愛人かと思いきや、僕にだけポンコツな溺愛夫ができました

だし巻たま子

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「どうも佐棟さとうさん、入ってきて」
『お久しぶりです東津竹とつたけさん。お邪魔します』

檸凰れおが気安く応対する。
どうやら玄関を開けていたようだ。

来客の対応を檸凰に任せ、食器棚からカップ三客を取り出し湯をそそぐ。
カップが温まるまでティーポットとコーヒーポットを用意して、はたと気づく。
電気ケトルで煎れるのは失礼だろうか?
とりあえずコーヒー用の口の長いケトルを火にかけ、キッチンを出た。

リビングにはもう、“ポムの樹”の紙袋を提げた愛想の良さそうな男性が居た。
七三分けにした髪を整髪料で撫で付け、ブルーグレーのテーラーメイドのスーツをビシッと着こなす30代ぐらいの方だ。

「それ、汚れないようにあっちのテーブル置いといて」
「テレビの前ですね?」
「そう」
「贈答用の手提げもお隣りに置きますね」
「ありがとう」

玄関へ戻りふたたびリビングへ来た佐棟さんは、意外にも大荷物だった。
最初に紙袋をリビングのローテーブルに置き、玄関へ戻って、頑丈そうな大きいアタッシュケースを3つダイニングテーブルへ運んできた。

「どうもお久しぶりです。しばらく会わないうちに奥様も出来たそうで。ご紹介願えますか?」
「妻の吹雪だ。吹雪、松勢越ませこしの佐棟さん。こんな見た目だけど、意外と任せられるんだ」
「アハハ、見た目は置いといてくださいよ、私含めて外商はほとんどベータなんですから。吹雪様、初めまして。ご紹介に預かりました佐棟です。御入り用の際は何なりとお申しつけください。飛んで参ります」
「ご丁寧に。吹雪です」

眩しい営業スマイルで名刺を差し出す佐棟さんから名刺をいただいた。
こういう時、なんて挨拶したらいいか困る。
愛想無いとか思われないといいけど。

「先ずあちら、お菓子です」
「ありがと。飲み物、紅茶でいい?」
「ありがとうございます、いただきます。水以外、とは珍しいですね」
「吹雪が紅茶好きで」
「左様ですか。次回からは紅茶もラインナップに加えますね」
「ありがとう、ございます」

話を振られて顔に熱が集まるのを感じた。
人見知りが災いして、つっかえつっかえの返事になる。
変な人になってるぞ、僕。

キッチンに避難して、棚から紅茶缶を出す。
もちろん鈴虫通りのお店の紅茶。
だけど今日はダージリン。
ヤキモチ焼いてみっともないけど、檸凰の香りの紅茶はあまり出したくない。
三杯をお盆にのせて運んでいくと、檸凰と佐棟さんで話が進んでいた。

「そしてこちらが、メインの奥様のネックガードです」

大仰に開けられた2つのアタッシュケースには、きらびやかなネックガードが数点ずつ整然と並んでいた。 
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