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本編【22時投稿】
X『シズク死す?!』
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「え、ちょ、え!?なんでそうなるの!!」
女の子の様子の変わり具合にシズクは辺りを何度も見渡し慌てふためく。
そして、助けを呼ぶかの様に大声で自分の厄災に向け叫んだ。
「何でってあんたが私をここに連れてきたからでしょ!!」
そう言うと、女の子は近くにあったリューの剣を持ち、一心不乱にシズクに向け走り出す。
無論、女の子に剣を向けるわけにもいかない。しかし、そのまま剣を受ける訳にもいかない。
騎士というのは、攻撃力が凄まじく高いが、それと引き換えに防御力が凄まじく低い。
故に、ダメージを与える訳にも受ける訳にもいかないのだ。
人はこの状況を『絶望』と呼ぶ。
「その首もらったああ!!」
「あぁ、私の人生終わっちゃうのかな…リューともっと居たかったな。」
女の子が体の大きさに似つかわしくないリューの剣を振りかぶる。
瞬間、シズクの頭の中は後悔で埋まっていた。
が、女の子に対しての憎しみは一切なかった。
剣先がシズクに向いた時だった。
「うわぁ!!痛っ!!」
シズクの首を切ろうとした瞬間、女の子は地面に倒れていた。
足元を見ればすぐに分かった。
「ん…んにゃんにゃ…。」
シズクの足元には酔い潰れたアイクが寝ていた。
幸運にも今日のアイクは寝相が悪く、テントから転がって出て来た様だ。
「え、ちょ、ま…!私、アイクに救われたの?!」
今、この瞬間。ここにアイクがいなければ死んでいた。そう考える毎に「自分の運に救われた」としみじみと実感する。
が、命を救われただけであって状況に変動はない。
と、思っていた
「痛っ…ゔぅ…。」
女の子は依然、地に這い蹲ったまま立つ
事が出来ない。
両手で足首を押さえて苦しげな顔をしていた。
「だ、大丈夫??」
シズクは自分の内に生まれた『恐怖』を、両手で頬を叩き押さえ込み、女の子に駆け寄った。
瞬間、女の子は条件反射の様に足首を押さえていたはずの手で剣を持ち振り回す。
「近寄るな!お前の助けなんか無くたって…!ーーー痛っ!」
「ほらほら、そこ捻挫してるんじゃない?おんぶしてあげるよ」
足首を痛がる女の子に親切心からか、シズクは何も考えずに近寄る。
結果は容易に想像できた。
ーー右頬から滴る鮮やかな赤色。
振り回す剣が、シズクの右頬を掠ったのだ。
「近寄って来たお前が悪いんだ、本当に当てるとは思ってなかったし…」
女の子は挙動不審ではあったが、自身の犯してしまった事を誤魔化す様に「近寄って来た相手が悪い」と思い込む。
「君、その剣は僕のだから返してくれ」
テントから顔を出し、いつもとは少し異なる声で喋るのはリュー。
リューはシズクが傷つけられているのを知って少し気が立っている様だった。
「お前も近くならき、切るぞ…!!」
女の子は依然、態度を変える事なくリューにも剣を向ける。
が、その剣先は震えていた。
「切ってみなよ。ほら?ここ切ってみなよ」
剣の迷い。それは戦場では命取りとなる事。
幾度となく戦場へ駆り立てられて来たリュー達なら誰でも分かる事だった。
それを知っての事か、リューは女の子を煽る様に首を指差し睨みつける。
「ーーーー」
「切れないよね?君には切れないんだよ。君には決定的に欠損しているものがあるからね。」
女の子の答えは沈黙。それは「ノー」を意味する。
ーーそれを見たリューは先程までとは一転、優しげな顔つきに変わり、女の子の持つ剣を取り鞘にしまう。
「私に、足りないもの…?」
「そうだね。君に足りないのは経験だ。君はまだ幼い。故に人を殺めた事も無いだろう。殺める事はとても怖いだろ?」
女の子が恐る恐る聞くとリューは決定的に足りない事を優しく教えてくれた。
そう女の子が決定的に欠損していたのは、人を殺めた事があるかないかという『経験』だった。
「とても怖い。けどこの世界でそんな答えが出るとは思わなかったな」
女の子の発した言葉は一同を呆然とさせた。
女の子の様子の変わり具合にシズクは辺りを何度も見渡し慌てふためく。
そして、助けを呼ぶかの様に大声で自分の厄災に向け叫んだ。
「何でってあんたが私をここに連れてきたからでしょ!!」
そう言うと、女の子は近くにあったリューの剣を持ち、一心不乱にシズクに向け走り出す。
無論、女の子に剣を向けるわけにもいかない。しかし、そのまま剣を受ける訳にもいかない。
騎士というのは、攻撃力が凄まじく高いが、それと引き換えに防御力が凄まじく低い。
故に、ダメージを与える訳にも受ける訳にもいかないのだ。
人はこの状況を『絶望』と呼ぶ。
「その首もらったああ!!」
「あぁ、私の人生終わっちゃうのかな…リューともっと居たかったな。」
女の子が体の大きさに似つかわしくないリューの剣を振りかぶる。
瞬間、シズクの頭の中は後悔で埋まっていた。
が、女の子に対しての憎しみは一切なかった。
剣先がシズクに向いた時だった。
「うわぁ!!痛っ!!」
シズクの首を切ろうとした瞬間、女の子は地面に倒れていた。
足元を見ればすぐに分かった。
「ん…んにゃんにゃ…。」
シズクの足元には酔い潰れたアイクが寝ていた。
幸運にも今日のアイクは寝相が悪く、テントから転がって出て来た様だ。
「え、ちょ、ま…!私、アイクに救われたの?!」
今、この瞬間。ここにアイクがいなければ死んでいた。そう考える毎に「自分の運に救われた」としみじみと実感する。
が、命を救われただけであって状況に変動はない。
と、思っていた
「痛っ…ゔぅ…。」
女の子は依然、地に這い蹲ったまま立つ
事が出来ない。
両手で足首を押さえて苦しげな顔をしていた。
「だ、大丈夫??」
シズクは自分の内に生まれた『恐怖』を、両手で頬を叩き押さえ込み、女の子に駆け寄った。
瞬間、女の子は条件反射の様に足首を押さえていたはずの手で剣を持ち振り回す。
「近寄るな!お前の助けなんか無くたって…!ーーー痛っ!」
「ほらほら、そこ捻挫してるんじゃない?おんぶしてあげるよ」
足首を痛がる女の子に親切心からか、シズクは何も考えずに近寄る。
結果は容易に想像できた。
ーー右頬から滴る鮮やかな赤色。
振り回す剣が、シズクの右頬を掠ったのだ。
「近寄って来たお前が悪いんだ、本当に当てるとは思ってなかったし…」
女の子は挙動不審ではあったが、自身の犯してしまった事を誤魔化す様に「近寄って来た相手が悪い」と思い込む。
「君、その剣は僕のだから返してくれ」
テントから顔を出し、いつもとは少し異なる声で喋るのはリュー。
リューはシズクが傷つけられているのを知って少し気が立っている様だった。
「お前も近くならき、切るぞ…!!」
女の子は依然、態度を変える事なくリューにも剣を向ける。
が、その剣先は震えていた。
「切ってみなよ。ほら?ここ切ってみなよ」
剣の迷い。それは戦場では命取りとなる事。
幾度となく戦場へ駆り立てられて来たリュー達なら誰でも分かる事だった。
それを知っての事か、リューは女の子を煽る様に首を指差し睨みつける。
「ーーーー」
「切れないよね?君には切れないんだよ。君には決定的に欠損しているものがあるからね。」
女の子の答えは沈黙。それは「ノー」を意味する。
ーーそれを見たリューは先程までとは一転、優しげな顔つきに変わり、女の子の持つ剣を取り鞘にしまう。
「私に、足りないもの…?」
「そうだね。君に足りないのは経験だ。君はまだ幼い。故に人を殺めた事も無いだろう。殺める事はとても怖いだろ?」
女の子が恐る恐る聞くとリューは決定的に足りない事を優しく教えてくれた。
そう女の子が決定的に欠損していたのは、人を殺めた事があるかないかという『経験』だった。
「とても怖い。けどこの世界でそんな答えが出るとは思わなかったな」
女の子の発した言葉は一同を呆然とさせた。
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