やっぱり貴族なんてのはクソだった。唯一の宝物を壊された平民は、彼等の真実を公にする。

下菊みこと

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俺が拾われた日

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俺は生きる価値なんてない、燃えないゴミだ。でも、生きてる。生きていたいから生きているのではなく、死にたくないから生きるだけ。

そんな俺は、全てを憎む。俺を捨てた両親を。俺を虐めた奴らを。俺を追い出したスラムを。俺を救ってくれない国を。俺と違って贅沢な生活を当たり前に送る貴族を。全てクソだ。

そんなことを考えて、よろよろ歩いてあてもなく彷徨う俺…ただの平民、いや棄民である名無し。俺は、獣人だ。

獣人は非常に珍しいらしい。普通は特に差別されることはないらしいが、スラムでは普通に虐められた。獣人にはいくつか特殊な能力があり、それはシークレット中のシークレットらしい。その辺は性能の良いこの獣耳でどこからともなく聞こえてきた情報だ。まあ、その特殊能力のおかげで今までなんとか生き残ってきた。

でも、とうとうスラムを追い出された。もうだめだ。どうすれば良い?

その時、ある馬車が俺の横を通り過ぎて、止まった。

けっ、お貴族様かよ。良いよなぁ、あんなたかが移動用の乗り物にまで金をかけられて。

そう思っていたら、馬車から燕尾服の男が出てきて俺を抱き上げて馬車に乗せた。

…は?

訳もわからず何も言えなかった俺に、馬車は無情にも出発した。燕尾服の男は俺を膝に乗せてじっとしていろという。

…は?

その時、目の前の明らかに貴族のご令嬢の女の子がふわふわした可愛い笑顔で言った。

「貴方、お腹が空いているでしょう?」

「え?ああ、まあ」

「私がご馳走してあげる!でもまずは、お風呂に入って新しい服を着てね。新しい服といっても急遽買うから既製品になってしまうけど」

…は?

「その後ご飯をたくさん食べてね!お医者様を呼ぶから、怪我や病気もチェックしましょう?あとはそうね…セバスチャン、お仕事をこの子に与えてくれる?」

「まずは家事全般を任せつつ礼儀作法を教え込み、形になればお嬢様のお目付役…侍従に致しましょう」

「ありがとう、セバスチャン!」

俺はもう、ついていけなかった。
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