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人間の私だけが異世界転生しているといつから錯覚していた?

異世界転生したらチート能力の一つくらいあるっていつから錯覚していた?

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山と川と田園ばっかりのこの世界。
なんのトラブルもなく毎日が平々凡々と過ぎ去り気が付けば17年…。

こう、なんの変哲もなく、何なら恋する相手すらろくに居ないまま17年て…。

いやもう、わたしの人生つまらなさ過ぎでしょうが…。

なんて事を毎日のように考えながら、家の手伝いでアクセサリーとか雑貨とかつくりながら生計を立ててた訳なんだけど…。

訳…なんだけどさ…、転機ってのは何の前触れもなく突然やってくるもんで…。

「ようやく見つけちゃったぁ~♪
わたしね、ずーっと探していたの。
生前、別の世界の私の事を何の遠慮も躊躇もなく殺したニンゲンの事をね。
まぁ…、まさか私がその大嫌いなニンゲンの姿になるとは思わなかったんだけど…。」

みなさん、わたしの今の状態を説明します。
と言うか説明させてください。
できれば助けてください!!


私はいつも通り、家で作った雑貨を売りに森を通って下町に向かっていた!

そしたらなんと!
急に目の前に現れたセクシーな衣装に身を包んだ金髪に緑色の瞳の綺麗なお姉さんに…何故かわけわからない理由で今!殺されそうになっています!!

「あの…その…人違いじゃないですか?人違いですよ。
と言うか生前の話とかされてもそれ私本人かどうかとかわかんないですよね?ね?だからうん!人違い!!
てわけで、私はこれで。」

うんうん、そうだよね。
わたしがこの人の生前の仇の訳がない。
そもそも根拠がない。
て言うか、いやほんとわけわかんない!!

「うんうん、普通はそう思うわよねぇ?だってあなたの言う通り、生前の貴女と今の貴女が同一人物かなんて普通分からないもの。
でもね、私にはわかるのよ。そう言うスキルがあるから。」

そう言うと、目の前のお姉さんの額に3つの黒い球体が浮かび上がる。

「生前の私の特徴が色々とスキルになってるらしいんだけどぉ、そのうちの一つにこの【単眼】があるの。
生前のこの目は明るさとか色を見るための物だったんだけど、この世界では【魂の色と明るさ】を見れるのよ。
まぁスキルは他にもあるんだけどぉ、スキルが目覚めた時に生前の記憶も思い出してねぇ~。
そこで貴女の事もしっかり思い出せたってわけぇ。」

いやいやいやいや…。
伝説の勇者や魔物の類とかニンゲンと少しかけ離れた存在にはスキルが宿る!なんて話は聞いたことあるけどさ、今目の前にいるおねぇさんがそんなスキル持ちで、しかも私が生前の仇でなんてそんな何億分の一みたいな事ある…?
いや、あったとしてそう簡単に見つけられるものなの?

ほんとわけわかんない…。

とりあえず…逃げなきゃ…。
この人の目…、さっきからやばい…。
本当に私を殺す目をしてる。

と言うかアレ?
私、生前もニンゲンだったんだ。

はぁ…ほんとつまんないなわたしの人生…。

そしていま、恋すら知ることなくわたしは今殺されようとしてるわけか…。

「逃げる覚悟から死ぬ覚悟に変わったのかしら?
まぁ、あっけなく死なれても面白くないから、ゆっくりと苦しめながら殺してあげようとは思ってるんだけどぉ…。」

そう言うと、おねぇさんはバサッとスカートをはためかせてセクシーな足元を見せると、ふとももにつけたベルトから細長い針を取り出した。

あ、これアレだ。毒針的なやつでチクッとされるやつだ。
多分…。

あれ…?毒…針…?

「スズメ…バチ…。」

わたしがふと頭に流れた生き物の名前を呟くと、目の前のお姉さんの表情が変わっていく。

「あらぁ?少しは思い出してくれたかしら生前の記憶を。
私の事を私の住処ごと焼き払って殺したその罪も…。」

顔を上げるとお姉さんの顔が目の前にまで迫っていた。
血の気が引いていくのがわかる。
今までの人生で感じた事のない程の強い恐怖がわたしを支配してるのがわかる。

「思い出してくれたかしらぁ?」

お姉さんが先程の細長い針を自らの指を突き刺すと、お姉さんの指から緑色の血が流れていく。
どう見てもこんなのニンゲンには毒じゃん…。
こんなん刺されたら絶対死ぬ…。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ…!

と言うかわたしがいわゆる異世界転生とか言うやつしてたのもびっくりだけどもそれ以前に…。

異世界転生するのは人間だけだといつから錯覚していた?

ありえない話じゃないよね。
動物とか虫とか転生してるって事実も。

と言うか、蜂に恨まれてるならそれ以外にも生前殺した虫は数知れずなんだけど…。

だって生前のわたしの実家も今みたいなど田舎だもん!

蜂も蟻も百足もみんな大嫌いな黒光さんも大量に殺してきたわよ!!

もしこれが序章的なアレならわたしもしかしてこれから生前殺してきた虫たちに命狙われまくることになりかねない予感がするんだけど!?

いやいやいやいや…ありえないから!
そんな命の狙われ方も死に方もないから!!

いや、でもこのままだとわたし、確実に目の前にいる女王蜂的なお姉さんに殺されるのか…。

短い人生だった…。

「……。あのぉ、あんたさっきから考えてる事口から出てるわよ…?
て言うかぁ、わかってるならそろそろ刺されてみる?」
「お断りします!見逃してください!」
「見逃すわけないでしょぉ?私、貴女を殺しに来たんだからぁ~♪」

ですよねぇ…。
もう覚悟を決めよう。
わたしの人生完!次回作の人生にご期待ください!!

「大丈夫よ。ちくっとした痛みは一瞬。
その後の苦しみはぁ…末長く続くから♪わたしを殺した時のように苦しみながら死になさい!」
「もうだめだぁ…おしまいだぁ…。」

わたしが某戦闘民族の王子様のように情けないセリフを吐いていたら、どこからか現れたイケメンがこのピンチを…!!

「救いにこない…!!ちょおっ!普通こう言うタイミングで誰か助けに来るもんじゃないのかよぉ~っ!」
「世の中そんなに都合良くはいかないもんよ。そう、都合良くなんてねぇ。」

だよねぇ…。それにしても虫かぁ…。

生前、田舎で飼ってた猫がよくお供え物のように枕元に置いていってたっけ…。

わたしが死ぬよりもずっと早く亡くなったけど…、
もし、もしもさぁ…居るなら助けに来てよ…。
ご主人様のピンチだよ…。
今来たら最高にカッコ良いよ…。

なんてね…。

「アンタ…いつから私の背後に居たの…?」

あれ?私を殺そうとしてた目の前の女王蜂お姉さんの首元にナイフが突き立てられてる。

「獲物を捉える時はゆっくりと。仕留める時は一瞬で。
それが我が流儀ですよ。」
「アンタ…何者よ…!!」

女王蜂お姉さんが背後に居た何者かに首元を掴まれ、勢いよく後方に投げ飛ばされた。
つまり…私は助かった!!

「貴方…もしかして…。」
「えぇ、吾輩は猫である。名前は…。」

わたしは目の前に突如現れたカッコいいお髭の生えたイケおじを勢いよく抱きしめた。

「クロちゃん!!」
「バロンです。」

かくして、虫が転生したお姉さんに命を狙われたわたしは、バロンという名の自称猫(?)に命を救われたのだった。
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