ショタジジイ猊下は先祖返りのハーフエルフ〜超年の差婚、強制されました〜

下菊みこと

文字の大きさ
56 / 61

我が子を抱く

しおりを挟む
「イザベルが産気づいた!別室待機している助産師を今すぐ呼べ!」

「はい!」

俺の言葉に、侍従が反応する。俺はベッドの上で呻くイザベルの手をとり握る。

「イザベル、すぐ助産師が来るから大丈夫だぞ」

「う、うう…」

優しく声をかける。苦しそうなイザベルに、何もしてやれないのが歯がゆい。

「ユルリッシュ様っ…」

「大丈夫、大丈夫だ…」

「助産師様をお連れしました!」

「聖妃様、お待たせしました。お手伝いさせていただきますね」

助産師が来て、出産を手伝う。魔法で介助してくれる。しかし、初めての出産にイザベルは苦戦している。なかなか子供が生まれて来ない。

「…ま、まだ生まれないのか」

「出産は一日かかることもあるのですよ、聖王猊下」

「それは知っている!だが、イザベルの体力が…」

「そこで私の出番です」

助産師が魔法でイザベルの体力を少し回復した。イザベルの顔色が良くなる。

「さあ、もうひと頑張りですよ!」

「うううー…」

イザベルも子も心配だ。俺には見守ることしかできない。


















そして、産気づいてから結局丸一日が過ぎた。

「おぎゃー!」

「や、やっと生まれた…」

「イザベル、よくやった!ありがとう、よく頑張ったな!」

「聖妃様、ご立派です。元気な男の子ですよ」

「よ、よかった…」

我が子を抱くイザベル。穏やかな表情になったのを見て、ホッとする。俺はボロボロと涙が止まらない。それでもイザベルと我が子を見つめる。

「ユルリッシュ様。ユルリッシュ様も抱いてあげてください」

「い、いいのか?じゃあ…」

邪魔な涙をハンカチで拭いて、我が子をそっと抱きしめる。まるで壊れ物のような柔らかく幼い我が子を優しく優しく抱える。

「ユルリッシュ様、私達の子は可愛いですね」

「可愛い。本当に可愛い…ありがとう。生まれてきてくれて、本当にありがとう…」

「あうー」

我が子の耳は、俺と同じ。エルフの特徴である長い尖った耳だ。この子もまた、ハーフエルフとして生まれてきたらしい。立て続けにハーフエルフが生まれるなんて、確率が低すぎる。奇跡と言っていい。

そんな奇跡と共に生まれたこの子がとても愛おしい。そして、俺とイザベルならきっとこの子を幸せに出来る。そう信じている。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

『婚約破棄されましたが、孤児院を作ったら国が変わりました』

ふわふわ
恋愛
了解です。 では、アルファポリス掲載向け・最適化済みの内容紹介を書きます。 (本命タイトル①を前提にしていますが、他タイトルにも流用可能です) --- 内容紹介 婚約破棄を告げられたとき、 ノエリアは怒りもしなければ、悲しみもしなかった。 それは政略結婚。 家同士の都合で決まり、家同士の都合で終わる話。 貴族の娘として当然の義務が、一つ消えただけだった。 ――だから、その後の人生は自由に生きることにした。 捨て猫を拾い、 行き倒れの孤児の少女を保護し、 「収容するだけではない」孤児院を作る。 教育を施し、働く力を与え、 やがて孤児たちは領地を支える人材へと育っていく。 しかしその制度は、 貴族社会の“当たり前”を静かに壊していった。 反発、批判、正論という名の圧力。 それでもノエリアは感情を振り回さず、 ただ淡々と線を引き、責任を果たし続ける。 ざまぁは叫ばれない。 断罪も復讐もない。 あるのは、 「選ばれなかった令嬢」が選び続けた生き方と、 彼女がいなくても回り続ける世界。 これは、 恋愛よりも生き方を選んだ一人の令嬢が、 静かに国を変えていく物語。 --- 併せておすすめタグ(参考) 婚約破棄 女主人公 貴族令嬢 孤児院 内政 知的ヒロイン スローざまぁ 日常系 猫

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

「ときめかない」ものなど捨てておしまいなさい

megane-san
ファンタジー
私、クリスティーナは、前世で国税調査官として残業漬けの日々を送っていましたが、どうやら過労でぶっ倒れそのまま今の世界に転生してきたようです。 転生先のグリモード伯爵家は表向きは普通の商会を営んでおりますが裏では何やら諜報や暗部の仕事をしているらしく…。そんな表と裏の家業を手伝いながら、前世で汚部屋生活をしていた私は、今世で断捨離に挑戦することにしたのですが、なんと断捨離中に光魔法が使えることが発覚! 魔力があることを国にバレないようにしながら、魔術師の最高峰である特級魔術師を目指します!

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

処理中です...