なんて言えたら 良かったのか

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花

「あっ…」

携帯を忘れて、家の鍵を閉めてしまった。朝の1番忙しいときに限って、こんなことをしてしまうなんて…。

「どうかしてる。」

そう呟き、渚は鞄から鍵を取り出した。やれやれ、いつもの電車には乗れなさそうだ。
最近、仕事が忙しくて身体も頭も悲鳴を上げているのかも知れない。でも、通勤拒否することなく出社しているのだから大したものだ。

「さて、大丈夫かな。」
そう言って、渚は駅に向かった。
今日は、なんて蒸し暑い日なんだ。早く冷房の効いた電車に乗りたい。
そう願いながら、ふと道端の木の根本に目が向いた。そこには、小さな白い花が咲いていた。

何だか妙に見覚えがあると思ったら、あの日も一つ見つけたのを思い出した。
渚にとってたわいもない花だったはずなのに、あの日起きた事を思い出してしまう花になるなんて。

あの時は、そんなこと微塵も思わなかった。