16 / 59
生まれて初めて、本当に美しいと思えるものを見たわ
しおりを挟む
「フォル、今日は少しお出かけしようか」
「あら、珍しい。どうしたの?」
「フォルに見せたいものがあるんだよ」
そう言ってクリオは私を連れ出して、馬車に乗せる。馬車の窓から見える景色に、少しだけ心が踊った。
家にいた頃は外になんて出してもらえず暴力を振るわれたし、クリオに拾われてからはわざわざ外に出る必要もなかったから。
外というのは、最高に興味をそそられる。
けれどアルビノの私にとっては外は危険地帯。魔術師に見つかったら怖い思いをするのは分かりきっている。
でも、だからこそわからない。そんな危険を冒してまで私に見せたいものってなんだろう。
「わあ…!」
しばらくすると、花畑についた。
窓の外の景色に思わず声が出てしまう。
馬車はそこで止まって、クリオは私を馬車から降ろした。
「綺麗な景色だろう?」
「ええ。生まれて初めて、本当に美しいと思えるものを見たわ」
「そうか、それは良かった」
「お花畑って、こんな感じなのね。青空から日の光が優しく差し込んで、キラキラ輝く白い花が風に揺られて綺麗だわ」
「この花は天の雫という、我が領でしか栽培されていない特別な花なんだ。他領で育ててもうまく咲かないらしくてね。希少で美しいから高値で売れるし、採取する直前のこの時期はこうして観光地としても使われるよ。この花は花の中でも特別に長く花が咲き続けるから、採取は少ししてからだね」
クリオの説明になるほどと頷く。
こんなに美しくて希少なものを見せてくれることに、心から感謝する。
「クリオ、そんなに希少なものを見せてくれてありがとう」
「いいんだよ。ほら、せっかくの花畑だ。好きにしていいんだよ」
「うん…!」
私は花畑に近寄って、匂いを嗅いだり花をよく観察したりする。
白い花は日の光を反射してキラキラしていた。香りは甘い香りの中に爽やかさもあって、ずっと嗅いでいられるほど芳しい。
さすがに、この後採取するなら勝手にとってはいけないと思うのでこの間習得した魔術を使う。
構築魔術。魔力を使ってイメージしたものを作り出す魔術。この魔術はたくさん魔力を消費するから使い勝手が悪いというか、コスパを考えると使う人も少ないらしい。そもそも魔力不足で使えない人が大半。
けれど私はアルビノ、魔力はたくさんあるしそもそも自分が触媒になるので全然苦労なく使える。
「…よし」
「おや、構築魔術だ。天の雫のレプリカかい?」
「ええ、見た目と香りをそのまま写した造花よ」
「すごい技術だね。さすがはフォル」
頭を撫でて褒められる。
なんとなく、心の奥の深い部分がじんわり温まるような気持ちになった。
「あら、珍しい。どうしたの?」
「フォルに見せたいものがあるんだよ」
そう言ってクリオは私を連れ出して、馬車に乗せる。馬車の窓から見える景色に、少しだけ心が踊った。
家にいた頃は外になんて出してもらえず暴力を振るわれたし、クリオに拾われてからはわざわざ外に出る必要もなかったから。
外というのは、最高に興味をそそられる。
けれどアルビノの私にとっては外は危険地帯。魔術師に見つかったら怖い思いをするのは分かりきっている。
でも、だからこそわからない。そんな危険を冒してまで私に見せたいものってなんだろう。
「わあ…!」
しばらくすると、花畑についた。
窓の外の景色に思わず声が出てしまう。
馬車はそこで止まって、クリオは私を馬車から降ろした。
「綺麗な景色だろう?」
「ええ。生まれて初めて、本当に美しいと思えるものを見たわ」
「そうか、それは良かった」
「お花畑って、こんな感じなのね。青空から日の光が優しく差し込んで、キラキラ輝く白い花が風に揺られて綺麗だわ」
「この花は天の雫という、我が領でしか栽培されていない特別な花なんだ。他領で育ててもうまく咲かないらしくてね。希少で美しいから高値で売れるし、採取する直前のこの時期はこうして観光地としても使われるよ。この花は花の中でも特別に長く花が咲き続けるから、採取は少ししてからだね」
クリオの説明になるほどと頷く。
こんなに美しくて希少なものを見せてくれることに、心から感謝する。
「クリオ、そんなに希少なものを見せてくれてありがとう」
「いいんだよ。ほら、せっかくの花畑だ。好きにしていいんだよ」
「うん…!」
私は花畑に近寄って、匂いを嗅いだり花をよく観察したりする。
白い花は日の光を反射してキラキラしていた。香りは甘い香りの中に爽やかさもあって、ずっと嗅いでいられるほど芳しい。
さすがに、この後採取するなら勝手にとってはいけないと思うのでこの間習得した魔術を使う。
構築魔術。魔力を使ってイメージしたものを作り出す魔術。この魔術はたくさん魔力を消費するから使い勝手が悪いというか、コスパを考えると使う人も少ないらしい。そもそも魔力不足で使えない人が大半。
けれど私はアルビノ、魔力はたくさんあるしそもそも自分が触媒になるので全然苦労なく使える。
「…よし」
「おや、構築魔術だ。天の雫のレプリカかい?」
「ええ、見た目と香りをそのまま写した造花よ」
「すごい技術だね。さすがはフォル」
頭を撫でて褒められる。
なんとなく、心の奥の深い部分がじんわり温まるような気持ちになった。
232
あなたにおすすめの小説
家を乗っ取られて辺境に嫁がされることになったら、三食研究付きの溺愛生活が待っていました
ミズメ
恋愛
ライラ・ハルフォードは伯爵令嬢でありながら、毎日魔法薬の研究に精を出していた。
一つ結びの三つ編み、大きな丸レンズの眼鏡、白衣。""変わり者令嬢""と揶揄されながら、信頼出来る仲間と共に毎日楽しく研究に励む。
「大変です……!」
ライラはある日、とんでもない事実に気が付いた。作成した魔法薬に、なんと"薄毛"の副作用があったのだ。その解消の為に尽力していると、出席させられた夜会で、伯爵家を乗っ取った叔父からふたまわりも歳上の辺境伯の後妻となる婚約が整ったことを告げられる。
手詰まりかと思えたそれは、ライラにとって幸せへと続く道だった。
◎さくっと終わる短編です(10話程度)
◎薄毛の話題が出てきます。苦手な方(?)はお気をつけて…!
折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!
たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。
なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!!
幸せすぎる~~~♡
たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!!
※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。
※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。
短めのお話なので毎日更新
※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。
※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。
《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》
※他サイト様にも公開始めました!
完結 女性に興味が無い侯爵様 私は自由に生きます。
ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ!
そんな私に好都合な相手が。
女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく付いてきました。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました
さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。
裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。
「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。
恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……?
温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。
――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!?
胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!
結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?
宮永レン
恋愛
没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。
ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。
仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……
『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜
水都 ミナト
恋愛
マリリン・モントワール伯爵令嬢。
実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。
地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。
「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」
※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。
※カクヨム様、なろう様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる