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華銀、水族館へ ①
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結局彼女は電車に乗っても行き先を教えてくれなかった。
気づくと、かなり中心部まで来ており駅のホームには人が多すぎて酔いそうだった。
駅を出ても人の多さは変わらない。そんな中を彼女はすいすい歩いていくもんだから、後を追うのに必死だった。
「じゃ、そろそろ撮影しようか」
彼女はリュックからソニーのブイログ用カメラを取り出した。
「え、ここで?」
「オープニングだよ。昨日動画見て勉強したんだ」
えらい、とでも言ってほしいのか彼女は僕を見てにんまりしていた。
「はいはい。早く撮ろう」
「ちゃんとやる気出して」
こんな人の多いところで素人が撮影だなんて。周りの視線が気になってしかたがない。
そんなことはおかまいなしに彼女は動画を回し始めた。
「はい! 始まりました。どうも初めまして華銀カップルでーす」
華銀カップル? なんだそれ、とツッコミたかったが撮り直しをしたくなかったので彼女に合わせた。
「どうもー、銀二です。ところで今日はどこに行くんですか?」
「これから私たちは水族館に生きたいと思います!」
ここでやっと行き先がわかった。
「楽しみですね―」
「全然楽しそうじゃないけど。あはははっ!」
何が面白いんだ 。こういう陽キャのテンションについていくのは僕にとってものすごく大変だ。
最後に彼女は「レッツゴー!」と言って動画を止めた。
「こら君、もっと楽しそうにしなきゃだめじゃないか」
「苦手なんだよ、そういうの」
「苦手でもやるの」
「ていうか、華銀カップルって何?」
「え、私たちのチャンネル名だけど?私の名前の華と、君の銀二の銀!」
カップルじゃない……、そう言いかけた時には彼女はすでに歩き出していた。
そしてまた、ずんずんと人込みの中を進んで行った。
必死についてくと、どうやら目的の水族館のついたようだ。
考えてみれば、水族館に来たのは初めてだ。少しわくわくしてきた。
受付で撮影の許可を取り、入場料を払って中に入った。
彼女は早速カメラを回した。
「水族館に到着しましたー」
撮影が始まると僕のテンションも自然に上がっていた。
見たこともない大きな水槽の中で色とりどりの魚たちが優雅に泳いたり、エイがお腹を水槽に着けると顔のように見えたりと、初めてのことだらけで楽しかった。
中でも一番興奮したのは、正面から頭上にかけて大きくオーバーハングした水槽でペンギンたちが泳いでいるのが見えるコーナーだ。
「見て! ペンギン!」
彼女も撮影そっちのけでペンギンに興奮していた。
「君。カメラは持つだけじゃなくてちゃんと映さないと」
「あ、そかそか」
こいつ本当に忘れていやがったな。
「見てください! 百八十度、どこを見てもペンギンさん!」
なんだその説明は。語彙力なさすぎだ。
「ちゃんと説明しなよ」
「文句言うなら君がしてみなよ」
いざやれと言われると確かに難しい。ユーチューバーやタレントのすごさを身を持って知った。
「これはまるで、ペンギンの宝石箱やー」
「何それ? あははははっ!」
うまく言えた気はしないが、彼女のツボには入ったらしい。
「へたくそ! 君も出来ていないじゃないか!」
よほど面白かったのか、彼女は目に涙を浮かべるほど笑っていた。
「……うるせえ」
そんなこんなで撮影をしながら、時にはカメラを止めて鑑賞しながら全部のコーナーを回りきって水族館を出た時にはすっかり日が落ちていた。
気づくと、かなり中心部まで来ており駅のホームには人が多すぎて酔いそうだった。
駅を出ても人の多さは変わらない。そんな中を彼女はすいすい歩いていくもんだから、後を追うのに必死だった。
「じゃ、そろそろ撮影しようか」
彼女はリュックからソニーのブイログ用カメラを取り出した。
「え、ここで?」
「オープニングだよ。昨日動画見て勉強したんだ」
えらい、とでも言ってほしいのか彼女は僕を見てにんまりしていた。
「はいはい。早く撮ろう」
「ちゃんとやる気出して」
こんな人の多いところで素人が撮影だなんて。周りの視線が気になってしかたがない。
そんなことはおかまいなしに彼女は動画を回し始めた。
「はい! 始まりました。どうも初めまして華銀カップルでーす」
華銀カップル? なんだそれ、とツッコミたかったが撮り直しをしたくなかったので彼女に合わせた。
「どうもー、銀二です。ところで今日はどこに行くんですか?」
「これから私たちは水族館に生きたいと思います!」
ここでやっと行き先がわかった。
「楽しみですね―」
「全然楽しそうじゃないけど。あはははっ!」
何が面白いんだ 。こういう陽キャのテンションについていくのは僕にとってものすごく大変だ。
最後に彼女は「レッツゴー!」と言って動画を止めた。
「こら君、もっと楽しそうにしなきゃだめじゃないか」
「苦手なんだよ、そういうの」
「苦手でもやるの」
「ていうか、華銀カップルって何?」
「え、私たちのチャンネル名だけど?私の名前の華と、君の銀二の銀!」
カップルじゃない……、そう言いかけた時には彼女はすでに歩き出していた。
そしてまた、ずんずんと人込みの中を進んで行った。
必死についてくと、どうやら目的の水族館のついたようだ。
考えてみれば、水族館に来たのは初めてだ。少しわくわくしてきた。
受付で撮影の許可を取り、入場料を払って中に入った。
彼女は早速カメラを回した。
「水族館に到着しましたー」
撮影が始まると僕のテンションも自然に上がっていた。
見たこともない大きな水槽の中で色とりどりの魚たちが優雅に泳いたり、エイがお腹を水槽に着けると顔のように見えたりと、初めてのことだらけで楽しかった。
中でも一番興奮したのは、正面から頭上にかけて大きくオーバーハングした水槽でペンギンたちが泳いでいるのが見えるコーナーだ。
「見て! ペンギン!」
彼女も撮影そっちのけでペンギンに興奮していた。
「君。カメラは持つだけじゃなくてちゃんと映さないと」
「あ、そかそか」
こいつ本当に忘れていやがったな。
「見てください! 百八十度、どこを見てもペンギンさん!」
なんだその説明は。語彙力なさすぎだ。
「ちゃんと説明しなよ」
「文句言うなら君がしてみなよ」
いざやれと言われると確かに難しい。ユーチューバーやタレントのすごさを身を持って知った。
「これはまるで、ペンギンの宝石箱やー」
「何それ? あははははっ!」
うまく言えた気はしないが、彼女のツボには入ったらしい。
「へたくそ! 君も出来ていないじゃないか!」
よほど面白かったのか、彼女は目に涙を浮かべるほど笑っていた。
「……うるせえ」
そんなこんなで撮影をしながら、時にはカメラを止めて鑑賞しながら全部のコーナーを回りきって水族館を出た時にはすっかり日が落ちていた。
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