6 / 59
ここでの生活は楽だけれど、この人が理解できないの
クリオに拾われてしばらくが経った。
美味しいものをたくさん食べられて、私は段々と肉付きが良くなって今は標準体型になったと思う。
背中の火傷の跡もだいぶ治ってきた。高い貴重な薬だけあるわね。
痛んでいた髪やボロボロだった爪も綺麗になった。肌の調子もいい。
そんな私に対して、クリオは満足そうに笑う。
「お嬢様」
「ピエタ、どうしたの」
ぼーっとしていた私に、私の専属侍女が話しかけてくる。
ここでの私の立ち位置はよくわからない。
養子にされたわけでも貴族籍に入れてもらえたわけでもない。
けれど庇護され、お嬢様と言われて侍女まで付けられている。
かといって特別何か教育を受けることもなく、クリオが執務で忙しい間は私はぼーっとして過ごすしかない。
「いえ、ぼーっとしていらしたのでなにかお悩みなのかと」
「…」
普段は本を読むくらいの暇つぶしはする。読み方はピエタから習った。
ピエタは教えてもらったらすぐに読み書き算数を覚えた私に驚いていたが、地頭がいいと言われても教育を受けるつもりもないのでどうでもいい。
けれど今日はそんな気分ではなかった。
理由は一つ。
ここでの生活は楽だけれど、いつまでもクリオが理解できないからだ。
「…ここでの生活は楽だけれど、いつまでもクリオが理解できないの」
私がそう言えば、ピエタは微笑む。
「ご主人様は変わった方ですから」
「そうね」
「ですが、お嬢様を大切にされていることは間違いありません」
「そうね、私はそれが理解できないの」
クリオが度を超えた善人だから、というよりもはや狂人レベルで己以外の人々を憐れんでいるから。
それはわかるのだけど、どうしても私が大切にされているこの状況がわからない。
というより、受け入れられない。
「もしどうしてもご主人様の考えがわからなくて不安なら、お勉強をして過ごして忘れてしまいましょう!」
そう言ってピエタは、いつの間に持ってきていたのか魔術書を渡してきた。
「お嬢様は一度教わったことはすんなりと己の知識に変えてしまう天才です!お勉強しないなんてもったいないです!」
「…わかったわ」
たしかに、時間を無為に過ごすこともない。
勉強をして暇つぶしをすれば、不安になることもない。
魔術書を読んだからってすぐに魔術が使えるわけではないだろうけれど、魔術を練習をする時間も暇つぶしにはなるだろう。
「魔術を私が学ぶなんてね」
魔術の触媒にされることが多いアルビノ。
けれど、自らが魔術を使えるようになるとかなり力ある魔術師になれるらしい。
そんな機会はそうそうないのだけど、せっかくの機会だし頑張ってみるのもいいかもしれない。
美味しいものをたくさん食べられて、私は段々と肉付きが良くなって今は標準体型になったと思う。
背中の火傷の跡もだいぶ治ってきた。高い貴重な薬だけあるわね。
痛んでいた髪やボロボロだった爪も綺麗になった。肌の調子もいい。
そんな私に対して、クリオは満足そうに笑う。
「お嬢様」
「ピエタ、どうしたの」
ぼーっとしていた私に、私の専属侍女が話しかけてくる。
ここでの私の立ち位置はよくわからない。
養子にされたわけでも貴族籍に入れてもらえたわけでもない。
けれど庇護され、お嬢様と言われて侍女まで付けられている。
かといって特別何か教育を受けることもなく、クリオが執務で忙しい間は私はぼーっとして過ごすしかない。
「いえ、ぼーっとしていらしたのでなにかお悩みなのかと」
「…」
普段は本を読むくらいの暇つぶしはする。読み方はピエタから習った。
ピエタは教えてもらったらすぐに読み書き算数を覚えた私に驚いていたが、地頭がいいと言われても教育を受けるつもりもないのでどうでもいい。
けれど今日はそんな気分ではなかった。
理由は一つ。
ここでの生活は楽だけれど、いつまでもクリオが理解できないからだ。
「…ここでの生活は楽だけれど、いつまでもクリオが理解できないの」
私がそう言えば、ピエタは微笑む。
「ご主人様は変わった方ですから」
「そうね」
「ですが、お嬢様を大切にされていることは間違いありません」
「そうね、私はそれが理解できないの」
クリオが度を超えた善人だから、というよりもはや狂人レベルで己以外の人々を憐れんでいるから。
それはわかるのだけど、どうしても私が大切にされているこの状況がわからない。
というより、受け入れられない。
「もしどうしてもご主人様の考えがわからなくて不安なら、お勉強をして過ごして忘れてしまいましょう!」
そう言ってピエタは、いつの間に持ってきていたのか魔術書を渡してきた。
「お嬢様は一度教わったことはすんなりと己の知識に変えてしまう天才です!お勉強しないなんてもったいないです!」
「…わかったわ」
たしかに、時間を無為に過ごすこともない。
勉強をして暇つぶしをすれば、不安になることもない。
魔術書を読んだからってすぐに魔術が使えるわけではないだろうけれど、魔術を練習をする時間も暇つぶしにはなるだろう。
「魔術を私が学ぶなんてね」
魔術の触媒にされることが多いアルビノ。
けれど、自らが魔術を使えるようになるとかなり力ある魔術師になれるらしい。
そんな機会はそうそうないのだけど、せっかくの機会だし頑張ってみるのもいいかもしれない。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
後妻の条件を出したら……
しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。
格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。
だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。
しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
要らないと思ったのに人に取られると欲しくなるのはわからなくもないけれど。
しゃーりん
恋愛
フェルナンドは侯爵家の三男で騎士をしている。
同僚のアルベールが親に見合いしろと強要されたと愚痴を言い、その相手が先日、婚約が破棄になった令嬢だということを知った。
その令嬢、ミュリエルは学園での成績も首席で才媛と言われ、一部では名高い令嬢であった。
アルベールはミュリエルの顔を知らないらしく、婚約破棄されるくらいだから頭の固い不細工な女だと思い込んでいたが、ミュリエルは美人である。
ならば、アルベールが見合いをする前に、自分と見合いができないかとフェルナンドは考えた。
フェルナンドは騎士を辞めて実家の領地で働くために、妻を必要としていたからである。
フェルナンドとミュリエルの結婚を知ったアルベールは、ミュリエルを見て『返せ』と言い出す、というお話です。
必要とされなくても、私はここにいます
あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。
口出ししない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
ただ静かに、そこにいるだけ。
そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。
張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。
何かを勝ち取る物語ではない。
誰かを打ち負かす物語でもない。
それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。
これは、
声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、
何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。