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あれから数年後、とある夜会にて。
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今日はエルの妹である皇女様の婚姻披露の夜会が開かれていた。
お相手は長年遠距離恋愛だったという元黒竜騎士団の団長のダンテ様だ。
(以前はダンテ団長と呼んでいたが、これからはダンテ様とお呼びすべきだろう)
エルと俺は、本日の主役の兄かつ帝国の王太子、と、その専属護衛騎士、という立場で夜会に参加していた。
王族の近しいものだけがあつまる高台から、社交の場と化した華やかな広間を見下ろしていた。
遠目にジークハルトを見かけた。
ダンテ様の後任にはジークハルトが黒竜騎士団の団長になったと聞いていた。
「ジークハルトに声をかけないの?幼馴染なんでしょ?」
とエルが俺に小声で話しかけてきた。
「必要ない。職務中だ」
俺はそっけなく返す。
「魔法騎士学院の頃は、ラルフはジークハルトにバチバチのライバル心を
抱いてたよね」
エルが面白そうに言う。
「あの頃のことは黒歴史だから触れてくれるな」
右手で額を押さえながら、早口で返す。
「そうだったね、ラルフは自分の恋心にも気づかず、
持病だ、呪いだ、と大騒ぎしていたもんね。
あの頃のラルフ、かわいかったなぁ・・・」
「もうやめてくれ・・・」
羞恥心で逃げ出したくなる。
いや、俺はエルの専属護衛騎士だから逃げることは許されないのだが。
「あ、クラウスもいるね。
魔法騎士学院の一つ下の学年だったクラウス、覚えてる?」
「ああ、兄さんと仲がいいヴァルターさんのパートナーだからな、
覚えてるよ。」
「魔法騎士学院の4年生だった頃かな、
この国でごたごたがあって、
実はクラウスと恋をはぐくむように父上に差し向けられたことがあったんだよね」
「なんだそれは!?初耳だぞ」
エルのとんでもない発言に俺は思わず大きな声で反応してしまった。
「だって初めて言ったもん。
オレはその頃にはすでにラルフのことが好きだったからどうしようかと思ったよ。
この帝国の危機に関することだったから無下に断ることもできなかったし。
その頃にはどうやらヴァルターと恋人関係だったみたいで、
クラウスのほうから断ってくれて心の底からほっとしたなぁ」
「その帝国の危機とやらはもう大丈夫なのか!?」
「うん、大丈夫。
クラウスとヴァルターが頑張ってくれたからね。
でももう今となっては頼まれてもラルフ以外のヤツと恋なんかできないから安心してよ」
エルは俺を流し目で見ながらふっと笑った。
「俺だって、生涯エルだけだ。エルだけを愛している」
俺たちは誰からも見られぬよう、こっそり背中の後ろで指をからませたのだった。
----------------------------------------
アルファポリス様に投稿させていただいております、
世界観や登場人物がリンクしている
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
「オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。」
この3作品が完結した記念に
数年後の番外編を各々の作品に投稿いたしました。
各登場人物たちのその後や、
あのときのネタバレなどをしておりますので、
3作合わせて楽しんでいただけたらうれしいです!!!
お相手は長年遠距離恋愛だったという元黒竜騎士団の団長のダンテ様だ。
(以前はダンテ団長と呼んでいたが、これからはダンテ様とお呼びすべきだろう)
エルと俺は、本日の主役の兄かつ帝国の王太子、と、その専属護衛騎士、という立場で夜会に参加していた。
王族の近しいものだけがあつまる高台から、社交の場と化した華やかな広間を見下ろしていた。
遠目にジークハルトを見かけた。
ダンテ様の後任にはジークハルトが黒竜騎士団の団長になったと聞いていた。
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俺はそっけなく返す。
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右手で額を押さえながら、早口で返す。
「そうだったね、ラルフは自分の恋心にも気づかず、
持病だ、呪いだ、と大騒ぎしていたもんね。
あの頃のラルフ、かわいかったなぁ・・・」
「もうやめてくれ・・・」
羞恥心で逃げ出したくなる。
いや、俺はエルの専属護衛騎士だから逃げることは許されないのだが。
「あ、クラウスもいるね。
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「ああ、兄さんと仲がいいヴァルターさんのパートナーだからな、
覚えてるよ。」
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実はクラウスと恋をはぐくむように父上に差し向けられたことがあったんだよね」
「なんだそれは!?初耳だぞ」
エルのとんでもない発言に俺は思わず大きな声で反応してしまった。
「だって初めて言ったもん。
オレはその頃にはすでにラルフのことが好きだったからどうしようかと思ったよ。
この帝国の危機に関することだったから無下に断ることもできなかったし。
その頃にはどうやらヴァルターと恋人関係だったみたいで、
クラウスのほうから断ってくれて心の底からほっとしたなぁ」
「その帝国の危機とやらはもう大丈夫なのか!?」
「うん、大丈夫。
クラウスとヴァルターが頑張ってくれたからね。
でももう今となっては頼まれてもラルフ以外のヤツと恋なんかできないから安心してよ」
エルは俺を流し目で見ながらふっと笑った。
「俺だって、生涯エルだけだ。エルだけを愛している」
俺たちは誰からも見られぬよう、こっそり背中の後ろで指をからませたのだった。
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「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
「オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。」
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