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第一章

仲間と敵

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《???視点》
 さっき、【ミスト】が切れた。
 覚悟はしてたけど、かなりつらい現実。

 これで、私を守るがなくなった。
 そして、それは私の絶体絶命を意味する。

 それに、一時間考えたこの状況の打開策は『だれかに助けてもらう』。
 本当にそれしか浮かばなかった。
 この間までは王都一の天才、とか言われてた私でも。

「お願い……」





 《ユータ視点》
 〔このあたりか〕
 〔そのようです〕

 俺たちは今、謎の霧の中心、というか霧が濃い場所に向かっている。

 30分くらい歩くと、霧で1メートル先も見通せないほど視界が悪くなった。
 さっきは危うく茂みに突っ込みかけた。

 〔どうする?進むか?〕
 〔うーん……そうですね。やめておいたほうがよろしいかと〕
 〔だよなあー〕



 と、その時……。
「おっ」
 〔む?〕

 〔晴れましたね〕
「晴れたようだな」

 〔行きますか?〕
 〔行こうか〕




     《追っ手の副リーダー視点》


「リーダー、たしかこの辺りですよね」
「ああ、そのはずだ」

「おい、お前たち!この辺りのはずだ!!探せ!!!」
「「「「「へい!!!」」」」」


「おーい、でてこーい」
「今なら助けてやるぞー」

「どーこーだー?」


「隊長、副隊長!いました!こっちです!」
「でかした!隊長、行きましょう!!」
「よし、総員、突撃ーー!」
「「「「おおー!」」」」




 《???視点》

「いたぞー」

 ……見つかった。

 もう限界かな。

 こうなったら。

 勝算はほぼ0だけどね。




 腰の剣を抜く。
 2本とも。

 2刀流だから。

「うらぁ」

 相手が襲いかかって来る。

 その太刀筋を見極めて、右にかわす。
 紙一重のところで避けて、左の剣で切りつける。

「ぐわっ」

 まずは1人。

 でもあと四人居る。

「おりゃあ」
「ふっ」

 今度は2人同時か。

 いや……。


 私が2人の剣の間の隙間に飛び込むと同時に、目の前の草むらからもう1人飛び出してきた。


「あっ」

 かわし損ねて、右腕を少し切られた。
 しかも、体勢を崩して転んでしまった。

「ここまでだな」
「よし、囲め」
「はっ」

 さらに3人が近付いて来た。
 そして、囲まれた。

「じゃあな」

 一人が剣を振り上げた。



 そして。

『ザシュッッ』

 真っ赤な鮮血と共に、腕が宙を舞う。

 正に、花火のような綺麗さだった。


「え?」
「は?」



「ぎゃあぁっ」


 


「グルルルル」

 私の目の前には、銀色のオオカミが立っていた。

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