうと推測しつつも身動きを取らない。
あの時あの場で殺さなかったのならまだ俺を生かしておく理由があるのだろう。
さらに言えば、兵を呼んで大捕物にしなかったのも俺の存在をあまり外に周知させたくない、秘密裏に捕らえて…、とそんなところだろう。
演技をしたり秘密裏に裏でこそこそ物事を運ぼうとするのがいかにもあの屑野郎のしそうなことだと心中であらん限りの罵倒をしつつ、状況を把握するために聞き耳をたてる。
『ロイドの旦那は?』
『ああ、この後の打ち合わせも兼ねてクルゼイ王のところに行ったよ』
『じゃあこいつはその間、ここに?』
『そのまま転がしておけ。大夜会が終われば時間などいくらでもある』
『了解』
暫く黙ったところをみるに、俺が意識を失っているかを確認している様子だったが。
やがて時間がきたのか、二人分の足音が遠ざかって行く。
遠くでガシャン……と重量のある音が響いて二人が牢から去ったのを確認するとモゾモゾ床を芋虫のように這いずって身体を解し、むくりと上体を起こした。
(……っつ、あの大柄の男。人様の腹を無遠慮に殴りやがって)
あの馬鹿力が、と悪態を吐くと軽く手首を動かして片手から力を抜き、ゴキッと
もう片方の手で関節を外す。
殴られた腹はいざ知らず、手首を外して縄を外すのなど手慣れたものだ。
後ろ手に縛られていた手を自由にし、再び手首を嵌め直すと、牢の中でゆったりと座る。
(見張りもないとは……舐められたものだな)
先程この場を去った事とルキア語を話していた事を鑑みてもカリス帝国の人間だろうと考えを整理して余裕を持って待ってるとぎぃぃぃ…と再び扉が軋んで開く音が響いた。
衛兵と侍従の姿の二人が足早にこちらに向かってくるのを見つめながらニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。
(何年城に通ったと思っている)
9年もの年月悪事を企んでいれば勿論協力者も作るし、往々にして最終的な退路の確保はしておくものだ。
帝国も爪の甘い、とほくそ笑みつつ鍵を開けられ牢から出る。
「……首尾は?」
「城の外まではご心配なく。王都から抜けるために“翁”殿の手の者に繋ぎをつけてありますのでいつもの宿にそのままお向かいください」
「ご苦労。報酬はいつものように」
そう打ち合わせると、地上へと続く扉を自分の足で潜ったのだった。
城を出て、翁の助力で王都を脱出。その後領地へ急ぎ戻ったら……ー
ああ、俺のエリー
仕事で柄にもなくヘマをしてしまったんだ。
すぐに君の元へ帰るから、一緒に他の国へと逃げよう。
大丈夫、俺はどこででも仕事は出来るし生活の心配も要らない。
今度こそー…
君と二人でずっとずっと愛し合って過ごそうね……
うっとりと家で待つ最愛の妻の顔を思い出しながら。
side:ケイン
『捕らえたか』
『ああ。考えてた通り、使用人口から出てきたんでな。
一発腹に入れたら気ぃ失いやがったよ。なんていうか歯応えなさ過ぎだ』
『そう言ってやるな、頭脳派だったんだろうこれでも』
『ヘイヘイ』
ルキア語で交わされる会話が耳に入り、ゆっくりと意識を覚醒させる。
僅かに反響しているところを考えれば、おそらく地下かどこかの牢にでも入れられているのだろうと推測しつつも身動きを取らない。
あの時あの場で殺さなかったのならまだ俺を生かしておく理由があるのだろう。
さらに言えば、兵を呼んで大捕物にしなかったのも俺の存在をあまり外に周知させたくない、秘密裏に捕らえて…、とそんなところだろう。
演技をしたり秘密裏に裏でこそこそ物事を運ぼうとするのがいかにもあの屑野郎のしそうなことだと心中であらん限りの罵倒をしつつ、状況を把握するために聞き耳をたてる。
『ロイドの旦那は?』
『ああ、この後の打ち合わせも兼ねてクルゼイ王のところに行ったよ』
『じゃあこいつはその間、ここに?』
『そのまま転がしておけ。大夜会が終われば時間などいくらでもある』
『了解』
暫く黙ったところをみるに、俺が意識を失っているかを確認している様子だったが。
やがて時間がきたのか、二人分の足音が遠ざかって行く。
遠くでガシャン……と重量のある音が響いて二人が牢から去ったのを確認するとモゾモゾ床を芋虫のように這いずって身体を解し、むくりと上体を起こした。
(……っつ、あの大柄の男。人様の腹を無遠慮に殴りやがって)
あの馬鹿力が、と悪態を吐くと軽く手首を動かして片手から力を抜き、ゴキッと
もう片方の手で関節を外す。
殴られた腹はいざ知らず、手首を外して縄を外すのなど手慣れたものだ。
後ろ手に縛られていた手を自由にし、再び手首を嵌め直すと、牢の中でゆったりと座る。
(見張りもないとは……舐められたものだな)
先程この場を去った事とルキア語を話していた事を鑑みてもカリス帝国の人間だろうと考えを整理して余裕を持って待ってるとぎぃぃぃ…と再び扉が軋んで開く音が響いた。
衛兵と侍従の姿の二人が足早にこちらに向かってくるのを見つめながらニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。
(何年城に通ったと思っている)
9年もの年月悪事を企んでいれば勿論協力者も作るし、往々にして最終的な退路の確保はしておくものだ。
帝国も爪の甘い、とほくそ笑みつつ鍵を開けられ牢から出る。
「……首尾は?」
「城の外まではご心配なく。王都から抜けるために“翁”殿の手の者に繋ぎをつけてありますのでいつもの宿にそのままお向かいください」
「ご苦労。報酬はいつものように」
そう打ち合わせると、地上へと続く扉を自分の足で潜ったのだった。
城を出て、翁の助力で王都を脱出。その後領地へ急ぎ戻ったら……ー
ああ、俺のエリー
仕事で柄にもなくヘマをしてしまったんだ。
すぐに君の元へ帰るから、一緒に他の国へと逃げよう。
大丈夫、俺はどこででも仕事は出来るし生活の心配も要らない。
今度こそー…
君と二人でずっとずっと愛し合って過ごそうね……
うっとりと家で待つ最愛の妻の顔を思い出しながら。
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