はてんこう

妄想聖人

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一一四年目の挑戦 4

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「高速洞路上方一〇七度、右方向九七度に不安定化の兆候見られる」
 嘉兵衛の報告で艦橋に居る全員に緊張が走った。
 来たか。
 真結は団長席に付属してあるモニターを操作し、艦体上方の外部カメラに接続した。誰も見たことないような、鋭く攻撃的な目付きで黄昏色の空間を睨む。真っ直ぐに伸びている空間が、渦を巻くかのように歪んでいく。
「すぐに出洞して」
「はい」ソライヤーは高速洞路から出る準備を始める。
 泰安城の近くに出現したと聞いていたので、接敵するのは時間の問題だと考えていた。事前に団員たちにも伝えていたので、迎え撃つ準備はできていた。
「出洞するまでの時間を稼いで」
「全火器起動。高熱砲、電磁速射砲。ミサイル発射管。近接防御火器全て装填完了。砲門開きます」
「戦闘隊に告げる。戦闘機隊は搭乗して待機。能拡機隊は一番隊、二番隊は重砲戦装備で迎え撃て。間違っても艦から離れるなよ」
 ジャーとカムイシトはそれぞれの仕事をした。
「団長」佳代は僅かに腰を曲げ、主人の耳元で話しかけた。「私はどうすればよろしいでしょうか?」
「お願い出撃して。出撃後はカムイシトに従って」戦闘に関してはど素人なので、その時、その場に応じて、的確な命令を下せる自信はなかった。また指揮系統が複数存在しては、現場では要らない混乱が生じる。これは、会社経営にも通じることだ。
「畏まりました」佳代は踵を返して走り出した。イヤホン型通信機に手を当てて格納庫へ指示を送る。「私の赤備を重砲戦装備で用意しろ」
「出洞までの時間は?」
「七分三六秒です」
 高速洞路の難点は、出る時には時間がかかることだ。実はただ出るだけだったら、時間は掛からない。その代わり、体が思いっきり前に引っ張られ、金属の壁に激突しぐしゃっと潰れる危険性がある。イメージとしては、時速百キロで走行中に、急ブレーキを踏むようなものだ。安全に出洞するためには、高速洞路内の引っ張る力を徐々に弱めないといけない。イメージとしては、何度もブレーキを踏んで、徐々にスピードを落としていくようなものだ。
 真結は雅に顔を向けた。表情はいつも通りに見えるが、長い付き合いだ。平静を装っているだけなのはお見通しだ。真結の従者に相応しくあろうと振舞っている。こんな時でも、仕事に対する意識が高いのは嬉しくあり誇らしいと同時に、自分を叱った。戦争とは無縁に生きてきたから、怯えているのではないかと思った。
これを言ったら、真結もこれが初陣だ。ただ彼女の場合は、貴族として団長としての面子があるから、誰にも情けない姿を見せられない。
 雅は恐怖を感じてはいるだろうが、それを表に出さず気丈であろうとしている。従者の芯の強さを見誤ってしまった。励まそうと思った自分の傲慢さが嫌になる。一番の忠臣にして親友のそんな姿から逆に勇気を貰い、真結は奮起する。
「高速洞路に穴が開くぞ」嘉兵衛は大声で報告した。
 真結はモニターを凝視した。渦巻いていた箇所が、歪な形の暗闇に変わった。数えるのも馬鹿らしくなるほどに大量の黒い物体が真っ直ぐ破天荒丸に向かってくる。
 宇宙害獣。
 人類は奴らをそう呼んでいる。人類が順調に宇宙の版図を広げていた頃に、出会った宇宙で暮らしている生命体だ。そして、冒険団が廃れてしまった唯一の理由でもある。その性質は、凶暴の一言に尽きる。共存共栄を旨とする帝国人ですら、住み分けは不可能だ。と、匙を投げてしまうほどに、害獣は見境なく襲ってくる。軍による殲滅戦が何度も行われたが、最終的には不可能と判断され放置された。モニターに映っているのは、害獣の中でも最小(現在確認されている中で)の兵隊蝿(へいたいはえ)。犬科の頭部。蝿のような胴体。四対の類人猿のような腕を持ち、中型車並みのサイズをしている。
「概算で三万を超えている。接触まで十一分」
 害獣の戦術?は単純で、物量で押し込んでくるだけだ。その単純極まりない攻撃に、数多の冒険団が犠牲になった。
「全弾打ち尽くして構わない。絶対に近づけるな」


「間違っても射出孔から出るな。搬入口から出るぞ」
 佳代が格納庫に到着すると、怒号のような命令が下った。両肩にガトリング、腰回りには持てるだけの弾倉と手榴弾。左右の脚部にミサイルポッド、足には磁気ブーツ、左手に大型の盾、右手にはアサルトライフルを持つ、戌井重工業製の能力拡張機である飛翔たちが、宇宙害獣を迎撃すべく急いで艦外へ出ようとしていた。
 佳代は壁を蹴って、自機である赤備に真っ直ぐに向かう。小型のロボットたちが、飛翔と同じ装備を装着しようと一生懸命に働いている。飛翔との装備で唯一の違いは、高周波打刀光圀(みつくに)があるぐらいだろう。うなじ部分にある搭乗口で待機していた整備士の手に捕まって佳代は止まった。
「装着まで何分かかる?」佳代は訊いた。
「一分も掛からずに終わります」
「できるだけ急いでくれ」
 佳代は赤備に乗り込んだ。薄暗い中、椅子に座り両手を籠手に通した先にある情報読み取り球に置いた。佳代の生体情報が自動で読み取られ、赤備が起動し、搭乗口が閉口した。椅子に付属してある保護兼固定する防具が体を覆っていった。最後にフルフェイス型の兜が顔を覆い隠した。ぱっと見は甲冑を着ているようだ。佳代は目を瞑った。数秒後に目の前の光景が映し出されたが、それは彼女が見ている光景ではない。赤備のカメラアイを通して映る光景を見ているのだ。佳代は軽く頭を左右に動かすと、赤備も同じように動いた。問題なく動きが同調していた。
 憑依操縦法。
 これが赤備と飛翔の決定的な違いと言える。厳密に言うと、この二機は分類が違う。軍事用語で説明すると、飛翔はリアルロボットと呼ばれ、赤備はスーパーロボットと呼ばれている。リアルロボットは二つの操縦桿を動かして操縦するのに対して、スーパーロボットは憑依操縦法で動かす。これは脳から発せられる電気信号を機械が読み取り、生身での運動と変わらない運動を忠実に再現する。これがまるで、機体に魂が憑依したような感覚になるから、憑依操縦法と呼ばれている。
 操縦方法が異なるのは、リアルロボットでは武士が学んだことを十二分に発揮できないためだ。例えば、操縦桿をガチャガチャ動かしては、体得した剣術を上手く再現できない。という問題が発生した。更に、感覚が違う。とか、思い描く動きができない。という不満も噴出した。試行錯誤の末に、元は手足が欠損した人のための医療技術であったこれが採用され現在の形に落ち着いた。つまり、リアルロボットは乗り物であるのに対して、スーパーロボットは馬鹿でかい鎧なのだ。スーパーロボットはその個人の特徴や癖にあわせて設計調整されるため、一機一機が特注品であり、同じ機体は二つとして存在しない。そしてスーパーロボットは武士たちが好んで使う能力拡張機でもある。
 他の違いを挙げるとすると、外観もかなり異なる。飛翔の全長が一五メートル未満なのに対して、赤備は三〇メートルを超える。飛翔の頭部はフルフェイスなのに対して、赤備は人間の顔にかなり近い造りになっている。
 整備士の全身がカメラアイを通して映った。「装着完了しました」
 視界の右下の隅に、出洞までの時間が表示される。真結の計らいだろう。
「ありがとう。離れていろ。赤備出るぞ」
 整備士やロボットたちは十分な距離を取ってから、赤備の固定具を解除した。
 佳代は自分の体を動かすのと同じ感覚で、赤備を立ち上がらせた。小型ロボットたちが、無重力の中を進んで、赤備の傍で停止した。ロボットたちはスーパーロボット用の盾とアサルトライフルを運んできた。それを受け取ってから、赤備は搬入口へと向かった。扉は既に全開に開いていた。
 両足に装着してある磁気ブーツを起動させた。強力な磁場が発生し、床に吸い付くように足が固定される。両足に特注の重りを取り付けているような感覚で、一歩を踏み出すのが大変であるが、構わず歩き続け搬入口から破天荒丸の艦体に足を付けた。
 赤備の各部には推進器が内蔵されており、破天荒丸から飛び出して戦闘することも可能だが、高速洞路航法時にはしない。艦と能拡機では出せる速度が違うため、逸れてしまう可能性が極めて高いのだ。艦と速度を同期させて離れて戦うということは可能だが、機動に制限が掛かってしまうため基本的にやらない。高速洞路戦闘では、艦にくっ付いてするのが基本だ。こういう理由から、高速洞路戦闘では戦闘機は役に立たない。
 初めての実戦に佳代は、昂る興奮を抑え込んでいた。主君のために冷静さを維持し、淡々と敵を倒すことだけを考える。
 佳代は砲塔を踏み潰さないように気を付けて、赤備で走りながら上方を見た。宇宙害獣の黒い群体が迫って来るのだが、その光景は夜空が落ちて来ているような錯覚に陥りそうだ。銃口を向けて引き金に指を添えた。狙いを定める必要はない。撃てば当たる状態だ。
 破天荒丸の高熱砲や電磁速射砲やミサイルが直撃すると、一瞬だけ穴が開くのだが、すぐに埋まる。艦体上部に到着した。各能拡機隊は、二人一組となり、互いの背中を守りながら迎撃している。
「済まないが混ぜてくれ」弾倉を交換しながら佳代は近くにいる一組に頼んだ。
「歓迎します」
 三機は互いの背中を守るように円陣を組んで攻撃する。持てる火力の全てを敵にぶつける。
 戦闘隊は考えなしに撃っているわけではない。破天荒丸が撃って次弾を装填するまでの僅かな時間に攻撃している。破天荒丸が撃っている間に能拡機隊は弾倉を交換している。攻撃に穴が開かないように注意しているのだ。
 だが、多勢に無勢である。撃っても撃っても敵の数が減っている気がしないし、弾薬が尽き初めてきた。仮に無限に発射できる魔法の銃が存在したとしても、この光景を前にしては、使用者の心が先に折れるだろう。
「弾薬が尽きる。補給を頼む」佳代は通信機を通して、格納庫の整備士たちに言った。
 佳代は出洞までの時間をちらっと確認した。残り二分を切っていた。もう少し踏ん張れば、敵の猛攻を防げる。
 整備士たちは既に準備していたようで、弾倉を積んだ四足歩行型補給ロボットたちが各組へと到着した。能拡機のパイロットたちは急いで弾倉を交換する。
 だが、そのせいで攻撃に穴が開いた。
 兵隊蝿が艦体上部に勢いに任せて着地した。
「しまった」佳代は焦る。艦内に潜入されたら最後、真結たちには反撃する手立てはなく、皆殺しされてしまう。
兵隊蝿は装甲を破ろうと口を大きく開けて歯を立てようとしたが、寸でのところで近接防御火器が木っ端みじんにした。と言っても殲滅したわけではない。まだ多くの兵隊蝿がいる。
「近接戦闘に入る」
 赤備は盾を構えた状態で近くの敵に激突した。敵は潰れ引き離すことに成功したが、盾も大きくひしゃげた。使い物にならないと判断し、盾とライフルを捨てて、光圀を抜いた。近くの敵を薙ぐと、紙を斬るかのように滑らかに両断した。近い敵を順に斬っていく。佳代の脳に直に響くかのように早期警戒警報が鳴った。左目の視界の隅に三体の敵が接近してくる映像が映った。上方に顔を向け、間合いを図って華麗に三体を切り捨てる。順調に切っていく赤備だが、一機だけでは手が足りない。
 飛翔隊の半分が艦体にくっ付いた敵の迎撃に回り、近接防御火器も活躍する。
 黄昏色の空間に黒い色が混じってきた。
「もう少しで出洞だ。踏ん張れ」通信機を通してカムイシトが激励した。
 空間の色合いが逆転し、遂に通常空間へと出た。突然の無重力に敵たちは、ふわっと宙へ浮いた。その瞬間、戦闘隊は磁気ブーツを解除し、各部の推進器が火を噴いた。高速洞路内ではできなかった機動戦を展開する。
残り僅かな敵は、逃げようとする素振りすら見せず、戦闘隊に襲い掛かる。赤備にも向かって来るが、擦れ違いざまに切り捨てた。飛翔隊もそれまでの鬱憤を晴らすかのように、敵を次々と倒していく。更に破天荒丸の援護攻撃もある。敵の殲滅は時間の問題であった。
「皆、無事?」戦闘が終わったところで真結が訊いた。
「私は無事です」佳代は答えた。各隊長が点呼を取ってから、無事を報告した。
「良かった」安堵の声を漏らしたが、すぐに団長として振舞う。「目視で被害状況を報告して」
「装甲が捲れています」佳代はできるだけ詳細に報告した。装甲には敵の紫色の血が飛び散っており、周囲には死体が漂っている。
「ありがとう。すぐに修理に取り掛かるから」
 既に待機していたらしい、蟹みたいな形状の修理ロボットたちが、格納庫からわらわらと出てきて、損傷個所の修理を始める。
続いてカムイシトが命じる。「戦闘隊は帰艦。機体は点検と補充。パイロットは休息を取れ」
 戦闘隊は素直に命令に従い順次帰艦する。
 赤備の中で佳代は、息を吐いていた。初めての実戦は、思っていたよりも動けた。初陣では、緊張や不安から思い通りに動けないと聞いたことがあったが、そうでもなかった。日頃の訓練や心構えの賜物なのかもしれない。ただ、敵を倒す。ということ以外に、余計なことを考える余裕がなかった。実戦とはそういうものなのか、それとも経験不足からなのかは答えは出なかった。今は奇跡的に、全員が生き残ったことを喜ぶことにした。


「戦闘機隊は射出孔から順次発艦し、直掩に入れ」
「待ってました」
 嬉々とした返事があった。
「レーダードローンを展開して警戒を厳にして」真結はジャーに命じた。逃げるにしろ戦うにしろ、敵を早期に発見できれば、行動するための時間を稼げる。
「了解。三六機のレーダードローンを射出。展開完了まで一二分〇四秒」
「真結様」雅が声をかける。「私も役に立ちたいのですが、何かありませんか?」
「皆に食事を配って。長丁場になるはずだから。まずはパイロットや整備士を優先して」
「畏まりました」雅は一礼してから艦橋を出た。
「暫くは通常航法で移動する。進路は現状を維持」
「わかりました」緊張から強張った顔をしているソライヤーは舵を握り直したが、必要以上に力が籠っている。
「残弾はどれぐらい?」
「残り一八%です」
「内訳を送って」
 暫くして、団長席に付属してあるモニターに、詳しい情報が表示された。真結は脳をフル回転させて素早く優先順位を付けた。モニターを操作して自動生産組み立て工場を起動させ、弾薬の製造を開始した。
「嘉兵衛。ちょっと来て」
「わかった」
 二人は立ち上がった。
「何かあったらすぐに連絡を頂戴」真結が言ってから、二人は艦橋を出た。
「何とか害獣共の猛攻を凌げたな」嘉兵衛は労いのつもりで言った。
「そうね」真結は気のない返事をした。
 凌いだと言っても、今後何度も遭遇するであろう、攻撃の一回目に過ぎないと二人は理解している。そもそも、単艦戦力で凌いだのは、実は凄いことであり、誇ってもいいのかどうかわからない。単艦戦力でも一回ぐらいは、凌げるものなのかもしれない。気が休まる暇もなく、次があるかもしれないので、二人は気を抜けなかった。
 二人は会議室に入った。人感センサーが反応し、自動で照明が点灯した。室内は広く、全団員が入っても、空間には余裕がある。床面中央には大きな立体映像ディスプレイが設置してあり、傍には操作パネルがある。真結はディスプレイの前に立った。嘉兵衛はパネルの前に立った。
「現在地を割り出して」真結は言った。
 嘉兵衛はパネルを操作した。部屋が薄暗くなり、ディスプレイが起動し、宙に破天荒丸を中心とした宙図が投影される。破天荒丸の周辺には小さな戦闘機隊が映っており、リアルタイムで動いている。
「星々の配置と高速洞路で移動した時間から算出して、現在地はこの辺になる」宙図が縮小され破天荒丸から少し離れた位置に、泰安城が映し出された。目で見ると、僅かな距離に見えるが、通常航法で戻ろうとするとゆうに数か月はかかる距離だ。「そして、目標星系はここだ」
 真結は溜息が出そうになるのを堪えた。破天荒丸から見た、ずっと先に目的地が映っている。全体行程の十二分の一ぐらいしか進んでいない。まだまだ先は長い。それだけ問題が発生するリスクも高まるということだ。簡単な旅路ではないのは頭ではわかっていたつもりだが、目で確認するとこれっぽっちしか進んでいないことに肩を落としそうになる。
「……仮に通常航法だけで目的地を目指した場合、どれぐらいの日数がかかるの?」
「害獣に食糧にストレスといった全ての問題を無視しても、五年以上かかる」
 現実的ではなかった。やっぱり高速洞路航法に頼らないといけない。わかりきっていることではあるが、使用すれば先程のように襲撃され戦闘になる可能性が極めて高い。今回は被害が軽微で済んだが、次は大損害を被るかもしれない。
「意見はある?」
「基本的なことしか言えないが、戦闘は避けるべきだろう。逃げられるのなら逃げに徹するべきだ」
「それについては私も同意見」冒険団は戦闘集団ではないのだ。しないで済むのならそれに越したことはない。「そのためにはどうしたらいいと思う?」
「答えられないな」
 それほど期待していなかったので、落胆しなかった。何故なら、逆に訊かれても、真結も答えられないからだ。宇宙害獣についてわかっていることは、ない。と断言してもいいぐらい、わかっていないのだ。生き物であるのは間違いないだろうが、それなら根本的な疑問が生じる。広大な宇宙でどうやって日々の糧を得ているのか。生物である以上、食べ物がなければ生きていけない。だから人類領域外に出てきた人類を襲うのだろうと考えられている。では、人類が出てこない日々は、どうやって生命活動を維持しているのか、誰にも分らない。他には、太陽の光が届かない漆黒の宇宙で、どうやって目標を発見しているのか。これについては二つの意見がある。まず目が退化したため、他の器官が異常なまでに発達した説。もう一つが、宇宙に適応するため、目が異常なまでに発達した説。議論はされたが、答えはでなかった。そして最大の疑問が、どうして害獣たちは高速洞路の存在を察知し侵入できるかだ。これに関してはどの学者も、仮説すら立てられなかった。細かい疑問も挙げればきりがないが、わからないことだらけだ。あまりにもわからないので、生態を調べようと軍による捕獲作戦が行われたが、全て失敗した。睡眠薬を始めとする各種薬品が利かない。檻を使って捕えようとした。運良く捕えても、檻を食べてしまうため捕獲できない。満足に調べることができないのだ。
 対宇宙害獣の最前線である泰安城なら、有用な情報を得られるのを期待していた。分布図があれば大いに役立つはずだった。だが、得られた情報は、害獣に縄張りが存在せず、常に移動しているというものだった。
 人類にとって未知の領域であり、未知の敵を相手にしなければならない。生半可な者では、心が折れてしまいそうな状況であるが、在りし日の冒険団たちはそういった未知に果敢に挑んでいったのだ。こうやって同じ状況に立ったことで、冒険団というのは凄い人たちの集まりなのだと心から敬服する。
 答えが出ないからと言って、思考を停止するつもりは二人にはなかった。わからないながらも、最善と思われる方法を考え出さなければならない。
「極短い間――十分とか二十分の間だけ高速洞路を使用するというのはどうかしら?高速洞路に侵入して来る以上、長時間居たら、それだけ察知される可能性が高いと思うの」先程の戦闘は、いつもの調子で移動していたから、襲撃に遭ったと考えた。移動時間を短くすれば、襲撃に遭う可能性は減るのではないかと思った。
「それを何度も繰り返して目的地を目指すのか」
 真結は頷いて肯定した。
「…………悪くない案に聞こえる。わからない以上、一つ一つ試していくしかないが、無謀に聞こえないのが良い。だが、技術者として言わせてもらうが、あまりお勧めはしたくない。装置に負荷がかかり過ぎる。壊れたら、全力で修理するが、その時の破損状況次第では、何日もかかるかもしれない。壊れるのは避けたい。侵入されるとは言え、害獣から逃げるのに役立つはずだからだ」
「つまり反対なの?」
「いや。試してみよう。装置に関しては僕が常に細かくチェックしておく。これ以上は無理だと思ったら、通常航法に切り替えてくれ」
 真結の通信機にジャーからの報告が入る。「哨戒長から団長へ報告。レーダードローン全て展開完了しました。現在、周囲に敵影は……右舷方向四五度下方一七度より接近中の群体を確認。概算、一万未満」
 真結は心の内で舌打ちした。
「戦闘警報発令。すぐに艦橋に戻る」
 二人は走って艦橋へと戻った。


 格納庫内に付属してあるパイロットの待機室で、佳代は空中で停止した状態で横になり、全身の力を抜いていた。傍から見ると、だらけているようにしか見えないが、全力で休憩しているのだ。同時に戦闘の熱が急速に冷えていく。武士にとって、休息も仕事の内なのだ。他のパイロットたちも思い思いに休憩している。全員が生き残ったというのもあり、皆の表情は明るい。
 赤備や飛翔は点検中だ。と言っても、点検用ロボットたちが行っており、それらを管理監督するのが人間の仕事だ。
「橘様も今度どうですか?」同僚と談笑していた男性パイロットの一人が話を振った。
 艦内の娯楽区にあるカジノで、一緒に遊ばないかという話だ。同じ釜の飯を食い、同じ敵と戦ったことで、以前よりも距離感が短くなった。
「団長の許可が出ればだが、良いぞ。だが、ただ遊んでもつまらないし、何か賭けないか?そっちの方が面白いだろ」
 カジノは本当にただの遊び場であり、チップは賭けるが、大勝しても何かに交換できるわけではない。これは真結の考えであり、冒険中にカジノ依存症になっては困るというものだ。
「意外ですね。橘様もそういうことを言うんですね」
「武士とはいえ、私も人間だ。そういうことだって言う」彼らとは、命を預け合って共に戦う仲間だ。皆ともっと交流を深めたいと思っている。
「だったら私も一口乗らせてください。面白そうです」それまで興味を示さなかった女性パイロットが乗ってきた。
「だったらこの場にいる全員でやるか?」佳代は提案した。
 参加を募った結果、ほぼ全員が参加を表明した。残りは、博打に興味がない。もしくは
博打が嫌いだから拒否した。
「何を賭けますか?」男性パイロットが訊いた。
「そうだな……」佳代は考えた。真っ先に削除したのは現金だ。どこかの港に寄る予定はないし、艦内にあるサービスは、全て無料で利用できるため使い道がない。そんな物を貰っても嬉しくないだろ。
 扉が控えめにノックされた。全員の頭の上に疑問符が浮かび、顔を見合わせた。ここはパイロットのための共有スペースであり、そのような礼を尽くすような場所ではない。訳が分からなかったが佳代が返事をした。
 扉が開き、大きめのショルダーバッグを肩にかけている雅が立っていた。意外な人物の登場に佳代は目を丸くした。トイレと風呂と就寝以外では、常に真結の傍らに控える彼女がやって来たのだ。
「何かあったのか?」佳代は体を起こして神妙な表情で雅を見下ろす。
「皆様に食事をお届けに参りました」そう言って雅は室内に入ろうとするのだが、スカートを妙に気にしている。
 佳代は知っていた。無重力下ではスカートが大きく捲れてしまうため、中が見えないように気を付けているのだ。まあ、下穿きは身に着けているのだが、それでも見られるのは嫌だし恥ずかしいのだ。そういう理由から彼女は無重力が嫌いなのだ。
 パイロットたちは喜びの声を挙げ、近くに居る人から一列に並んで順に受け取る。男たちは隠そうとしているが、鼻の下を伸ばして受け取る。佳代の目から見ても、雅は美人に見えるので仕方ないだろう。佳代は最後に受け取ることにした。
 佳代は雅の前に立って、容器とストローが刺さった細長い水筒を受け取った。
「団長の様子に変わりはないか?」佳代は訊いた。
「普段とお変わりなく働いております」
「そうか」もうちょっと話をしたかったのだが、様子を見るに彼女も暇ではないと察して、短い会話で打ち切った。空中に浮かんだ状態で容器を開けた。大きめの五目お握りが二つ。梅干し一個とキュウリの酢漬けが五切れ。飲み物は麦茶のようだ。ありがたく頂こうとしたら、戦闘警報が鳴り響いた。
「能拡機隊に告げる。機体に搭乗し待機せよ」艦内スピーカーを通してカムイシトが命じた。
 ぶつくさと文句を漏らすパイロットも居たが、急いで移動しながら口に含んだ分を飲み込む。佳代は容器を閉じて、赤備へと向かった。操縦席で食べることにした。


「状況は?」真結は団長席に座りながら訊いた。嘉兵衛も急いで自分の席に座った。
「彼我の距離を詰めて接近中。他の群体は確認されません」ジャーは報告した。
「それは朗報ね」本当に心の底からそう思う。「振り切れる?」
「多分…、無理だと思います」ソライヤーが答えた。
「応戦しますか?」ジャーは訊いた。
「戦闘は極力避ける。じゃないと、生存率が下がるでしょう?それに弾薬も十分に補充されてないでしょう?」
「その通りです……」
「ではどうする?高速洞路に入るか?」嘉兵衛が訊いた。
「まずは、周辺の宙図を出して」弾薬が十分にない状態で入洞したくなかった。運悪くまた戦闘になることを想定すると、まだ早い。
 団長席に付属してあるモニターに宙図が映し出された。地の利を活かせそうな何かがないかと探し見つけた。目標地点を定めてから、ソライヤーにデータを送った。
「最大速力でそこに向かって」
「わかりました」
 破天荒丸は補助推進器まで火を噴きながら、大きく面舵を切った。敵との距離は開かないが、縮まる速度は遅くなった。突出してきた敵の群れは戦闘機隊と破天荒丸の高熱砲で迎撃した。破天荒丸の進路上に大小様々な形をした岩石からなるアステロイドベルトが、行く手を阻むように現れた。このまま突入するわけではない。大型艦でアステロイドベルトの中を航行するのはベテランでも非常に難しい。まして今までまともに大型艦を操縦したことがないソライヤーにできるわけがない。ここを大きく迂回した。敵も釣られるように破天荒丸の後を追う。
 真結はモニターに映る敵味方の位置関係を注視してタイミングを計る。「アステロイドベルトに向かって、ミサイルを一発だけ撃って」
 意図を理解できなかったジャーは返事をせずに、真結に顔を向けた。
「爆風を利用して岩石を動かして敵にぶつける」
「それなら起爆は手動に切り替えます」
 発射管から一発のミサイルが飛び出し、アステロイドベルトに突入していった。
「戦闘機隊は破天荒丸の影に隠れるように」
「了解」
 カムイシトは命じた。戦闘機隊が隠れたのをモニター越しに確認した。肘掛けに備え付けてある受話器をを手に取り、真結は衝撃に備えるように全団員に命じた。
「今」
「了解」ジャーは起爆ボタンを押した。
 破天荒丸を最初に襲ったのは、爆発衝撃波だった。艦体が小刻みに揺れた。次に大小様々な岩石が、破天荒丸の右舷側に次々とぶつかり、音が鳴るたびに揺れる。自然と誰もが口を閉ざした。激しい戦闘にも耐えられる軍用装甲で守られているとはいえ、決して心臓によくない音だからだ。誰もが冷や汗を流している。一人を除いて。真結はモニターを注視していた。敵を意味する赤い光点が、次々と消えていく。レーダードローンも巻き添えに遭って、いくつか潰れた。全滅してくれと祈ったが、そう上手くいかなかった。それでもかなり減った。
 もしこれが、人間だったら甚大な被害により攻撃を諦めるところだろうが、敵は決して諦めることを知らない。もしくは闘争心の塊なのかもしれない。僅かしか残らなかったのに、それでも破天荒丸に向かってくる。
「敵の残りは?」岩石による散弾攻撃が落ち着いたところで真結は訊いた。
「百を切っています」ジャーが報告した。
「反撃に転じる」真結は勝機を見出した。
「戦闘機隊攻撃を再開せよ」命じてから、カムイシトは真結に顔を向けた。「能拡機隊も出撃させますか?」
「戦えるの?」時間的に補給がまだ済んでいるとは思えなかった。
「十分ではありませんが、戦闘機隊だけでは荷が勝ちすぎます」
「それなら出撃させて」出し惜しみをしている余裕はない。
 カムイシトは出撃を命じた。今度は射出孔から順に発艦していく。破天荒丸も反転し、高熱砲の砲塔だけが敵に狙いを定めて攻撃を開始した。敵は百を切っているとはいえ、健常な個体は数えるぐらいしかおらず、多くは体のどこかを欠損している。虫の息にしかみえない個体もいる。戦闘集団としてはまともに機能しないため、戦いは一方的であり、真結たちは味方に被害を出さずに殲滅に成功した。
「レーダードローンを再配置して。破天荒丸は停船して」
「えっ?あっ、はい」ソライヤーは戸惑いながらも、言われた通りにした。
破天荒丸の後部推進器から火が消え、前部推進器から小さな火が数回にわたって噴射された。
 敵地同然の場所で停船するなど正気とは思えず、真結の考えを聞くために全員が顔を向けた。
「艦の補修に弾薬の補充に時間が必要。それに二度に渡る戦闘に皆、疲れているでしょう?ここで一旦、長い休憩を取る。勿論、敵がやってきたら休憩は返上してもらうけどね」
「いつ敵に襲われるかわからないぞ」嘉兵衛が反論した。
「動いていた方が害獣に見つかりやすいのか?それとも、停まっている方が害獣に見つかりやすいのか?どっちかわかる?」
 勿論、わからないので、誰も答えられない。
「未知の敵である以上、一つ一つ試してみないといけない。直掩のローテーションは任せるよ」
「了解しました」カムイシトはすぐに自分の仕事に入った。
「まずは、嘉兵衛とソライヤーとジャーが休憩に入って。三時間後に私たちと交代して」
「わかった。無理はするなよ」
 嘉兵衛たちは艦橋を後にした。
 真結は背凭れに全身を預けながら息を吐いた。この判断が吉と出るか凶と出るかは、誰にもわからない。


 高速洞路から宇宙空間へと出洞した破天荒丸。すぐにレーダードローンが射出された。指定した位置に到着するまで、少々時間がかかるのだが、真結はこの待ち時間に嫌気が差すようになっていた。掛かっていのは全団員の安全であり、もっと早く到達できないのかと、いらいらするのだが、必死に抑え込んで団員たちに不機嫌な姿を見せないように気を張っている。
ようやく展開が完了した。
「周囲に敵影は確認されません」
 ジャーの報告で、艦橋にいる全員の緊張感が和らぐ。真結の肩から力が抜けた。出洞した場所で、宇宙害獣の群体と出くわす可能性もあるため、簡単に気は抜けない。
 真結はモニターに宙図を映し出した。十分、十五分、二十分の高速洞路航法を無作為に繰り返して、今ので十三度目の出洞だった。これまでのところ、敵と遭遇することなく順調に航海している。おかげで、全行程の五分の一を進めた。
「皆にお茶を入れてくれる」真結は後ろに控える雅にお願いした。緊張の連続なので、そろそろ一息入れた方がいいと判断した。この状態が続いたら、体よりも先に心が参ってしまう。佳代はいつ戦闘が始まってもいいように、パイロットの待機室に居る。
「僕は遠慮しておく」モニターを難しい顔で注視していた嘉兵衛は立ち上がった。「高速洞路生成装置を見て来る」
 本来なら、短い間に連続使用するような物ではないのだ。
「お願い」
 雅と嘉兵衛は並んで艦橋を後にした。
「順調な旅路ですな」カムイシトは敬意に満ちた表情を浮かべた。
「そうね」真結は素っ気無い返事をした。
確かに順調であるが、今は、に過ぎない。そもそも真結は、自分の読みが当たったとも、運が良かったとも思っていない。わからないことが多いので、客観的に見て慎重に判断しようとしている。思い込みで失敗したくないのだ。
「素直に喜んではどうですか?もしかしたら帝国の歴史上、我々が最も人類領域外を進んでいるのかもしれないのです。それを聞けば団員達も喜ぶでしょう。団長が眉間に深い皺を作っては、団員の士気に関わります」
「簡単に言わないでくれ」ジャーが反論した。「団長という立場上、簡単に楽観視はできないだろう。ましてや、ここは人類領域外だ。慎重になるのは当然だと思うが。僕や貴方とは責任の重みが違うのだから」
「それぐらい俺だってわかっている。俺は、団員たちのことも考えて欲しいだけだ」
「これは訓練じゃないんだ。団長が判断を誤れば、団全体を危機に晒すことになる」
 また始まった。
 真結は内心で呆れていた。この二人はよくぶつかる。主にカムイシトが意見を言えば、ジャーが反論するという感じで、艦橋では名物化しつつある。とはいえ、どちらの言い分も正しく、団のことを考えて意見をぶつけている。そのおかげで、思考の幅が増えるので、ヒートアップし過ぎない範囲でならためになる。
「……団長。何か指示はありますか?」男たちの言い合いには付き合いきれないという感じで、ソライヤーが口を挟んだ。
「進路と速度は現状を維持して」
「わかりました」
 ソライヤーは自分の仕事に集中する。
「二人ともそこまでにして」真結は仲裁に入った。「そろそろ雅が戻って来るから、一息ついてから話し合いをしよう」
 諭された二人は、口を閉ざして仕事に戻った。
 雅が大きめのショルダーバッグを肩にかけて戻ってきた。ストローの刺さったボトルと共に、一切れのカステラを各自に渡した。
「あれ?雅の分は?」真結は訊いた。彼女だけ、ボトルもカステラもないのだ。
「私は何もしていませんから」
「そんなことないよ。一緒に居てくれるだけで、私はとっても心強いよ」
「その御気持ちだけで十分です」
 心は満たされても、お腹は満たされない。真結は自分のカステラを半分にしようとしたが失敗した。気にせずに、大きい方を雅に差し出した。
「雅の分」
「臣下として団長の分を貰うことはできません」
「それなら俺の分をどうぞ」カムイシトは言った。「柊木も大切な団員の一人だ。もし倒れたら心配するからな。それと勘違いするな。柊木は配給員として皆の役に立っている。俺たちが仕事に集中できるのは、柊木の功績だ」
「カムイシトの言う通りだよ。遠慮しないで」
「……それでは頂きます」雅は真結から受け取った。
 嘉兵衛からの報告を待つ間、カステラを冷えた緑茶で流しつつ他愛ない会話をする真結たち。穏やかな時間が流れていたが、いつまでも続かなかった。敵はこちらの事情を一切考慮しない。
「後方三七度上方二一度より接近中の群体を確認。概算で一万越え」ジャーが報告した。
「高速洞路――」
 言い終わる前に真結の耳に装着している通信機から声が発せられる。「嘉兵衛より団長へ。高速洞路はしばらく使わないでくれ。簡易検査をした結果、次に使ったら壊れる可能性がある」
 敵が接近中であることを知らないため、嘉兵衛の口調は平時と変わらないものだった。仕方ないとはいえ、それは真結を僅かに苛立たせた。
「敵が接近中だけど」言いつつ、通信をスピーカーモードにした。皆と情報を共有するためだ。
「急いで部品交換をするから時間を稼いでくれ。十…五分ぐらい」
「お願いね」通信を切った。「戦闘警報発令。最大速力。戦闘用意」
 破天荒丸は速度を上げつつ、各所から砲塔が顔を出した。能拡機隊と戦闘機隊が順次発艦する。
 真結はモニターを注視する。今度も何か利用できそうな何かを探すのだが、今回は見つからなかった。肩を落としている暇はなかった。ないならないなりに知恵を絞るだけだ。
 理想は、現在の距離を保つことだが、振り切れないのはわかっているので、十五分持たずに追い付かれる。かといって、直接戦闘はできるだけ避けたい。弾薬の損耗は生存率の低下に繋がるし、安全に高速洞路に入るためにも距離は維持しておきたい。
「機雷をばら撒いて」
「了解」ジャーはすぐにボタンを押した。
破天荒丸の後部爆弾倉が開き、無数の機雷が宇宙に放出される。これは高速洞路内では使えないので、使っても惜しくない。
 宇宙害獣は機雷原を大きく迂回する。
 真結はその光景に心が動くことがなかった。人類と害獣は何度も戦ったので、それがどういう物なのか学習していたのだろう。猫や犬だって学習するのだから、害獣が学習しない理由はない。敵の動きは想定の範囲内だ。
「手筈通りお願い」
「戦闘隊長より赤備へ。手筈通りにしてくれ」
 カムイシトは佳代に命じた。
 赤備は大盾の内側に装着してある、小型拳銃に似た赤外線誘導装置を取り、宇宙害獣に向けて照射した。ばら撒いた機雷は、レーザー誘導式だ。無数の機雷が動き出し、導かれながら、宇宙害獣に向かって行く。機雷が害獣と接触し、次々と爆発する。一個一個は小さな規模であるが、それらが連続して起こると、見ようによっては、連続して上がった花火のようである。爆炎の中から次々と姿を現す兵隊蝿。大きな火傷を負った個体も居るが、まるで痛みを感じていないかのように追いかける。
 真結はモニターを注視する。敵の数が大幅に減ったわけではないが、下拵えをすることには成功した。
「煙幕弾を発射して」
 ミサイル発射管から煙幕弾が次々と発射されていく。敵の手前で爆発し、宇宙というカンバスに真っ白な絵の具で塗りたくったような煙が広がる。学者たちが言うように、目が異常に発達しているのか、それとも目以外が異常に発達しているのか不明だが、全身火傷を負っているような状態で、目隠しをされたら破天荒丸(目標)を見失ってもおかしくないだろう。これで時間を稼げるのを期待した。
 この作戦は成功した。真っ直ぐ追いかけていた害獣たちは、白煙の中を緩やかに曲がっていった。
「敵の動きに会わせて煙幕弾を撃って」
 ジャーは命令に従ってミサイルを発射した。白煙の中を進み、明後日の方に向かっていた兵隊蝿たちだったが、いきなり方向転換し白煙を突き破って破天荒丸に向かって行く。
 戦闘中はできるだけ感情を表に出さないように気を付けている真結であったが、驚きの声が漏れた。こんなにも早く作戦が無効にされるとは思わなかった。
「照明弾を撃って」元々は、煙幕弾が通用しなかった場合に備えて用意していたものだ。
 発射された照明弾は、群体の手前で炸裂し、眩い球体白光が咲き誇った。人間だったら、あまりの光量に失明してもおかしくない。真結たちが知る、普通の動物だって、いきなり大きな音が鳴ったら驚くものだ。その理屈から害獣が面食らうのを期待した。
 だが、群体は微動することなく破天荒丸を追いかける。
考えた手がまるで通じないことに思わず歯ぎしりした真結。「迎撃用意。射程に入ったら攻撃して」
破天荒丸と戦闘隊は、突出してきた敵を迎撃した。
 黙ってモニターを注視している真結は、内心で焦っていた。破天荒丸の弾薬の補充率は八十%以上であり、今すぐなくなるわけではないが、戦闘隊はそういうわけにはいかない。弾薬が底を付いたら補充のために帰艦しないといけない。その分、攻撃が手薄になる。かといって、部隊を分けて運用できるだけの余裕もない。
 真結の通信機が鳴り、一番聞きたかった言葉が発せられる。「嘉兵衛より団長へ。部品交換を終わらせた。いつでも大丈夫だ」
「戦闘隊に帰艦命令を出して。弾薬の出し惜しみはなし。高速洞路にいつでも入れるように準備開始」団長席の肘掛けに設置してある受話器を取って、ボタンの一つを押した。「団長より格納庫へ。緊急着艦の用意をして」
 カムイシトとジャーとソライヤーはそれぞれの仕事に集中する。
 破天荒丸が敵を攻撃しながら、格納庫の搬入口が開いた。まずは能拡機隊が着艦し、次に能拡機が手伝いながら、戦闘機隊が着艦した。ゆっくりと搬入口が閉まった。
「全戦闘隊帰艦完了しました」
「高速洞路に入った」
「わかりました」
 破天荒丸の前に黄昏色の洞が現れ、現在の速度のまま侵入した。
「敵影は?」入洞してすぐに真結は訊いた。
「周囲に敵影は確認されません」
 ジャーの報告を聞いて、真結は息を吐きながら肩の力を抜き、背凭れに全身を預けた。何とか逃げ切ることに成功した。


 会議室には、真結と雅と佳代のいつもの三人に加えて、艦橋のメンバーが勢揃いしていた。現在、破天荒丸は停船中だ。団員たちの休息とこの会議を開くためだ。嘉兵衛が分析をして、カムイシトとジャーは、軍人の立場から意見を言ってもらうためだ。ソライヤーには、休憩していいと言ったのだが、取材のために参加させて欲しいと願い出たので、居てもらっている。それぞれの手には、清涼飲料水の入ったボトルと、大判焼きがある。真結が雅に頼んで用意してもらったおやつだ。
立体映像ディスプレイには、戦闘記録が映し出されていた。
「焼夷弾を使用した後に、煙幕弾を使用した結果、害獣の進路はずれた」モニターの前に立つ嘉兵衛が喋る。「先に言っておくが、害獣に関してはわからないことが多いから、憶測になってしまうのは了承してもらいたい。分析の結果、害獣が備える何らかの器官が傷ついたために、起こった行動と思われる。だが、皆も知っているように、害獣はすぐに正確に破天荒丸を追いかけて来た。ここから考えられるのは、害獣の自然治癒力は僕たちの想像を超えて優れている」
 景気の良い話じゃない。と真結は愚痴を零したくなったが堪えた。ただでさえ、良い話がないのだから、安易に愚痴を吐いてしまったら、団の士気を下げてしまう恐れがある。
「僕たちは宇宙害獣のことを、凶暴な獣ぐらいに捉えていたが、この認識を改める必要があると考える。今回の件を含め、改めて分析すると、害獣は生物としては非常に優れている。完璧と言っても過言ではないかもしれない。過酷な宇宙で行動できる強靭な肉体を持ち、各種の化学薬品も通用しない。そして高い自然治癒力を持つ。種として見た場合、僕たち人間よりもずっと優れている生物だ。数多の冒険団が、害獣を超えられなかったのは必然と言える。正直、獣の集団と侮っていたところがある」
 思い当たる節が全員にあったため、誰も反論しなかった。
「以上の分析を元に、有効な手立てを準備するために、皆の意見を聞かせて」真結は言った。
 今の調子で戦闘を繰り返すと、目的地に到着する前に、材料が底を付いて、弾薬を補充できなくなる計算なのだ。そうなると、進むも地獄。引くも地獄状態になる。そのため、抜本的な解決方法を模索しないといけない。
「やはり、戦わないのが最善手でしょう」カムイシトが口を開いた。「ブースターを製造しては如何でしょうか?理屈の上では速度を上げれば振り切れます」
「……他に意見はない?」真結は彼の意見を胸に留めつつ他の顔を見回した。ジャーが小さく手を挙げた。
「戦わない。という前提には賛成しますが、哨戒長の立場から言わせてもらうと、ブースターだけでは不十分だと考えます」
 真結は黙って先を促した。
「現在、我々は比較的小規模群体と戦闘しています。だからこそ、単艦戦力でもここまで到達できたと考えます。もし大規模群体と遭遇した場合、逃げる以前の問題になるのではないでしょうか」
「つまり、破天荒丸の火力も増設した方がいいということ?」真結は訊き返した。
「すみません。言葉が悪かったです。そうではなく、小規模群体が四方八方からやって来た場合です」
「確かに……」
 それも想定しなくてはならない状況の一つだ。四方八方から敵がやってきたら、破天荒丸の火力だけでは対処しきれない。また、逃げ道を防がれては、ブースターを取り付けても意味がない。現在は運良く小規模群体とだけ戦闘をしているに過ぎない。
「では、そういう状況に対して、君はどうすべきだと考える?」嘉兵衛が訊いた。
「戦闘機隊による索敵範囲外の偵察を提案します。早期発見は選択の幅を増やし、生存率の向上にも繋がります。彼らの足なら、逃げ切ることも可能です」
「戦闘隊長の立場からでは、全面的に賛成できんな」カムイシトは眉間に皺を寄せた。「十分な人員がいればそれも可能だが、現状ではパイロットたちの負担が大きくなり過ぎる」
「整備士たちもな」嘉兵衛は付け加えた。「疲労で集中力が低下している状態でメンテナンスをしたら、普段ならしないようなミスを犯す可能性が高まる。僕たちは暗闇の中を進んでいる。一歩先で何が起こるのかわからない以上、団としては限りなく万全の状態に近い方が好ましい」
 ここで話が切れた。真結は発言者が現れるのを待ったが、誰も口を開きそうにないので、会議のまとめに入ろうとした。
「あの」ソライヤーが遠慮がちに小さく手を挙げた。誰も彼女が発言するとは思っていなかったらしく、全員がソライヤーに顔を向けた。
「どうぞ」真結は先を促した。彼女が何を言うのか非常に興味がそそられた。
「テーザー弾を使用するのはどうでしょうか?」
 真結たちの頭の上に疑問符が浮かんだ。ただ一人、嘉兵衛だけは、あぁ。と訳知り顔で納得した。
「よく知ってたな」嘉兵衛は感心した。
「小説を書くために色々勉強しましたから」
「小説家ってのは侮れないな」
「それって何なの?有名なの?」真結が訊いた。
 嘉兵衛が説明する。「テーザー銃は知っているだろ?」
「スタンガンを銃にしたような武器よね」
「それを弾頭化したのがテーザー弾だ。有名かどうかで言えば、知ろうとしなければ、知られることのない武器だ。これは警察が開発した低致死性広域制圧武器だ」
「警察の武器が害獣に利くの?」
「人間相手であるが、威力は折り紙付きだ。とある事件で初めて実戦投入された際には、犯人グループと人質たちを含めて、五人の死亡者、十八人の重軽傷者を出した。ただ、この事件の後に、激怒した人質側の遺族たちや障害が残った家族たちが裁判を起こして勝訴。それ以来、警察は二度と同じ過ちを犯さないように、テーザー弾の製造を止め、在庫は処分している。警察にとっては汚点になる武器だな」
「それがあれば、問題解決に繋がるの?」
「と言うより、極力戦闘は避ける。という目的を果たすのに合致している武器と思われる。高熱砲やミサイルは撃って終わりだが、これは違う。害獣も生物である以上、電気パルスは利くだろう。体が麻痺している内に、逃げることができると思う。問題があるとすれば、宇宙戦闘用に少し手を加える必要がある。そんなに時間は掛からない」
「皆の意見を聞かせて」
「選択肢は多いに越したことはないので、良いと思います」カムイシトは賛同した。
「同意見です」ジャーは頷いた。
 真結は背後に控える二人に顔を向けた。佳代と雅は頷いて賛成を示したので、まとめに入ることにした。
「どの意見も素晴らしい物だった。ブースターは、製造に取り付けを考えると、今すぐ解決できる問題ではないが、進めていく。偵察は、難しいようなので、パイロットたちと直接話し合いをしてから判断する。テーザー弾に関しては、これは今すぐ解決できるから製造を始める」真結は一人一人の顔を見た。最後に何か言いたいことがある人がいないか探したが、誰もいなかった。「以上で会議は終了する。皆、お疲れ様。当直の人以外はゆっくり休んでね」


「左舷方向五三度上方九十度より害獣接近。概算で1万を超えています」
 ジャーの報告を聞き、真結はすかさず戦闘警報を発令した。カムイシトは戦闘隊に出撃を命じた。
「テーザー弾用意。発射のタイミングは任せるから」
 あの会議の後、嘉兵衛はすぐに仕事に取り掛かってくれた。技術的なことは真結にはさっぱりわからなかったが、技術的難度は低かったので、すぐに生産を始めることができた。
「了解」
 ジャーはレーダー画面を見つめ、最大の被害を出せる距離で発射ボタンを押した。
ミサイル発射管からテーザー弾頭を搭載したミサイルが撃ち出され、群体に向かって直進していく。敵の手前で、弾頭が上下に外れた。投げ矢のような小さな電極がびっしりと並んでいる。それらが発射台から広範囲に亘って撃ち出された。高速で飛翔する電極は広がりH状の形になって兵隊蝿に当たると、電極の間に電気パルスを流した。害獣は数秒だけ痙攣した。
 真結はモニターを注視して効果を確認する。群体の動きが明らかに乱れている。ここは宇宙であり、自然に止まることはない。目に見えて速度が落ちたということは、慣性の法則で動き続けているだけだ。つまり害獣は神経麻痺を起こしているということになる。
 真結は声を出して喜びたいのを堪えた。まだ振り切ったわけではない。電極が当たらなかった。もしくは、当たっても効果はいまいちだったらしい個体たちが追いかけてくる。それでも、ようやく害獣に対する有効的な手段が見つかった喜びから、無意識の内に口角が緩んだ。
「後方三六度上方七六度より群体接近。概算で五千未満」
 真結は再びテーザー弾の使用を命じた。ミサイル発射管からテーザー弾が撃ち出された。新たに現れた兵隊蝿に対しても効果は抜群であり、群体の動きが乱れた。
 だが、完全な殺傷兵器というわけではなく、一時的に麻痺しているだけなので時間を置けば回復する。最初の群体は少しふらふらしながらも、破天荒丸を追いかける。
 十分ではないが、実戦データは取れたので、真結は高速洞路に入る命令を出そうと口を開くが、先にジャーが言葉を発する。
「破天荒丸直上に空間振を確認」
 艦橋に緊張が走った。それは空間跳躍が起こる際に生じる現象であり、害獣たちはこれを利用して広大な宇宙を移動している。そして、現在確認されている害獣の中で、空間跳躍を行えるのは一種だけだ。
「飛天魚(ひてんぎょ)」呟く真結の頬を汗が伝った。
 宇宙空間に黒い巨体が突如として現れた。ぱっと見は平目のようであり、その大きさは破天荒丸を優に超えている。恐らく下と思われる中心には、円形の口が備わっており、巨大な氷柱と見間違うような黄色い歯がずらりと並んでいる。
「兵隊蝿が離陸しました。概算で三万越え」
 黒い皮膚のように見えていたのは、くっ付いていた兵隊蝿である。ここから、飛天魚は害獣の中でも、兵隊蝿と共生関係にある運送屋と考えられている。兵隊蝿が全て離れると、飛天魚本来の、麦色の皮膚があらわになった。
「入洞準備」真結は内心では焦りながらも、冷静に命じた。
 三万越えの群体も脅威であるが、それ以上に飛天魚が厄介だった。柔らかそうな見た目と違って、飛天魚は頑丈な皮膚であり、破天荒丸の火力だけで挑むには火力不足である。それに加えて、力も凄まじく、もし取り付かれたら、引き離させないし逃げられない。
「待って欲しい」嘉兵衛が言った。「今後のために飛天魚でもデータを取りたい」
 真結は頭の中ですぐさま損得勘定を計算した。「弾頭用意。戦闘隊を帰艦させて。入洞準備も進めて」
 各々が命じられた仕事をこなす。後方から迫って来る二つの群体と直上に向かって、テーザー弾が次々と発射された。大多数の兵隊蝿は電気パルスが体内を駆け巡り、神経麻痺を起こした。運良く当たらなかった少数の個体は、破天荒丸の火器で対応する。無数の電極が飛天魚に当たったが、目に見えての速度の変化はなった。
「十分ではないがデータは取れた」嘉兵衛は僅かに不服そうだった。
「帰艦状況は?」
「完了しています」カムイシトは答えた。
「高速洞路に入って」
 破天荒丸は正面に生成された黄昏色の空間に逃げ込んだ。


 艦橋に居る全員が、正面モニターに映る一点を見つめていた。それは暗い宇宙の中にあって、一際輝いている光。その輝きの前では、人間大の宝石だろうと価値は無いに等しい。何故ならそれは、太陽が放つ光だからだ。久しぶりの太陽は、ずっと見ていたくなるほど力強く美しい。
 ようやく……。
 まだ到着したわけではなく、拡大映像で見えているだけなのだが、ここまで辿り着いたことに、真結は感慨深かった。ここまで様々な苦労があっただけに、その思いも自然と強くなる。
「気を抜かないで」太陽の光に見とれていた団員たちに声をかけた。いつどこから宇宙害獣が襲って来るのかわからない。しかし強い口調で注意できなかった。真結も皆と同じ気持ちだからだ。
「周囲を警戒しつつ増速して」真結は辛抱しきれずに命じた。
「はい」
 破天荒丸は全ての推進器から火を噴いた。徐々に大きくなる光。
「団長」カムイシトが顔を向けた。「戦闘隊が出撃を求めていますが」
「敵が現れたの?」
「周囲に敵影は確認されませんが……」困惑気味に答えたジャー。
「そうではなく、先行して周囲の安全を確保したいそうです……」カムイシトは言い辛そうに口籠ったが、意を決して言う。「と言うのは建前で、誰よりも先に新星系に行きたい。というのが本音でしょう」
「ずるい」ソライヤーが不満を口にした。「私だって速く行きたいのに」
 団員たちが興奮していることに真結は微笑を浮かべた。「それならこう伝えて。抜け駆けは禁止。皆で仲良く行こう」
「わかりました」カムイシトは通信機を通して部下を叱った。
「嘉兵衛。新星系に入ったら、艦内スピーカーで皆に教えて」
「わかった」
 真結は自身の興奮を抑えて、団長席に備えてあるモニターに目を落とした。皆が興奮しているところに水を差しにやって来るお邪魔虫が来ないことを祈りつつ警戒した。
 幸運に巡れたおかげで、敵はやってこなかった。そして破天荒丸は新星系へと入った。
「皆に告げる」嘉兵衛は艦内スピーカーをオンにした。「日昇(にっしょう)三六年。帝国標準時十三時五十六分四十三秒を持って、破天荒丸は新星系へと入った」
 その瞬間、ソライヤーとジャーとカムイシトは勢いよく立ち上がって、喜びの声を挙げた。
「やったな団長」嘉兵衛も立ち上がり、満面の笑みを浮かべる。
「おめでとうございます」雅もニコニコ顔で祝辞を述べた。
「おめでとうございます。団長」通信機越しであったが、佳代の声にも興奮と喜びの色が混じっていた。その背後では、パイロットや整備士たちの喜びの声が上がっていた。皆の声で破天荒丸が揺れそうな興奮ぶりだ。
 団員たちが仕事を忘れて、喜びに浸かっているが、今この時ばかりは、心のままにさせておいた。
 真結は艦内スピーカーを手に取ってオンにした。
「皆の協力があったお陰で、私たちはここに来ることができた。本当にありがとう」
 スピーカーを静かに元の位置に戻した。真結もまた喜びと興奮に包まれているが、それ以上に強いのは、この百十四年間、誰も成し遂げなかったことを成し遂げた充足感と達成感だった。
 破天荒丸は高速洞路を使わずに、通常航法だけで星系内を移動した。未だ誰の手も加わっていないだろう星系の星図作成の調査もあるが、自分たち以外に誰もいないはずなので、独り占めにして楽しみたかった。
調査の結果、この星系は太陽を中心に七つの惑星から構成されている。
そして、破天荒丸の目的地である新星系第三惑星の軌道に入った。
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