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悪役令嬢に転生していたので、開き直って文句を言いに行ってきます
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「悪役令嬢に転生してるわ…コレ…」
柊 真琴。彼女は今、テンプレよろしく絶望的な状況に置かれていた。
真琴は交通事故に巻き込まれかけたワンコを救ったのはいいのだが、目が覚めたらここにいた。
そして前世と今世の記憶を思い出した。
そう、彼女は悪役令嬢に転生していたのだ。
しかもこの前世の記憶やこの世界…【聖女は如何に償われるか】の作品の記憶を思い出したのも今。
つまりは既に悪役令嬢として聖女を虐め抜いた後。
「詰んだわ、これ」
今頃婚約者である王太子は聖女のいじめの件で自分を断罪しようと画策しているだろう。
最早ここまで。
幸か不幸か、この世界の【家族】は権威や金にしか興味がなく可愛がってもらった覚えもないので家族への影響など今さら考える必要もない。
だったら。
「…やってやろうじゃないの」
元凶に一言くらい、文句を言わねば気が済まぬというもの。
彼女は聖女との面会を申し入れた。
教会は多額の寄付金を受け、聖女との面会を許可した。
おどおどびくびくとする聖女 マコト。
腹立たしいことに、前世の自分と同じ名前。
真琴は…いや、今世の名前で呼ぶならリラか。
彼女はマコトに対して言った。
「まずは、今まで行ってきた悪事に対して謝罪するわ」
「え…」
「陰口を言ったり、ドレスにワインをぶっかけたり、頬をぶっ叩いたりしたのは謝ると言ってるのよ」
「え、え」
「…これは私が悪いわ。ごめんなさい」
素直に謝るリラにぽかんとするマコトだったが、しばらくして頷いた。
「あの、謝っていただけて良かったです。私は大丈夫…です」
「そう。本当に虐めてごめんなさい。それは反省しているわ。本当に。悲しかったでしょう。ごめんなさい」
「いえ、本当にいいんです」
「でもね」
なんか解決した風の雰囲気のマコトをリラは睨んだ。
「私は恨んでるわ。貴女を。やったことは反省してる。でも貴女への憎しみは捨てない。金輪際何もする気はないけれど、このままなら恨み続けるわ」
「え…」
戸惑うマコトにリラは言った。
「私はね、生まれた時から公爵家の娘で、第一王子…今の王太子殿下の婚約者だったの。物心ついた時から将来の国母としての教育を施されてきた」
「…はい」
「血の滲むような努力をしてきた。苦しかった日も辛かった日も、将来大好きな王太子殿下と結婚するためと思って耐えた。好きだったのよ、本当に」
「…」
「それなのに、ぽっと出の、不思議な力を使える聖女が出てきて。人気者になって、王太子殿下と懇意にして、周りからは私は婚約破棄されるんじゃないかって噂された。両親や兄からも叱責された。私が悪いことをしたわけじゃない、貴女が勝手に王太子殿下と懇意になっただけなのに、皺寄せは私にきた」
マコトは顔面が蒼白になる。
「じゃあ、リラ様が私を虐めたのは…」
「待って。それを貴女のせいにする気はない。それは…私が貴女を虐めたのは、私に堪え性がなかったから。それは本当に私が悪いの。理由はそうだけど、それは私が悪い」
「…」
「でも、私は貴女を許せない。私から、私の生きる意味を奪った貴女を許せなかった。私から、王太子殿下を奪った貴女を許せないのよ」
「…それは」
まあその後許せなかったからと言って貴女を虐めたのは私だから、それについて責められるのは納得しかないのだけど。
そう言ったリラにマコトはもはや土気色の顔面になるから、リラは笑った。
「なんで貴女がそんな顔するのよ。ざまぁみろと笑えば良いでしょ」
「そんな、そんなことできませんっ。私が、私が勝手に王太子殿下に横恋慕したのに、そんなっ」
「…貴女の事情もね、理解できるのよ」
リラは知っていた。【聖女は如何に償われるか】の世界で、マコトは本当に可哀想な聖女様なのだ。
故郷には親兄弟もいた。友達もいた。
それなのに聖女召喚の儀のせいでこの世界に巻き込まれた。
聖女召喚の儀を行った隣国は世界の穴と呼ばれる瘴気溢れる大穴をマコトに塞がせると、マコトを用済みとして放逐した。
で、不思議な癒しの力を持つマコトはこの国に流れ着いたのだ。
「利用されて、大切な存在から引き剥がされて、帰ることもできなくて、好きだったものも大切だったものも全部失って、その先でようやく優しくされた。しかも誰もが夢にまで見るほどかっこいい王子様に。惚れない方が無理よね」
「…それは、でも」
「でもね。私はそれを理解した上で貴女を恨むわ。最早理屈ではないの。憎いのよ、愛した人から愛される貴女が」
「…」
マコトは、リラの言葉にゆっくりと頷いた。
「そう、ですよね。正直に話してくださってありがとうございます」
「…ええ。私こそ、聞いてくれてありがとう。虐めたのはごめんなさい。本当に反省しているし、本当にもうしないわ。そして、今後下るだろう罰も甘んじて受け入れましょう」
「…だそうですよ、王太子殿下」
その言葉にリラは後ろを振り向く。そこには愛した人の姿があった。
「!?」
「…すまない、リラ」
その言葉に泣きそうになるのは気のせいだと思いたかった。
「元々、僕が聖女様に一目惚れしたのが発端なのに…君に虐めを受けたと聞いて、真っ先に君と【君の有責で】婚約破棄することを考えた。そして、マコトを王太子妃にしようとも」
「…王太子殿下」
「そもそもの過ちは、僕が君というものがありながら浮気したこと。せめて、聖女様に一目惚れしてしまった時点で僕の有責で婚約を解消してもらうべきだったんだ」
「…それは」
頭を下げる王太子。
リラは慌てるが、王太子が頭を上げることはない。
「本当にすまなかった」
「その、王太子殿下!そんなに軽々しく頭を下げてはいけません」
「軽々しく、ではない。本当に、心から、君に詫びている。今日だって、君が聖女様に何かしたらその場で断罪する気でいた。自分の過ちに気付きもせずに」
「…わかりました。謝罪はお受けします」
王太子はその言葉にやっと頭を上げた。
「この婚約は、僕の有責で破棄することにする。そして、僕は未来の国王として…この恋を捨てる」
「え」
「もう聖女様とは関わらない」
「な、なぜ」
「私もその方がいいと思います」
マコトの言葉に、リラはマコトを凝視する。
「あれだけ王太子殿下に惚れ込んでいたのに…それでいいの?」
「…私が王太子殿下を好きになったのは、この世界で初めて優しくしてくれた方だから。本当は、頼れるならきっと誰でもよかった」
「…」
「婚約者がいる方だと知っても、私は間違っていると知りながら王太子殿下と恋仲になった。虐められた時、本当は安心したんです。リラ様が嫌な女でよかった、これで正当化できるって」
「…」
マコトの言葉に、リラは目を伏せる。
この面会室にいる者はみんな、どこか後ろ暗いところはあったのだ。
恋なんて、そんなものなのかも知れない。
どこまでも自分勝手な、そんなもの。
でも。
「それでも、好きなんでしょう?だったら、無理に別れる必要はありません」
「え」
「リラ様?」
「王太子殿下有責での婚約破棄はそのままお受けしますが、お二人はどうか…御心のままに添い遂げてください。お二人の心を知って、私は…そうして欲しいと、そう思いました」
「…」
マコトと王太子の二人が、リラに頭を下げる。
「ごめんなさい」
「本当にすまなかった」
「もう、いいんです」
そしてこの騒動は【王太子有責での婚約破棄】【王太子と聖女の新たな婚約】という二つのニュースとなって世間を騒がせたものの、本来より穏便に幕を閉じた。
王太子との婚約破棄から半年後。
リラは一息ついていた。
あれから色々あったのだ。
まず、王太子有責での婚約破棄となったことで家にもリラ個人にも莫大な賠償金が支払われた。
それも込みで、リラへの婚約の申し入れも殺到した。
「この半年本当に大変だったわ…」
婚約者は結局、昔から付き合いのある…幼馴染と言ってもいい侯爵家の跡取りに決まった。
それで一息つけるかと思えば、今度はマコトの王太子妃教育を何故か任されることになりマコトと共にてんやわんや。
そこにさらにマコトを手放したはずの隣国の干渉もあってさあ大変。
まあ隣国は結局のところ、王太子殿下の方で上手くやり込めた…というか国際社会の反発もあってこの国で保護することに合意させたのだが。
その後隣国は他の国からもマコトの扱いでさらに責められ続け政が上手く機能しなくなっているらしいので、ざまぁみろとは思うが。
「マコトがハイスペックだったからなんとかなったのよね…」
マコトの指導の方は幸い本人がハイスペックだったため、この半年でなんとか形にはなった。
他のご婦人に指導を引き継げてこれでようやく煩わしいこと全てから解放されたのだ。
「あー、忙しかった…」
「ご苦労様」
「…あんたいつのまに」
「婚約者の部屋に入って悪い?」
「許可なく入るのは悪いと思うわ」
リラの婚約者、チェロ。
彼は音もなくリラの背後に回っていた。
「だって君、いくらノックしても話しかけても上の空だったのだもの」
「…悪かったわね」
「本当に。あまり心配させないで欲しいな」
「心配ねぇ…」
「あ、酷い。本当に心配してたのに。上の空だけどまさかまだ王太子殿下のことでも考えてるのかって」
チェロの言葉にリラは思わず笑う。
「なにそれ、ヤキモチ?」
「うん、僕はずっとリラを好きだったからね」
「ふふ、あっそ」
「冗談じゃないよ。あんな浮気性な男さっさと捨てて、僕のことを選んでくれないかなって思ってた」
「…マジ?」
こくりと頷くチェロに、リラは目を丸くした後また笑った。
「そういうことは早く言ってよね」
「だって、言っても君本気にしないだろう」
「…確かに」
チェロはリラに跪く。
そして左手をとって婚約指輪にキスをした。
「なに?」
「大切にするって誓い」
「私もやってあげましょうか?」
「いや、君はまだ僕に惚れてもないだろ」
「今惚れたのよ」
リラの言葉に、今度はチェロが目を丸くした。そして、笑った。
「その言葉が本当なら、指輪ではなく顔にキスしておくれよ」
「欲張り」
リラはそっと、チェロの鼻の頭に口付けをした。
「唇は結婚式に取っておきなさい」
「…それ、最高だね」
「でしょ?」
こうして、テンプレ転生した彼女は悪あがきの末に思わぬ幸せを掴んだのだ。
柊 真琴。彼女は今、テンプレよろしく絶望的な状況に置かれていた。
真琴は交通事故に巻き込まれかけたワンコを救ったのはいいのだが、目が覚めたらここにいた。
そして前世と今世の記憶を思い出した。
そう、彼女は悪役令嬢に転生していたのだ。
しかもこの前世の記憶やこの世界…【聖女は如何に償われるか】の作品の記憶を思い出したのも今。
つまりは既に悪役令嬢として聖女を虐め抜いた後。
「詰んだわ、これ」
今頃婚約者である王太子は聖女のいじめの件で自分を断罪しようと画策しているだろう。
最早ここまで。
幸か不幸か、この世界の【家族】は権威や金にしか興味がなく可愛がってもらった覚えもないので家族への影響など今さら考える必要もない。
だったら。
「…やってやろうじゃないの」
元凶に一言くらい、文句を言わねば気が済まぬというもの。
彼女は聖女との面会を申し入れた。
教会は多額の寄付金を受け、聖女との面会を許可した。
おどおどびくびくとする聖女 マコト。
腹立たしいことに、前世の自分と同じ名前。
真琴は…いや、今世の名前で呼ぶならリラか。
彼女はマコトに対して言った。
「まずは、今まで行ってきた悪事に対して謝罪するわ」
「え…」
「陰口を言ったり、ドレスにワインをぶっかけたり、頬をぶっ叩いたりしたのは謝ると言ってるのよ」
「え、え」
「…これは私が悪いわ。ごめんなさい」
素直に謝るリラにぽかんとするマコトだったが、しばらくして頷いた。
「あの、謝っていただけて良かったです。私は大丈夫…です」
「そう。本当に虐めてごめんなさい。それは反省しているわ。本当に。悲しかったでしょう。ごめんなさい」
「いえ、本当にいいんです」
「でもね」
なんか解決した風の雰囲気のマコトをリラは睨んだ。
「私は恨んでるわ。貴女を。やったことは反省してる。でも貴女への憎しみは捨てない。金輪際何もする気はないけれど、このままなら恨み続けるわ」
「え…」
戸惑うマコトにリラは言った。
「私はね、生まれた時から公爵家の娘で、第一王子…今の王太子殿下の婚約者だったの。物心ついた時から将来の国母としての教育を施されてきた」
「…はい」
「血の滲むような努力をしてきた。苦しかった日も辛かった日も、将来大好きな王太子殿下と結婚するためと思って耐えた。好きだったのよ、本当に」
「…」
「それなのに、ぽっと出の、不思議な力を使える聖女が出てきて。人気者になって、王太子殿下と懇意にして、周りからは私は婚約破棄されるんじゃないかって噂された。両親や兄からも叱責された。私が悪いことをしたわけじゃない、貴女が勝手に王太子殿下と懇意になっただけなのに、皺寄せは私にきた」
マコトは顔面が蒼白になる。
「じゃあ、リラ様が私を虐めたのは…」
「待って。それを貴女のせいにする気はない。それは…私が貴女を虐めたのは、私に堪え性がなかったから。それは本当に私が悪いの。理由はそうだけど、それは私が悪い」
「…」
「でも、私は貴女を許せない。私から、私の生きる意味を奪った貴女を許せなかった。私から、王太子殿下を奪った貴女を許せないのよ」
「…それは」
まあその後許せなかったからと言って貴女を虐めたのは私だから、それについて責められるのは納得しかないのだけど。
そう言ったリラにマコトはもはや土気色の顔面になるから、リラは笑った。
「なんで貴女がそんな顔するのよ。ざまぁみろと笑えば良いでしょ」
「そんな、そんなことできませんっ。私が、私が勝手に王太子殿下に横恋慕したのに、そんなっ」
「…貴女の事情もね、理解できるのよ」
リラは知っていた。【聖女は如何に償われるか】の世界で、マコトは本当に可哀想な聖女様なのだ。
故郷には親兄弟もいた。友達もいた。
それなのに聖女召喚の儀のせいでこの世界に巻き込まれた。
聖女召喚の儀を行った隣国は世界の穴と呼ばれる瘴気溢れる大穴をマコトに塞がせると、マコトを用済みとして放逐した。
で、不思議な癒しの力を持つマコトはこの国に流れ着いたのだ。
「利用されて、大切な存在から引き剥がされて、帰ることもできなくて、好きだったものも大切だったものも全部失って、その先でようやく優しくされた。しかも誰もが夢にまで見るほどかっこいい王子様に。惚れない方が無理よね」
「…それは、でも」
「でもね。私はそれを理解した上で貴女を恨むわ。最早理屈ではないの。憎いのよ、愛した人から愛される貴女が」
「…」
マコトは、リラの言葉にゆっくりと頷いた。
「そう、ですよね。正直に話してくださってありがとうございます」
「…ええ。私こそ、聞いてくれてありがとう。虐めたのはごめんなさい。本当に反省しているし、本当にもうしないわ。そして、今後下るだろう罰も甘んじて受け入れましょう」
「…だそうですよ、王太子殿下」
その言葉にリラは後ろを振り向く。そこには愛した人の姿があった。
「!?」
「…すまない、リラ」
その言葉に泣きそうになるのは気のせいだと思いたかった。
「元々、僕が聖女様に一目惚れしたのが発端なのに…君に虐めを受けたと聞いて、真っ先に君と【君の有責で】婚約破棄することを考えた。そして、マコトを王太子妃にしようとも」
「…王太子殿下」
「そもそもの過ちは、僕が君というものがありながら浮気したこと。せめて、聖女様に一目惚れしてしまった時点で僕の有責で婚約を解消してもらうべきだったんだ」
「…それは」
頭を下げる王太子。
リラは慌てるが、王太子が頭を上げることはない。
「本当にすまなかった」
「その、王太子殿下!そんなに軽々しく頭を下げてはいけません」
「軽々しく、ではない。本当に、心から、君に詫びている。今日だって、君が聖女様に何かしたらその場で断罪する気でいた。自分の過ちに気付きもせずに」
「…わかりました。謝罪はお受けします」
王太子はその言葉にやっと頭を上げた。
「この婚約は、僕の有責で破棄することにする。そして、僕は未来の国王として…この恋を捨てる」
「え」
「もう聖女様とは関わらない」
「な、なぜ」
「私もその方がいいと思います」
マコトの言葉に、リラはマコトを凝視する。
「あれだけ王太子殿下に惚れ込んでいたのに…それでいいの?」
「…私が王太子殿下を好きになったのは、この世界で初めて優しくしてくれた方だから。本当は、頼れるならきっと誰でもよかった」
「…」
「婚約者がいる方だと知っても、私は間違っていると知りながら王太子殿下と恋仲になった。虐められた時、本当は安心したんです。リラ様が嫌な女でよかった、これで正当化できるって」
「…」
マコトの言葉に、リラは目を伏せる。
この面会室にいる者はみんな、どこか後ろ暗いところはあったのだ。
恋なんて、そんなものなのかも知れない。
どこまでも自分勝手な、そんなもの。
でも。
「それでも、好きなんでしょう?だったら、無理に別れる必要はありません」
「え」
「リラ様?」
「王太子殿下有責での婚約破棄はそのままお受けしますが、お二人はどうか…御心のままに添い遂げてください。お二人の心を知って、私は…そうして欲しいと、そう思いました」
「…」
マコトと王太子の二人が、リラに頭を下げる。
「ごめんなさい」
「本当にすまなかった」
「もう、いいんです」
そしてこの騒動は【王太子有責での婚約破棄】【王太子と聖女の新たな婚約】という二つのニュースとなって世間を騒がせたものの、本来より穏便に幕を閉じた。
王太子との婚約破棄から半年後。
リラは一息ついていた。
あれから色々あったのだ。
まず、王太子有責での婚約破棄となったことで家にもリラ個人にも莫大な賠償金が支払われた。
それも込みで、リラへの婚約の申し入れも殺到した。
「この半年本当に大変だったわ…」
婚約者は結局、昔から付き合いのある…幼馴染と言ってもいい侯爵家の跡取りに決まった。
それで一息つけるかと思えば、今度はマコトの王太子妃教育を何故か任されることになりマコトと共にてんやわんや。
そこにさらにマコトを手放したはずの隣国の干渉もあってさあ大変。
まあ隣国は結局のところ、王太子殿下の方で上手くやり込めた…というか国際社会の反発もあってこの国で保護することに合意させたのだが。
その後隣国は他の国からもマコトの扱いでさらに責められ続け政が上手く機能しなくなっているらしいので、ざまぁみろとは思うが。
「マコトがハイスペックだったからなんとかなったのよね…」
マコトの指導の方は幸い本人がハイスペックだったため、この半年でなんとか形にはなった。
他のご婦人に指導を引き継げてこれでようやく煩わしいこと全てから解放されたのだ。
「あー、忙しかった…」
「ご苦労様」
「…あんたいつのまに」
「婚約者の部屋に入って悪い?」
「許可なく入るのは悪いと思うわ」
リラの婚約者、チェロ。
彼は音もなくリラの背後に回っていた。
「だって君、いくらノックしても話しかけても上の空だったのだもの」
「…悪かったわね」
「本当に。あまり心配させないで欲しいな」
「心配ねぇ…」
「あ、酷い。本当に心配してたのに。上の空だけどまさかまだ王太子殿下のことでも考えてるのかって」
チェロの言葉にリラは思わず笑う。
「なにそれ、ヤキモチ?」
「うん、僕はずっとリラを好きだったからね」
「ふふ、あっそ」
「冗談じゃないよ。あんな浮気性な男さっさと捨てて、僕のことを選んでくれないかなって思ってた」
「…マジ?」
こくりと頷くチェロに、リラは目を丸くした後また笑った。
「そういうことは早く言ってよね」
「だって、言っても君本気にしないだろう」
「…確かに」
チェロはリラに跪く。
そして左手をとって婚約指輪にキスをした。
「なに?」
「大切にするって誓い」
「私もやってあげましょうか?」
「いや、君はまだ僕に惚れてもないだろ」
「今惚れたのよ」
リラの言葉に、今度はチェロが目を丸くした。そして、笑った。
「その言葉が本当なら、指輪ではなく顔にキスしておくれよ」
「欲張り」
リラはそっと、チェロの鼻の頭に口付けをした。
「唇は結婚式に取っておきなさい」
「…それ、最高だね」
「でしょ?」
こうして、テンプレ転生した彼女は悪あがきの末に思わぬ幸せを掴んだのだ。
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