60 / 68
間諜の報告
しおりを挟む
私は見てきたものすべてを国王陛下に報告する。
「…以上が私が見てきたものです」
「ふむ、少年少女に青年、そしてその主人…」
「なにか目的があり動いているのは確実。ですがそれを探ることはできませんでした」
「そうか…いや、ご苦労だった」
「はい」
国王陛下はヒゲを撫でて呟く。
「…ふむ。大陸全土を混乱に陥れてまで、一体なにがしたいやら」
「これは我が国だけで対処できる問題とは思えません…」
「お主の言う通りだな。かと言って派手な動きを見せれば、その者共が勘付くだろう。困ったものだ」
「…」
「…秘密裏に大陸内の各国に協力を要請し、その屋敷を包囲するほかあるまい。相手はマインドコントロールが使えるのだ。過剰戦力を投入するくらいでちょうどいいだろう」
国王陛下の瞳には憂いが見える。
「だが…マインドコントロール…まさか、魔族ではあるまいな」
「国王陛下、それはさすがにないかと」
魔族は、獣人と共に姿を消した。
獣人がその身を捧げてまで滅ぼしたのだ。
…とはいえ。
「獣人の子孫であるシャルロット様が、獣人の先祖返りとなったことと関連付けて考えていらっしゃいますか?」
「ああ、滅びたはずの獣人の血がこうして蘇ったのだ。魔族も同じように、なんらかの形で血を残していたのかもしれない」
「…なるほど」
であるならば、まずい。
魔族は強力な力を持つという。
あの屋敷にいた者だけだというのなら、少数しか残っていないだろうけれど…もしかしたらまだまだいる可能性だってあるのだ。
「しかし、今我が国にはシャルロットがいる。獣人の先祖返りとなったあの子なら…万が一魔族の復活があったとしても、なんとかしてくれるやもしれん」
「ええ、シャルロット様ならばきっと」
「だがあの子は、少し人のために無茶をしすぎる。世界のために自らの命を捧げてしまうやもしれん」
「世界とシャルロット様を天秤にかけることはできません」
「わかっておる。いざとなれば非情な判断をするのは国王として必要な仕事だ。だがなぁ…」
シャルロット様は、健気で優しい。
人々から愛されるお方だ。
だからこそ、最悪な事態は避けたいと国王陛下が願うのも無理はない。
それでも。
「どうかいざとなったときのためにお覚悟を」
「わかっておる…」
難しい表情の国王陛下。
この方の優しさは美徳だが、同時に弱みでもある。
いざとなったら、私が背中を押さねばならないかもしれない。
シャルロット様は国にとって必要な方だが、いざとなったら代わりは探せるだろう。
世界のための尊い犠牲とすることに、躊躇ってはいけない。
「…以上が私が見てきたものです」
「ふむ、少年少女に青年、そしてその主人…」
「なにか目的があり動いているのは確実。ですがそれを探ることはできませんでした」
「そうか…いや、ご苦労だった」
「はい」
国王陛下はヒゲを撫でて呟く。
「…ふむ。大陸全土を混乱に陥れてまで、一体なにがしたいやら」
「これは我が国だけで対処できる問題とは思えません…」
「お主の言う通りだな。かと言って派手な動きを見せれば、その者共が勘付くだろう。困ったものだ」
「…」
「…秘密裏に大陸内の各国に協力を要請し、その屋敷を包囲するほかあるまい。相手はマインドコントロールが使えるのだ。過剰戦力を投入するくらいでちょうどいいだろう」
国王陛下の瞳には憂いが見える。
「だが…マインドコントロール…まさか、魔族ではあるまいな」
「国王陛下、それはさすがにないかと」
魔族は、獣人と共に姿を消した。
獣人がその身を捧げてまで滅ぼしたのだ。
…とはいえ。
「獣人の子孫であるシャルロット様が、獣人の先祖返りとなったことと関連付けて考えていらっしゃいますか?」
「ああ、滅びたはずの獣人の血がこうして蘇ったのだ。魔族も同じように、なんらかの形で血を残していたのかもしれない」
「…なるほど」
であるならば、まずい。
魔族は強力な力を持つという。
あの屋敷にいた者だけだというのなら、少数しか残っていないだろうけれど…もしかしたらまだまだいる可能性だってあるのだ。
「しかし、今我が国にはシャルロットがいる。獣人の先祖返りとなったあの子なら…万が一魔族の復活があったとしても、なんとかしてくれるやもしれん」
「ええ、シャルロット様ならばきっと」
「だがあの子は、少し人のために無茶をしすぎる。世界のために自らの命を捧げてしまうやもしれん」
「世界とシャルロット様を天秤にかけることはできません」
「わかっておる。いざとなれば非情な判断をするのは国王として必要な仕事だ。だがなぁ…」
シャルロット様は、健気で優しい。
人々から愛されるお方だ。
だからこそ、最悪な事態は避けたいと国王陛下が願うのも無理はない。
それでも。
「どうかいざとなったときのためにお覚悟を」
「わかっておる…」
難しい表情の国王陛下。
この方の優しさは美徳だが、同時に弱みでもある。
いざとなったら、私が背中を押さねばならないかもしれない。
シャルロット様は国にとって必要な方だが、いざとなったら代わりは探せるだろう。
世界のための尊い犠牲とすることに、躊躇ってはいけない。
104
あなたにおすすめの小説
捨てられた騎士団長と相思相愛です
京月
恋愛
3年前、当時帝国騎士団で最強の呼び声が上がっていた「帝国の美剣」ことマクトリーラ伯爵家令息サラド・マクトリーラ様に私ルルロ侯爵令嬢ミルネ・ルルロは恋をした。しかし、サラド様には婚約者がおり、私の恋は叶うことは無いと知る。ある日、とある戦場でサラド様は全身を火傷する大怪我を負ってしまった。命に別状はないもののその火傷が残る顔を見て誰もが彼を割け、婚約者は彼を化け物と呼んで人里離れた山で療養と言う名の隔離、そのまま婚約を破棄した。そのチャンスを私は逃さなかった。「サラド様!私と婚約しましょう!!火傷?心配いりません!私回復魔法の博士号を取得してますから!!」
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに対して、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載しております。
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
完結 女性に興味が無い侯爵様、私は自由に生きます
ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ!
そんな私に好都合な相手が。
女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく付いてきました。
【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!
たまこ
恋愛
エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。
だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる