公爵閣下のご息女は、華麗に変身する

下菊みこと

文字の大きさ
30 / 87

何者かによるキメラ被害

しおりを挟む
「キメラ?」

「そうだ。ニノン、しばらくは外に出る場合は師匠から離れるな」

「わかった!」

ニノンはこの日、ファルマンからガエルの側にいるよう言い渡された。

「しかし、キメラねぇ…一体誰が何の目的で作ったんだろうね?」

ガエルは首をかしげる。

「ねぇ、キメラって作成禁止されてたよね?」

「そもそも今時キメラなんて作ったって誰の役に立つ訳でもないよな。戦時中じゃあるまいし」

「その上野放しにして人を襲わせるなんて…怖いです」

ユベールはキメラの作成禁止について思い起こす。オノレはキメラの用途が気になりだし、サラは怯えていた。

「野放しにされた何匹ものキメラが甚大な影響を与えているから、女帝陛下の命で騎士団を所有する貴族はキメラ狩りに出ることになった。俺もキメラ狩りに出る。ニノン、留守は頼んだぞ」

「うん、わかった!でも、怪我せず無事に帰ってきてね」

「わかった。任せろ」

ファルマンはニノンを抱き上げて、安心させるようにおでこにキスをした。ニノンは嬉しそうに微笑む。

「では師匠、俺は行ってきます。ニノンをよろしくお願いします」

「任せてよ」

ガエルにニノンを託し、ファルマンはキメラ狩りに向かった。

「…ニノン、大丈夫?」

ユベールはファルマンを笑顔で見送ったニノンに声をかける。するとニノンは一気にくしゃっと表情を崩して泣き出した。身体をブルブル震わせる。

「オノレ、ユベール…パパが危ないところに行っちゃったよぉ…」

グズグズと泣きながらオノレとユベールに抱きつくニノン。オノレとユベールは小さく笑う。

「よく頑張ったな、ニノン。笑顔で見送れて偉かったぞ」

「ニノン、お父さんなら大丈夫だよ。だって、師匠の弟子だった人だよ?キメラなんかに遅れはとらないよ」

「ううー…」

オノレとユベールにポンポンと背中を叩いてもらうニノン。

「ニノンちゃん、大丈夫だよ。私もファルマンさんを応援するから。ね?」

「自分のために泣いてくれる可愛い娘がいるんだ。ファルマンは絶対無事に帰ってくるさ」

サラとガエルも言葉を尽くして慰める。それでもニノンの涙は止まらなかったが、少しは落ち着いたらしい。身体の震えは止まった。

「ニノン、一緒に美味しいものでも食べようよ。アプリコットティーとブリオッシュはどう?」

「いいな!ユベールもたまにはいいこと思いつくじゃん」

「たまにはってなにさ」

「ニノンちゃん、そうと決まれば食べに行こう?」

「ニノン。特別に僕のおすすめのジャムを分けてあげるから、おいで。それともアプリコットティーより蜂蜜たっぷりのホットミルクがいいかな?」

涙が止まらないニノンを、半ば強引に慰める。ニノンは〝いつも通り〟の彼らの様子に、ブリオッシュを食べながらようやく落ち着きを取り戻した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。

鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。 さらに、偽聖女と決めつけられる始末。 しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!? 他サイトにも重複掲載中です。

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。 うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。 私、マーガレットは、今年16歳。 この度、結婚の申し込みが舞い込みました。 私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。 支度、はしなくてよろしいのでしょうか。 ☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

公爵閣下、社交界の常識を学び直しては?

碧井 汐桜香
ファンタジー
若い娘好きの公爵は、気弱な令嬢メリシアルゼに声をかけた。 助けを求めるメリシアルゼに、救いの手は差し出されない。 母ですら、上手くやりなさいと言わんばかりに視線をおくってくる。 そこに現れた貴婦人が声をかける。 メリシアルゼの救いの声なのか、非難の声なのか。

処理中です...