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人族の第三王子、獣人族の姫君を娶る
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「しゃー!」
「ふむ。我が妻は緊張で猫化したのか?」
「しゃー!」
(特別意訳)人族なんかに見下された怒りで猫化したんじゃボケェ!
「…ふむ。国同士の繋がりのための政略結婚だが。このように愛らしい妻を得られた俺は、幸せ者だな」
ぼふん、と音が鳴り獣人族のマヌルネコの姫君、その名もマヌルは人の姿に戻った。
「そ、そんなこと言われても…だ、騙されないんだからね!?」
「おお。戻ったな。人の姿もまた美しい。耳は猫耳なんだな。尻尾も美しいな、可愛いぞ」
「かっかわっ!?」
マヌルは人族と獣人族の国の友好のため人族の国の第三王子に嫁ぐことになったのだが、人族は獣人族を野蛮な獣と見下す。それはこの国でも同じで、嫁いできて早々に馬鹿にされて頭に来ていたマヌルだったが、どうにも結婚相手である第三王子…レーニエは様子が違う。
「俺のことはレーニエと呼んでくれ。マヌルと呼んでもいいか?」
「す、好きにしたら?どうせ貴方も、私達獣人族を馬鹿にしてるんでしょ?」
「…馬鹿に?とんでもない。獣人族は種族にもよるが、人族をはるかに上回る身体能力を持つし、何より見た目が美しい。特にネコ科は好きだ。マヌルが俺のお嫁さんで本当に良かった」
「…そ、そう?まあ、私も結構運動神経はいいのよ。人化状態でも空中で三回転とかできるし。あと、ネコ科の良さ、わかる?」
「自由奔放な性格、それでいてたまに甘えてくるギャップ。そして何より独特なあの可愛らしさ。たまらない」
マヌルはレーニエの言葉に目を輝かせた。
「そうよねそうよね!性格は完全に個体差があるけど、見た目の可愛らしさはどの子も優劣つけ難いわ!私の弟妹達もそれはもう可愛くて!」
「ぜひ話を聞かせてほしい」
「アルバム持ってきてるわ!聞くより見る!?」
「見たいし聞きたいな」
「あのね、このアルバムが弟妹達が生まれた時のやつで、ほら、生まれたばかりの頃よ!可愛くない?」
キラキラの目をこちらに向けて精一杯喋るマヌルに、レーニエは微笑んだ。
「ああ。とても可愛い」
「でしょう?あと、これが妹が初めて獣化した時の写真!」
「ああ、マヌルにそっくりだが…マヌルが猫化した姿の方が俺は好きだな」
「そ、そうかしら?妹はマヌルネコの中でも美猫なのだけど…ま、まあ、旦那様が良いならいいのだわ」
「…旦那様」
その言葉にじーんとくるレーニエ。というのも、マヌルがこの国に嫁ぐことになった時、誰の嫁にするかという話になってすぐ立候補したのが獣人族に偏見のない、ネコ科ラブなレーニエだったからである。
「あの、旦那様…レーニエ様は夕食は肉派かしら?魚派かしら?」
「この国では農業が盛んで、肉料理が中心だな。自然と俺も肉食派になった」
「そ、そう。私も肉食派よ。気があうわね?」
そう言いながらチラチラこちらを伺うマヌルに、レーニエはキュン死するかと思った。
「ともかく。その…獣人族への偏見の多い人族の中で、レーニエ様は変わり者だとわかりました。レーニエ様とは末永く仲良く出来れば嬉しいです」
「それは良かった。俺もマヌルと末永く幸せに暮らしたい」
「それと…」
「うん?」
「嫁いで早々に沢山の人から馬鹿にされて、挫けてしまいそうだったのだけれど…ありがとう。レーニエ様のお陰で、元気が出たわ」
マヌルの言葉に、レーニエは心配そうな表情になる。
「マヌル…それは良かったが、沢山の人から馬鹿にされたとは?」
「レーニエ様だって、人族の獣人族への偏見は知っているでしょう?私が嫁いできてすぐ、陰口を聞こえよがしに言われたの」
「人族の国と獣人族の国の友好のための結婚だと、みんな分かっているはずなのだが…すまない、俺の認識が甘かったようだ。然るべき処置を取る」
「え、そんな、良いのだわ!私、少しぐらいなら我慢できるし…」
「俺の愛する妻を貶されて、俺が黙って居られると思うのか?」
愛する、と言われて顔が真っ赤になるマヌル。
「え、え、あ、わ、私だってその、レーニエ様のことは結構好きなのだわ!ただ、その、や、やり過ぎてはダメなのだわ!」
「大丈夫だ。あくまでも然るべき処置を取る。それより、嫁いできて早々嫌な思いをさせたな。何かお詫びをしなければ」
「お、お詫びなんていいのだわ!そ、そのかわり…」
「うん?」
「ま、毎日一緒に居たいのだわ。もちろん、第三王子という立場が重いのは分かっているのだけど、数分間だけでも、出来るだけ…」
マヌルの言葉に、レーニエはきょとんとする。
「何を言っているんだ?マヌルは俺の妻として、第三王子妃として常に俺の側にいるんだぞ」
「え?でも、私は獣人族だから他の人から舐められるんじゃないかしら?」
「そんな奴は俺が叩き潰す」
レーニエの力強い言葉に、マヌルは笑った。
「ふふ、本当に私の旦那様は変わり者なのだわ!これは支え甲斐がありそうね!」
「ああ。俺はよく変わり者だと言われるのでイライラさせることもあるかもしれないが、マヌルのようなしっかりした妻がいれば俺としては心強い」
「任せなさい。私がしっかり導いてあげる!」
こうして二人は、夫婦としてのスタートを切った。数年後にはおしどり夫婦として有名になり、人族の国の獣人族への偏見も大分減ったと言う。
「ふむ。我が妻は緊張で猫化したのか?」
「しゃー!」
(特別意訳)人族なんかに見下された怒りで猫化したんじゃボケェ!
「…ふむ。国同士の繋がりのための政略結婚だが。このように愛らしい妻を得られた俺は、幸せ者だな」
ぼふん、と音が鳴り獣人族のマヌルネコの姫君、その名もマヌルは人の姿に戻った。
「そ、そんなこと言われても…だ、騙されないんだからね!?」
「おお。戻ったな。人の姿もまた美しい。耳は猫耳なんだな。尻尾も美しいな、可愛いぞ」
「かっかわっ!?」
マヌルは人族と獣人族の国の友好のため人族の国の第三王子に嫁ぐことになったのだが、人族は獣人族を野蛮な獣と見下す。それはこの国でも同じで、嫁いできて早々に馬鹿にされて頭に来ていたマヌルだったが、どうにも結婚相手である第三王子…レーニエは様子が違う。
「俺のことはレーニエと呼んでくれ。マヌルと呼んでもいいか?」
「す、好きにしたら?どうせ貴方も、私達獣人族を馬鹿にしてるんでしょ?」
「…馬鹿に?とんでもない。獣人族は種族にもよるが、人族をはるかに上回る身体能力を持つし、何より見た目が美しい。特にネコ科は好きだ。マヌルが俺のお嫁さんで本当に良かった」
「…そ、そう?まあ、私も結構運動神経はいいのよ。人化状態でも空中で三回転とかできるし。あと、ネコ科の良さ、わかる?」
「自由奔放な性格、それでいてたまに甘えてくるギャップ。そして何より独特なあの可愛らしさ。たまらない」
マヌルはレーニエの言葉に目を輝かせた。
「そうよねそうよね!性格は完全に個体差があるけど、見た目の可愛らしさはどの子も優劣つけ難いわ!私の弟妹達もそれはもう可愛くて!」
「ぜひ話を聞かせてほしい」
「アルバム持ってきてるわ!聞くより見る!?」
「見たいし聞きたいな」
「あのね、このアルバムが弟妹達が生まれた時のやつで、ほら、生まれたばかりの頃よ!可愛くない?」
キラキラの目をこちらに向けて精一杯喋るマヌルに、レーニエは微笑んだ。
「ああ。とても可愛い」
「でしょう?あと、これが妹が初めて獣化した時の写真!」
「ああ、マヌルにそっくりだが…マヌルが猫化した姿の方が俺は好きだな」
「そ、そうかしら?妹はマヌルネコの中でも美猫なのだけど…ま、まあ、旦那様が良いならいいのだわ」
「…旦那様」
その言葉にじーんとくるレーニエ。というのも、マヌルがこの国に嫁ぐことになった時、誰の嫁にするかという話になってすぐ立候補したのが獣人族に偏見のない、ネコ科ラブなレーニエだったからである。
「あの、旦那様…レーニエ様は夕食は肉派かしら?魚派かしら?」
「この国では農業が盛んで、肉料理が中心だな。自然と俺も肉食派になった」
「そ、そう。私も肉食派よ。気があうわね?」
そう言いながらチラチラこちらを伺うマヌルに、レーニエはキュン死するかと思った。
「ともかく。その…獣人族への偏見の多い人族の中で、レーニエ様は変わり者だとわかりました。レーニエ様とは末永く仲良く出来れば嬉しいです」
「それは良かった。俺もマヌルと末永く幸せに暮らしたい」
「それと…」
「うん?」
「嫁いで早々に沢山の人から馬鹿にされて、挫けてしまいそうだったのだけれど…ありがとう。レーニエ様のお陰で、元気が出たわ」
マヌルの言葉に、レーニエは心配そうな表情になる。
「マヌル…それは良かったが、沢山の人から馬鹿にされたとは?」
「レーニエ様だって、人族の獣人族への偏見は知っているでしょう?私が嫁いできてすぐ、陰口を聞こえよがしに言われたの」
「人族の国と獣人族の国の友好のための結婚だと、みんな分かっているはずなのだが…すまない、俺の認識が甘かったようだ。然るべき処置を取る」
「え、そんな、良いのだわ!私、少しぐらいなら我慢できるし…」
「俺の愛する妻を貶されて、俺が黙って居られると思うのか?」
愛する、と言われて顔が真っ赤になるマヌル。
「え、え、あ、わ、私だってその、レーニエ様のことは結構好きなのだわ!ただ、その、や、やり過ぎてはダメなのだわ!」
「大丈夫だ。あくまでも然るべき処置を取る。それより、嫁いできて早々嫌な思いをさせたな。何かお詫びをしなければ」
「お、お詫びなんていいのだわ!そ、そのかわり…」
「うん?」
「ま、毎日一緒に居たいのだわ。もちろん、第三王子という立場が重いのは分かっているのだけど、数分間だけでも、出来るだけ…」
マヌルの言葉に、レーニエはきょとんとする。
「何を言っているんだ?マヌルは俺の妻として、第三王子妃として常に俺の側にいるんだぞ」
「え?でも、私は獣人族だから他の人から舐められるんじゃないかしら?」
「そんな奴は俺が叩き潰す」
レーニエの力強い言葉に、マヌルは笑った。
「ふふ、本当に私の旦那様は変わり者なのだわ!これは支え甲斐がありそうね!」
「ああ。俺はよく変わり者だと言われるのでイライラさせることもあるかもしれないが、マヌルのようなしっかりした妻がいれば俺としては心強い」
「任せなさい。私がしっかり導いてあげる!」
こうして二人は、夫婦としてのスタートを切った。数年後にはおしどり夫婦として有名になり、人族の国の獣人族への偏見も大分減ったと言う。
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