好奇心は〇〇をも殺す…?

帆田 久

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おまけ  Side:O

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大神サイドのお話です。

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今でも信じられない。
あんな時間あんな場所で、
この5年幾度も伺っては失敗していたチャンスが巡ってくるだなんて。


※  ※  ※


俺、大神 仁おおがみ ひとしははっきり言ってモテる。
中2辺りから急激に伸びた身長、格闘技全般が趣味の親の影響で鍛えた体躯。
流行りの線の細さは微塵もなくどちらかと言えば漢臭くすらあるが、
顔立ちが整ってるせいかよくモテた。
それこそ女にも男にも。

だがしかし、俺はゲイだった。
自覚したのはそれこそ高校入学から2週間ほど経ったころにサボるため保健室で寝てた時。
保健室のビッチな雇われ保健医が勝手に人の上に乗っかって
俺を性的に食おうとした時だったか。
或いは放課後にクラスメイトのモブ男子におどおどした態度で一発ヨロシクと強く願われた時だったか。
まぁどちらでもいいがそんなこともあって自覚した自身の性的嗜好は、
実のところ全く不快ではなかった。
寧ろ大学へ入ると途端に女の香水臭さと化粧の濃度が増し、
ああ、男が好きで良かったとさえ安堵した。

が。

我ながら最低だなと自覚もするが、男にしても真剣に付き合うことはなくただヤるだけ。
性欲旺盛なこの身体の熱を定期的に発散できればそれでよしとすら考える程度には腐っている。
けど仕方がない。
どんな綺麗系、可愛い系、自身と同タイプの漢くさい系に誘われ寝ても
付き合いたいとか感じないのだから。

両親は結構な会社のトップで多忙、愛情はあるがよくいえばおおらか、
悪く言えば放任主義なところがあったため、恋愛への口出しもなく。
それ故好きに就職先も選んで自立した。
親の会社ほどではないがそこそこ名の通った会社で、
早めに成績を残して役職つきになり、そこそこ金が貯まったらさっさと退社してセカンドライフという名の自堕落な生活を送ろうと考えていた。
まぁ実際仕事につかなくとも一生困らないほどには既に株・投資関連で儲けを出していたから、結構ゆるゆるな人生設計ではあるが。

どうせそれ以外に会社に希望を持っていなかった。

だからこそ入社前の研修で初めて彼を目にした瞬間、衝撃を受けた。

(…なんで会社に小動物が紛れ込んでやがる…?)

色気漂う美人だとか、ジャ◯ーズでアイドルしてそうな可愛い容姿とかそんなんじゃない。
そんなんじゃなかったが、無性に可愛い。
目が離せない。

俺より頭一つ分は低い身長に細身の身体
ふんわりクセがついた髪は柔らかそうで
目はぱっちりと大きく、未だ高校生といっても通るのでは?といった童顔
そんな容姿のその男は可愛い見目に反して優秀だった。
特に計算や書類作成が異常に速かった。
先輩となる社員が作業説明している時は緊張し切った様子だったのに、
作業に入るとスイッチが切り替わるタイプらしい。
無駄な動作がほとんどないし、プレゼンの練習もハキハキと喋る。
普通ならスマートに見えるはずの優秀さはしかし、彼が醸し出す謎の小動物感によって打ち消され、周囲に埋没。
異常な計算能力だけが目立ち、
あれではおそらく経理かなと彼の配属先を容易に予想できた。

自身もそつなく研修を済ませながら、すれ違った際に素早く胸元につけている名札を確認。
名札には

宇佐 義弘うさ よしひろ

と書かれていて、なぜか瞬時に記憶した。

…………………
……………
………

それからというもの研修中、そして研修が終わって大学を卒業し正式に入社して配属先が決まってからも彼のことが気になってしょうがない。
入社直前わずかな奇跡が起きて同じ配属先にならないものかと願ったが、
入社式後彼が経理の人間と話をしているのを目撃して願いはあっけなく潰えた。

(俺は何故、彼のことばかり考えているんだ…?)

配属された営業部の仕事に慣れてきて成果を上げ始めてもその疑問は解消されず、
遠目で彼を目撃すること数回。
その数度目にはおそらく自分は所謂“一目惚れ”をしたのだと白旗を上げることと相成った。
だってしょうがないだろ、視界に映るだけで謎の動悸がするし、
彼の視界に己を映したい。
なんならあのぷくりと甘そうな唇に所構わずむしゃぶりつきたいなんて。

こんなのもう恋だろと諦めた。
同時に初めての恋をしてることに不覚にも浮かれてしまった。
だからだろうか。
アプローチをしようと決心し行動し始めたのに、その悉くが失敗に終わってしまったのは。
会話はおろか、接点すら持てずに早5年。
5年も時間があって接点が持てない?
この俺が!?
初めからやたら順調に伸び続ける成績のせいで入社2年目からこっち出張、それも長期のものばかり。
やっと本社に戻り経理に経費や領収書の提出をしにいっても
あのふざけた脂肪の塊がごときクズな経理部長の学歴自慢や無駄な長話に阻まれ。
どうやらうさちゃんなどと可愛らしい名で彼を呼んでいるらしい彼の同僚とこのクズ部長をどうやって社会的に抹殺しようかと幾度となく考えを巡らせてみては断念し、
溜まった欲を定期的にその辺で引っ掛けたモブで発散する虚しさよ…

そんなこんなで5年。

半ばもう接点を持つことに諦めを抱きつつも絶えず持て余し気味な性欲を解消しようとその日も直帰後外に出たのは本当に偶然だった。
長期出張が続きすぎてまともに有給休暇を処理しなかったことを上司に心配されて約1週間の連休を獲得した。
だからというわけではないが、この際派手に発散するか、と会社付近のあの寂れたコンビニに足を向けたのも偶然。
理由は繁華街が一本通り違いにあるからというだけ。
本当はそこで飲み物を一本買うだけのつもりだった。

しかし。視界に映ったのだ、彼ー…宇佐 義弘が。
見るたびに生気がなくなっていった彼が、レジにカゴを置く姿を目にして、
咄嗟にカゴを掴んだ。
素早く店内の商品配置を流し見、飲料が店の一番奥にあることを確認する。

(駄目だ、これじゃ間に合わない)

商品を手にレジに着く頃にはおそらく彼はコンビニを去ってしまう。
そうなればもう話しかけるチャンスは。
と、入口を入ってすぐの棚下段にひっそりと並べられたものを目にして衝動的に手で乱暴に掴み取り個数も気にせずカゴに放り込む。
パッケージも派手な配色のは、その商品の用途も相まってさぞレジで存在感を放つことだろう。
あとは彼が会計を済ませて振り向いた瞬間、視界に入るようにレジにつくだけ。

誠に馬鹿馬鹿しいことだが、しかし人生で一番緊張した。
こんな時間、こんな場所で、こんなものを棚買いするなんてと商品を視界に入れて些細な好奇心を働かせてくれるだけでいい。
どんなヤツが買ってるんだと自分を見てくれれば、視界に移してくれさえすれば。

果たして彼はーー。


「え、マ?どんだけ欲求不満だよ」

目論見通りー
ちらりとすれ違いざまにカゴへと視線を走らせた彼はギョッとした様子で反射的に俺を仰ぎ見、
そんな言葉を発した。

(想像の何倍も聴き心地がいい声だな…)

まさかこんなに上手くいくなんて。
しかも期せずして声まで聞けた。
内容は間の抜けたものだったが。
だが寧ろこれでーー、


「確か経理の・・・宇佐だよな?同期の」

すかさず声をかける。
びくりと彼の肩が動いたのを察知し、ここで逃してなるものかと現金ではなくスマホのペイ決済で素早く会計を済ませながら商品が入れられた袋を掴み、彼の肩に腕を回す。

(…捕獲完了)

ビクビクおろおろとしょうもない好奇心に負けて失言した彼が動揺する様を舐るように見下ろし、
口角が堪えきれずに持ち上がる。

(5年も待ったんだ。絶対に逃してやらない)


ーーこうして。
その後彼の通勤・帰宅手段である自転車を自前の四駆に乗せ、
彼の身柄ごと自身の部屋へと運び込んで。
俺は5年の歳月を経て漸く、ご馳走にありつくことができたのだった。


………………
…………
………


彼ー…宇佐のお初をまんまと頂いた俺は翌朝、
酷く満足していた。
未だかつてこれほどの充足感を味わったことがない。
疲れ切って行為を終えて気絶しそのままコンコンと眠り続ける彼の幼げな寝顔に頬が緩む。
本当は一晩中、それどころか自身の休みをフルに使って身体で落としてやろうとも考えたが、彼の仕事に支障をきたすわけにはいかないと流石に自制した。
まぁクズな発言の果てに強引にコトに及んだ俺が自制だなんだと言えた義理ではないが。
だが朝食後に彼の現状が予想以上に悲惨なことを知り、
速攻で自身の上司に連絡した。
結構前から彼の無能なクズ上司が上層部でも問題になってたのは知ってるし、
確か本日は人事会議で上層の幹部連中に招集がかかってるはず。

(これを機にあの邪魔ばかりしてくれたクズには退場してもらおう)

会社からというより主に、宇佐の視界から。

事態が呑み込めず隣でキョトンとしつつ言われたコトに答える彼の可愛さに内心悶えつつ、
事態はあっさりと望んだ方へと進んだ。
これでヤツを視界に入れることはもうないだろうと通話終了と同時に告げれば、
涙腺が崩壊した彼。
なんて役得!と自身に縋りついて泣く彼を抱き込み
思う存分堪能した俺はきっと悪くない。
…まぁ大量の鼻水も涙とともに服に擦り込んでくれたが。
わざと呆れた声で指摘すれば、
ツンと口を尖らせてふん、だと…?
可愛すぎてまた欲が急激に湧き立つ。

なので俺は、そんな可愛い声を上げつつも元気を取り戻したこの小動物に、
我慢するのをやめた。
おりしも、なんとも幸運なことに。
彼自身も俺と同じく1週間丸々連休の命令が下ったのだ。

顔も身体も少し不器用な性格も好みで
5年も片思いしていた相手
昨夜の行為から素質は充分で相性も抜群

(とりあえず1週間かけてじっくりたっぷり…思い知らせるか)

足腰立たないくせして未だ腕の中で往生際悪く逃れようとするこの可愛い小動物を
身体の隅から隅までしゃぶり尽くして自分だけのモノにする。

この俺が5年も待たされたんだ
5年分堪能しても、バチは当たらないよな?

我ながら傲慢且つ自分勝手にすぎる考えにどっぷりと溺れながら、
彼を抱えて寝室に足を進め…
宣言通り1週間彼を喰らい尽くし、
彼氏という立場を彼に許容・確定させることに成功したのだったーー




==============================================
これにて本当に完結です。
ただのクズい攻めかと思いきや、とんだ執着野郎だったことが判明した模様…。
エロなしのほとんど彼側の説明回みたいな話でしたが如何でしたでしょうか?
少しでも楽しんでもらえたなら幸いです!
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