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魔法騎士学院の生活の始まり。
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幼い頃にみた景色が忘れられない。
親の都合で連れて行かれた王宮。
そこで謁見した、シャルフェンブルク帝国の王族の方々。
距離が遠かったため表情まではわからなかったが、
王族の証である紅い髪が輝いていて。
とりわけ、自分と同じくらいの年の王子が、
ひときわ輝いて見えた。
それは一種の一目惚れだった。
「いつかこの方をお守りする魔法騎士になるんだ!」
「いつか金獅子騎士団に入団して、専属護衛騎士になるんだ!」
と俺は子供心に誓った。
俺の名前はラルフ=ゲーゲンバウアー。
魔法騎士を多く輩出するゲーゲンバウアー公爵家の次男である。
ゲーゲンバウアー家らしい、エメラルド色の瞳。
髪の色は濃い緑寄りの黒髪だ。
ところで、
我がシャルフェンブルク帝国には3つの騎士団がある。
王族の警備を担当する金獅子騎士団、
王都や市街地の警備を主に担当している銀鷲騎士団、
魔獣退治を主に担当している黒竜騎士団、
この3つの騎士団だ。
そして騎士団に所属するには、
魔法騎士学院を卒業し、魔法と剣の技術を習得する必要がある。
そして魔法騎士学院で優秀な成績で卒業すると、
自分の希望する騎士団に入団しやすくなると言われている。
そう、シャルフェンブルク帝国には貴族の階級があるが、
貴族間の血筋による上下関係はあまりない。
特に騎士団の中での上下関係は、力が全てだ。強い者が統べる。そういう世界。
ただし、王族だけは別である。
王族の血筋のものは紅い髪と紅い瞳をもち、
それ以外の人に、紅をもつものはいないとされている。
それゆえ、紅の色は王族の色として尊重され、
紅の髪と紅の瞳をもつものは王族の証とされるのである。
そしてこの帝国において、王族の力は絶対である。
13歳になった俺は、
国立の魔法騎士学院に入学した。
この学院は、帝国全土から魔法と剣の才能をもった若者が
男女問わず入学する。
(とはいえ、魔法騎士という性質柄、男子が多めだ。)
魔法騎士を目指す俺も迷わず魔法騎士学院を進路に選んだ。
初日の授業のため、席に座っていると
隣の席のヤツが俺に話しかけてきた。
茶色の瞳に茶色の髪の毛。
堅物、真面目と言われがちな俺と違って、
人懐っこそうな顔のヤツだ。
「ねえ、名前なんて言うの?」
「人に名前を尋ねるなら自分の名前を名乗れよ。」
「あ、ごめん、オレはエリアス。エリアス=ザイデル。」
「俺はラルフ=ゲーゲンバウアーだ。」
「え?ゲーゲンバウアーってあの公爵家の?」
「ああ、そのゲーゲンバウアーだ。」
「ってことは、レグルス先輩の弟?」
「確かにレグルスは兄だが・・・
兄はそんなに有名なのか?」
「ああ、今3年生の、
レグルス先輩、アルベルト先輩、ヴァルター先輩の3人は
いろんな意味で学院を無双しているらしいよ。」
「ああ、その3人か。
その3人は子供の頃から家族ぐるみで交流があって・・・
この学院でもそうなのか。容易に想像がつくな。」
強くて、モテて、問題児。
そんな3人。
てかコイツ、入学早々になんでそんなこと知っているんだろう。
情報通なのか?
「そんなすごいお兄さんと比較されることが苦になったりしないのか?」
とエリアスが聞いてくる。
「兄さんはすごすぎて俺と比較できる次元じゃないから、
もはや気にならない。
それより・・・」
「それより?」
「いやなんでもない。」
それより・・・
俺と同じようにとんでもなく優秀な兄を持ち、
同じような境遇なのに、
強さを求めてまっすぐに鍛錬を続けている、
アルベルトの弟であり、俺の一歳年下であるジークハルトに
俺は以前から密かに劣等感を抱き続けている。
ゲーゲンバウアー家は代々魔法に優れた家系なのだが、
子供の頃から続けてきた修行では俺はそこまで力を伸ばせなかった。
魔法騎士としては平凡レベル。
つまりゲーゲンバウアーの人間としては、落ちこぼれなのだ。
だから、
「金獅子騎士団に入って、王太子殿下の専属護衛騎士になりたい。」
という夢は家族には告げられないままだった。
お前には無理だろう、と言われるのが目に見えているから。
以前、
アルベルトさんやジークハルトと会ったとき、
ジークハルトに
「ジークハルトは、なんでそんなに鍛練をするんだ?」
とこっそり聞いたことがある。
すると、
「強いアルベルト兄さまがかっこいいから。兄さまみたいに強くなりたい。」
と無表情のまま返ってきた。
(ジークハルトは幼い頃からなぜかいつも無表情なのだ。)
それ以来、
まっすぐに強さだけを求められるジークハルトに、
凄さと、
うらやましさと、
妬ましさと、
複雑な感情を抱いている。
「なあ、なんで魔法騎士学院に入ったんだ?
やっぱり家の影響?」
とエリアスが話しかけてきたので、俺ははっとして意識を会話に戻した。
どうしよう、言ってしまおうか。
エリアスはいいやつそうだし、
さすがに俺のことなんて知らないだろうから、
言ってしまってもいいんじゃないか。
「家のことは関係なくて、
金獅子騎士団に入って、王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢なんだ。
小さい頃に遠目だったけどお見掛けしたことがあって、
そのときからあの方をお守りできるような存在になりたい、と専属護衛騎士に憧れているんだ。」
言ってしまった。
王族の専属護衛騎士なんて、
金獅子騎士団の中でもエリート中のエリートだ。
そんな大それた夢って笑われてしまうだろうか。
「へぇ、面白いじゃん。
入学したばかりなのにもうこんなに明確な夢や目標があるなら、
叶えがいがあるな。」
とエリアスはにやっと笑った。
馬鹿にされなかった。
俺は気づかないうちに手を握りしめていたことに気付いた。
知らない間に力を入れていたらしい。
手をそっと開いて手のひらを見つめる。
「オレはまだ具体的な目標はみつけられてないかなあ。
色々やってみて、ゆっくり、今後なりたいものを見つけたい。」
と、エリアスは前を見ながら話し続けていた。
そして俺のほうを見て、
「一緒に学院生活を楽しもうぜ!
エルって呼んでくれよ。よろしく!」
と言った。
俺はなんだか楽しい学院生活が送れそうな気がしてきた。
-------------------------------------------------------------------------
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
このお話は、
このお話だけでも読める内容ですが、
同じくアルファポリスさんで公開しております、
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
と合わせて読んでいただけると、
10倍くらい楽しんでいただけると思います!
同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。
真面目で堅物なラルフ(攻)と
人懐っこくて親近感がエグいエル(受)との、
一風変わったBLを最後まで楽しんでいただけたら幸いです!
よろしくお願いします!
親の都合で連れて行かれた王宮。
そこで謁見した、シャルフェンブルク帝国の王族の方々。
距離が遠かったため表情まではわからなかったが、
王族の証である紅い髪が輝いていて。
とりわけ、自分と同じくらいの年の王子が、
ひときわ輝いて見えた。
それは一種の一目惚れだった。
「いつかこの方をお守りする魔法騎士になるんだ!」
「いつか金獅子騎士団に入団して、専属護衛騎士になるんだ!」
と俺は子供心に誓った。
俺の名前はラルフ=ゲーゲンバウアー。
魔法騎士を多く輩出するゲーゲンバウアー公爵家の次男である。
ゲーゲンバウアー家らしい、エメラルド色の瞳。
髪の色は濃い緑寄りの黒髪だ。
ところで、
我がシャルフェンブルク帝国には3つの騎士団がある。
王族の警備を担当する金獅子騎士団、
王都や市街地の警備を主に担当している銀鷲騎士団、
魔獣退治を主に担当している黒竜騎士団、
この3つの騎士団だ。
そして騎士団に所属するには、
魔法騎士学院を卒業し、魔法と剣の技術を習得する必要がある。
そして魔法騎士学院で優秀な成績で卒業すると、
自分の希望する騎士団に入団しやすくなると言われている。
そう、シャルフェンブルク帝国には貴族の階級があるが、
貴族間の血筋による上下関係はあまりない。
特に騎士団の中での上下関係は、力が全てだ。強い者が統べる。そういう世界。
ただし、王族だけは別である。
王族の血筋のものは紅い髪と紅い瞳をもち、
それ以外の人に、紅をもつものはいないとされている。
それゆえ、紅の色は王族の色として尊重され、
紅の髪と紅の瞳をもつものは王族の証とされるのである。
そしてこの帝国において、王族の力は絶対である。
13歳になった俺は、
国立の魔法騎士学院に入学した。
この学院は、帝国全土から魔法と剣の才能をもった若者が
男女問わず入学する。
(とはいえ、魔法騎士という性質柄、男子が多めだ。)
魔法騎士を目指す俺も迷わず魔法騎士学院を進路に選んだ。
初日の授業のため、席に座っていると
隣の席のヤツが俺に話しかけてきた。
茶色の瞳に茶色の髪の毛。
堅物、真面目と言われがちな俺と違って、
人懐っこそうな顔のヤツだ。
「ねえ、名前なんて言うの?」
「人に名前を尋ねるなら自分の名前を名乗れよ。」
「あ、ごめん、オレはエリアス。エリアス=ザイデル。」
「俺はラルフ=ゲーゲンバウアーだ。」
「え?ゲーゲンバウアーってあの公爵家の?」
「ああ、そのゲーゲンバウアーだ。」
「ってことは、レグルス先輩の弟?」
「確かにレグルスは兄だが・・・
兄はそんなに有名なのか?」
「ああ、今3年生の、
レグルス先輩、アルベルト先輩、ヴァルター先輩の3人は
いろんな意味で学院を無双しているらしいよ。」
「ああ、その3人か。
その3人は子供の頃から家族ぐるみで交流があって・・・
この学院でもそうなのか。容易に想像がつくな。」
強くて、モテて、問題児。
そんな3人。
てかコイツ、入学早々になんでそんなこと知っているんだろう。
情報通なのか?
「そんなすごいお兄さんと比較されることが苦になったりしないのか?」
とエリアスが聞いてくる。
「兄さんはすごすぎて俺と比較できる次元じゃないから、
もはや気にならない。
それより・・・」
「それより?」
「いやなんでもない。」
それより・・・
俺と同じようにとんでもなく優秀な兄を持ち、
同じような境遇なのに、
強さを求めてまっすぐに鍛錬を続けている、
アルベルトの弟であり、俺の一歳年下であるジークハルトに
俺は以前から密かに劣等感を抱き続けている。
ゲーゲンバウアー家は代々魔法に優れた家系なのだが、
子供の頃から続けてきた修行では俺はそこまで力を伸ばせなかった。
魔法騎士としては平凡レベル。
つまりゲーゲンバウアーの人間としては、落ちこぼれなのだ。
だから、
「金獅子騎士団に入って、王太子殿下の専属護衛騎士になりたい。」
という夢は家族には告げられないままだった。
お前には無理だろう、と言われるのが目に見えているから。
以前、
アルベルトさんやジークハルトと会ったとき、
ジークハルトに
「ジークハルトは、なんでそんなに鍛練をするんだ?」
とこっそり聞いたことがある。
すると、
「強いアルベルト兄さまがかっこいいから。兄さまみたいに強くなりたい。」
と無表情のまま返ってきた。
(ジークハルトは幼い頃からなぜかいつも無表情なのだ。)
それ以来、
まっすぐに強さだけを求められるジークハルトに、
凄さと、
うらやましさと、
妬ましさと、
複雑な感情を抱いている。
「なあ、なんで魔法騎士学院に入ったんだ?
やっぱり家の影響?」
とエリアスが話しかけてきたので、俺ははっとして意識を会話に戻した。
どうしよう、言ってしまおうか。
エリアスはいいやつそうだし、
さすがに俺のことなんて知らないだろうから、
言ってしまってもいいんじゃないか。
「家のことは関係なくて、
金獅子騎士団に入って、王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢なんだ。
小さい頃に遠目だったけどお見掛けしたことがあって、
そのときからあの方をお守りできるような存在になりたい、と専属護衛騎士に憧れているんだ。」
言ってしまった。
王族の専属護衛騎士なんて、
金獅子騎士団の中でもエリート中のエリートだ。
そんな大それた夢って笑われてしまうだろうか。
「へぇ、面白いじゃん。
入学したばかりなのにもうこんなに明確な夢や目標があるなら、
叶えがいがあるな。」
とエリアスはにやっと笑った。
馬鹿にされなかった。
俺は気づかないうちに手を握りしめていたことに気付いた。
知らない間に力を入れていたらしい。
手をそっと開いて手のひらを見つめる。
「オレはまだ具体的な目標はみつけられてないかなあ。
色々やってみて、ゆっくり、今後なりたいものを見つけたい。」
と、エリアスは前を見ながら話し続けていた。
そして俺のほうを見て、
「一緒に学院生活を楽しもうぜ!
エルって呼んでくれよ。よろしく!」
と言った。
俺はなんだか楽しい学院生活が送れそうな気がしてきた。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
このお話は、
このお話だけでも読める内容ですが、
同じくアルファポリスさんで公開しております、
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
と合わせて読んでいただけると、
10倍くらい楽しんでいただけると思います!
同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。
真面目で堅物なラルフ(攻)と
人懐っこくて親近感がエグいエル(受)との、
一風変わったBLを最後まで楽しんでいただけたら幸いです!
よろしくお願いします!
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