やっぱり貴族なんてのはクソだった。唯一の宝物を壊された平民は、彼等の真実を公にする。

下菊みこと

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大きくなったブランシュ

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ブランシュの入学式はそれはもう屋敷総出でお祝いした。照れた顔でふわふわと笑いありがとうというブランシュに誰もが見惚れた。幸せそうなブランシュに、これから楽しい学生生活が始まるのだろうと希望を抱いていた。

ところが、ブランシュは登校するにつれて次第に元気がなくなる。理由を聞いても答えてくれない。ただ、当主様や奥様、若様の前では明るく振舞っていた。

そのうちブランシュは、ふわふわと微笑むいつものブランシュなら絶対見せない、鬼のような形相を二人きりの時に見せるようになった。といっても何もされていない。今ここにいない誰かに向けた怨嗟だった。

俺はブランシュにそんな顔をさせる奴が許せなかった。きっと、元気が無くなった原因と同じ奴だ。死ねばいいのに。

とはいえ、俺だって迂闊に貴族には手は出せないし、特殊能力を使うなら相手の顔と名前を知る必要がある。モーリスが相手ならやれるが、モーリスとは限らないし…モーリスも含まれる複数人かもしれないし。

ブランシュが俺に言う気がない以上、どうすることもできなかった。

そんなことがしばらく続いた後、今度はブランシュがやけにご機嫌で帰ってくることが増えた。でもその笑顔は、俺の好きなふわふわした微笑みではなく、悪魔が高笑いする時のような表情で。

ブランシュにさりげなく聞いてみても、なんでもないと返される。当主様には一応報告はしたが、なんだろう。いやな予感がする。

ブランシュに一刻も早く元に戻ってもらいたくて、俺はブランシュの好きな昆虫を捕まえて虫かごに入れてプレゼントしたり、ブランシュの飼い猫の毛を掻き集めて清潔に洗ってぬいぐるみを作ってプレゼントしたりした。ブランシュは笑顔でありがとうと言って喜んでくれたけど、俺の知るあのふわふわした笑顔ではなかった。

俺の宝物…俺のブランシュは、どうしてしまったんだろう。どうすれば戻って来てくれる?

悩んでも答えは出なかった。
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