妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

文字の大きさ
29 / 103

皇太子殿下から昼食に誘われました

しおりを挟む
クリス様からサロンに呼び出されたのが昨日。今日もまたクリス様から昼食を一緒にと誘われました。今度は友達を連れて来てもいいと言われたのでティナ様とジェシー様について来ていただきます。

「まさか皇太子殿下からお誘いを受けるなんて…さすがエレナ様ですわね」

「いえ、そういうのじゃないです」

「じゃあどういうのですかぁ?」

「…珍獣を見て可愛く思うみたいな?」

「ち、珍獣…!」

「エレナ様はぁ、たまーに面白いことを仰りますねぇ?」

「だってそれ以外に声をかけられる理由がありませんから…」

「エレナ様のそういうところがぁ、皇太子殿下には好ましいのかもぉ」

「わかりますわ。エレナ様ったら本当にそういう可愛らしいところがあるから」

「褒めても何も出ませんよ?」

「いやね。本当に可愛らしい素敵な方だと思っているんですのよ?」

「もう、ティナ様ったら」

「私もエレナ様のそういうところ大好きですぅ」

「ジェシー様まで!」

なんやかやとお話しながらサロンを目指すと、クリス様は先に来て待っていてくれました。

「やあ、エレナ。オーギュスティナ嬢とジェシカ嬢もご機嫌よう」

「クリス様、ご機嫌よう。お招きいただきありがとうございます」

「皇太子殿下におかれましてはご機嫌麗しく」

「ご機嫌よう、皇太子殿下。よろしくお願いしますぅ」

「ああ。ここはリュシアン学園であり僕達の立場は今だけは平等だ。あまり畏る必要はないよ。さ、ソファーにどうぞ」

私達三人がクリス様に向き合うようにソファーに座ると、クリス様は昼食を使用人に用意させます。

「今日は僕の奢りだよ。好きなように食べて欲しい」

「わぁ。すごく豪勢ですねぇ。しがない伯爵家の三女にはキラキラして見えますぅ」

「美味しそうですけれど、奢っていただいて良いのですか?」

「いいのいいの。僕がそうしたいだけだから」

「では早速いただきますわ」

ティナ様がお料理に手を伸ばす。美味しそうに食べるティナ様とクリス様を見て、ジェシー様と私も手を伸ばす。

「美味しいですわ。さすが皇太子殿下がご用意してくださっただけはありますわね」

「クリス様、これ本当に美味しいです!ありがとうございます!」

「んー。美味しいですぅ…幸せぇ。エレナ様、お誘いありがとうございますぅ。皇太子殿下、こんなに美味しい食事本当にありがとうございますぅ!しかも私とティナ様の分まで用意してくださって、感謝だけじゃ足りないですぅ」

「あはは。そこまで喜ばれると嬉しいな」

「でも、お友達とお昼をご一緒しなくて大丈夫ですか?」

「んー。僕、側近候補はたくさんいるんだけど何の含みもない〝お友達〟っていないんだよね」

「え」

皇太子殿下はため息を一つ。

「皇太子として周りの人間には気を付けなきゃいけないだろう。優秀で、スキャンダルのない、家柄も悪くない、王家に尽くせる、僕に尽くせる人間を厳選して側に置いているつもり。でもそうなるとさぁ。プライベートでの付き合いとなるとねぇ。だからさ、エレナがプライベートでの僕の癒しになってよ」

最後に茶化してウィンクを投げてくるクリス様ですが、それってすごく寂しいのではないでしょうか。

「…クリス様、私でよろしければいつでも頼ってくださいね。聞くだけしかできないかもしれないですが、それでもよろしければ」

「エレナ様、そういうことを仰ると付け入れられますわよ」

「皇太子殿下ぁ。私の大切なお友達に粉かけないでくださいませぇ」

「これは手厳しいな。でも、僕は本気だよ?」

「それならぁ、何があってもエレナ様を守ってくださいねぇ?」

「もちろんだとも」

「私のお友達を泣かせたら、私皇太子殿下相手でも大人しくは出来ませんわよ?」

「心に刻んでおくよ」

…一体なんのお話でしょうか?
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

契約結婚のはずが、無骨な公爵様に甘やかされすぎています 

さら
恋愛
――契約結婚のはずが、無骨な公爵様に甘やかされすぎています。 侯爵家から追放され、居場所をなくした令嬢エリナに突きつけられたのは「契約結婚」という逃げ場だった。 お相手は国境を守る無骨な英雄、公爵レオンハルト。 形式だけの結婚のはずが、彼は不器用なほど誠実で、どこまでもエリナを大切にしてくれる。 やがて二人は戦場へ赴き、国を揺るがす陰謀と政争に巻き込まれていく。 剣と血の中で、そして言葉の刃が飛び交う王宮で―― 互いに背を預け合い、守り、支え、愛を育んでいく二人。 「俺はお前を愛している」 「私もです、閣下。死が二人を分かつその時まで」 契約から始まった関係は、やがて国を救う真実の愛へ。 ――公爵に甘やかされすぎて、幸せすぎる新婚生活の物語。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

処理中です...