120 / 138
3rd STAGE はぐれエルフと魔蟲軍団
Data.111 エリファレス・フィルアルス
しおりを挟む
◆現在地
エルフの里フィルアルス
変わり映えしない景色が続く森の中から一変、明らかに人工的に作られた風景が目の前に広がっている。
舗装された道、美しい花の咲く花壇、畑……などなどの中でも特徴的なのは建物だ。太い木の幹の中に部屋を作ってそこに住んでいるみたい。パッと見ただの木でも窓や扉がついていてまるでおとぎ話の世界のよう。
ただ、あまり活気というか人の気配がないなぁ……。
「変わらないものね、この里も」
「いつもこんな人がいないんですか?」
「変わらないのは景色のことよ。普段はもっとエルフで溢れてるはずなんだけど緊急事態だからみんな避難してるんじゃないかしら? どうなのよサブリナ……いい加減正気に戻って」
未だ混乱しているサブリナをシュリンさんがペチペチと叩く。
するとぶるっと震えた後、サブリナの目に光が戻ってきた。
「はっ、はい! みんな自分の家に引きこもっているか、エリファレス様のもとに……。あと戦える者は戦いに……」
「へぇ、じゃあ私もエリファレスのところに……」
「その必要はありませんよ」
成熟した女性の声がシュリンさんの言葉を遮った。
「……あらあら、ちゃんとお迎えが来たじゃない。ご丁寧に車イスまで持って」
「自分の結界は自分の体のようなもの。誰が入ってきたのか、私ほどの者になればわかります。特にシュリンのことはハッキリと」
「衰えてはいないみたいじゃないのエリファレス・フィルアルス。疲れてはいるみたいだけど」
エリファレスと呼ばれた女性は銀色でウェーブのかかった長い髪に白くゆったりとした服を着ていて、いたるところに装飾品をつけている。何かの儀式でも行いそうな雰囲気だ。
微笑みを絶やさない顔は美しさとかわいさ、母性と幼さをあわせ持っていて誰もが見惚れてしまいそう。
でも、シュリンさんの言うとおり疲れも感じ取れる。元気な時に会っていれば本当に見惚れていたと思うけど、今は目の下のクマや頬がややこけているのが気になる。
「疲れてる……なんてみんなの前では言えませんけど、シュリンに嘘はつきません。私もやはり衰えているのです。急造の結界を維持するのはそろそろ限界。シュリンが来てくれて私も里のみんなも救われました」
「それはわざわざ無理して来た甲斐があるわ。背負ってきてくれたアチルにも感謝しなさい」
エリファレスさんの視線がこちらに向く。
め、目を合わせられると緊張するなぁ……。
「あなたは……人間の女の子かしら? どうしてシュリンに良くしてくれるのかは知らないけど、ありがとうね。私はこの里の長のエリファレスという者です。長と言っても何か偉いことをしたわけでもなく、ただ親から継いだだけだから普通に女の子として接してくれていいのよ。ってば、私はもう『女の子』じゃないわよね」
エリファレスさんは『てへっ』という表情を作る。
「そんな、エリファレスさんはとってもお若いじゃないですか」
「えっ! ホント? いや全然若くないよ。もうアチルちゃんみたいなぴちぴちの人間の女の子からすれば私なんてもうすごいおばあちゃんなの。うんうん、若い子にはもう勝てないわぁ……。気を遣わせちゃってごめんね」
「いえいえ、気を遣ってるなんて全然。お綺麗ですよ」
「ええーっ、そんないいのよいいのよ。アチルちゃんは優しい子ねぇ~」
エリファさんがずいっと私の近くまで来ると、両手で頬に触れてきた。
「んうぅ~お肌すべすべ~、ほっぺたぷにぷに~、あぁ~そばに置いておきたいかわいさ~」
なんだろう……反応はすごくおばさん臭い……。
「はいはい、それくらいにしなさいよエリファ。十分リラックスできたでしょ」
「全然足りな~い。アチルちゃんぎゅ~!」
私を抱きしめるエリファさん。甘い香水の匂いがする。
「ああっ、いいなぁ……」
エリファさんの登場にまた固まっていたサブリナが羨ましそうにこちらを見てくる。
「そうね、サブリナもぎゅ~! 良く頑張ってくれたわね……よしよし」
「あ、あう……サブリナ様……っ。やっぱり外の世界は怖いです……うぅ……」
「あらあら、いつものあなたはどこにいったの? あんなに外の世界を旅してみたいって言ってたじゃないの。ダメよ、簡単に諦めちゃ。いずれあなたには……まあ、今はゆっくりお休みなさい」
「残念ながら休んでいる場合じゃないわ。エリファは私と結界の修復、サブリナはアチルを敵のいるところに連れていってあげて。まだ頑張れるわよね、サブリナ?」
「はい……ぐすっ……まだ頑張れます」
「アチル、他のエルフはエリファほど余所者に優しくないわ。何言っても無駄だから実力で黙らせなさい。あなたの戦いを邪魔してくるようなら殺さない程度にぶん殴っても構わないわ」
「そんなこと言っちゃダメよシュリン……。保守派がまた騒ぎだしちゃう」
「人間がここにいる時点で騒ぐわよ。抑え込む言い訳をせいぜい考えておくことね。あっ、アチルは気にせず戦ってくれればいいから。このおばさんが何とかするからね」
「おばさんって言わないで!」
本気の怒りをあらわにしたエリファさんに車イスを押され、シュリンさんはどこかに消えていった。
自分で言うのはいいけど人に言われるのはダメなのね……。
「……ふぅ、はぁ、うん。少し落ち着いたから敵のいる場所に案内するわ。私がこの里を出る前からある区画の結界を強いモンスターが攻撃してて、追い払えはするんだけど倒せないからなかなか敵が減らないのよね……。だから……そのぉ……」
「うんうん、私に任せて。サブリナは戦わなくていいんだよ」
「なっ! さっきはビックリして戦えなかっただけで私は勇敢な戦士なのよ! そんな余所者だけに戦いを任せるなんてプライドが許さない!」
「そうそう、その調子。サブリナはこうでなくっちゃ」
「なに親友面してるのよ! 私のことがわかったつもり!? そんな簡単に底が見える薄っぺらい女じゃないわ!」
「私はただ元気なサブリナが一番だなって思っただけだよ」
「うっ、それは……そうかもね。そこは認めてあげるわ! あ、あと強いことも認めてあげる……。さっきは虫を倒してくれてありがとう……」
「んー? 最後の方が聞き取れなかったなぁ? もう一回言って!」
「二度も言うかこんなこと! さあ移動するわよ! ついて来なさい!」
駆け出したサブリナの後を追い里の中を駆け抜ける。
ときおり建物や物陰から視線を感じた。悪意とまでは言わないけどトゲトゲしいものが私に向けられていると勘でわかった。
シュリンさんの言ってたことが今更ながら気になってきた。
……この拳は敵を倒すためのものだから出来ればエルフの里の人たちは殴りたくないなぁ。
エルフの里フィルアルス
変わり映えしない景色が続く森の中から一変、明らかに人工的に作られた風景が目の前に広がっている。
舗装された道、美しい花の咲く花壇、畑……などなどの中でも特徴的なのは建物だ。太い木の幹の中に部屋を作ってそこに住んでいるみたい。パッと見ただの木でも窓や扉がついていてまるでおとぎ話の世界のよう。
ただ、あまり活気というか人の気配がないなぁ……。
「変わらないものね、この里も」
「いつもこんな人がいないんですか?」
「変わらないのは景色のことよ。普段はもっとエルフで溢れてるはずなんだけど緊急事態だからみんな避難してるんじゃないかしら? どうなのよサブリナ……いい加減正気に戻って」
未だ混乱しているサブリナをシュリンさんがペチペチと叩く。
するとぶるっと震えた後、サブリナの目に光が戻ってきた。
「はっ、はい! みんな自分の家に引きこもっているか、エリファレス様のもとに……。あと戦える者は戦いに……」
「へぇ、じゃあ私もエリファレスのところに……」
「その必要はありませんよ」
成熟した女性の声がシュリンさんの言葉を遮った。
「……あらあら、ちゃんとお迎えが来たじゃない。ご丁寧に車イスまで持って」
「自分の結界は自分の体のようなもの。誰が入ってきたのか、私ほどの者になればわかります。特にシュリンのことはハッキリと」
「衰えてはいないみたいじゃないのエリファレス・フィルアルス。疲れてはいるみたいだけど」
エリファレスと呼ばれた女性は銀色でウェーブのかかった長い髪に白くゆったりとした服を着ていて、いたるところに装飾品をつけている。何かの儀式でも行いそうな雰囲気だ。
微笑みを絶やさない顔は美しさとかわいさ、母性と幼さをあわせ持っていて誰もが見惚れてしまいそう。
でも、シュリンさんの言うとおり疲れも感じ取れる。元気な時に会っていれば本当に見惚れていたと思うけど、今は目の下のクマや頬がややこけているのが気になる。
「疲れてる……なんてみんなの前では言えませんけど、シュリンに嘘はつきません。私もやはり衰えているのです。急造の結界を維持するのはそろそろ限界。シュリンが来てくれて私も里のみんなも救われました」
「それはわざわざ無理して来た甲斐があるわ。背負ってきてくれたアチルにも感謝しなさい」
エリファレスさんの視線がこちらに向く。
め、目を合わせられると緊張するなぁ……。
「あなたは……人間の女の子かしら? どうしてシュリンに良くしてくれるのかは知らないけど、ありがとうね。私はこの里の長のエリファレスという者です。長と言っても何か偉いことをしたわけでもなく、ただ親から継いだだけだから普通に女の子として接してくれていいのよ。ってば、私はもう『女の子』じゃないわよね」
エリファレスさんは『てへっ』という表情を作る。
「そんな、エリファレスさんはとってもお若いじゃないですか」
「えっ! ホント? いや全然若くないよ。もうアチルちゃんみたいなぴちぴちの人間の女の子からすれば私なんてもうすごいおばあちゃんなの。うんうん、若い子にはもう勝てないわぁ……。気を遣わせちゃってごめんね」
「いえいえ、気を遣ってるなんて全然。お綺麗ですよ」
「ええーっ、そんないいのよいいのよ。アチルちゃんは優しい子ねぇ~」
エリファさんがずいっと私の近くまで来ると、両手で頬に触れてきた。
「んうぅ~お肌すべすべ~、ほっぺたぷにぷに~、あぁ~そばに置いておきたいかわいさ~」
なんだろう……反応はすごくおばさん臭い……。
「はいはい、それくらいにしなさいよエリファ。十分リラックスできたでしょ」
「全然足りな~い。アチルちゃんぎゅ~!」
私を抱きしめるエリファさん。甘い香水の匂いがする。
「ああっ、いいなぁ……」
エリファさんの登場にまた固まっていたサブリナが羨ましそうにこちらを見てくる。
「そうね、サブリナもぎゅ~! 良く頑張ってくれたわね……よしよし」
「あ、あう……サブリナ様……っ。やっぱり外の世界は怖いです……うぅ……」
「あらあら、いつものあなたはどこにいったの? あんなに外の世界を旅してみたいって言ってたじゃないの。ダメよ、簡単に諦めちゃ。いずれあなたには……まあ、今はゆっくりお休みなさい」
「残念ながら休んでいる場合じゃないわ。エリファは私と結界の修復、サブリナはアチルを敵のいるところに連れていってあげて。まだ頑張れるわよね、サブリナ?」
「はい……ぐすっ……まだ頑張れます」
「アチル、他のエルフはエリファほど余所者に優しくないわ。何言っても無駄だから実力で黙らせなさい。あなたの戦いを邪魔してくるようなら殺さない程度にぶん殴っても構わないわ」
「そんなこと言っちゃダメよシュリン……。保守派がまた騒ぎだしちゃう」
「人間がここにいる時点で騒ぐわよ。抑え込む言い訳をせいぜい考えておくことね。あっ、アチルは気にせず戦ってくれればいいから。このおばさんが何とかするからね」
「おばさんって言わないで!」
本気の怒りをあらわにしたエリファさんに車イスを押され、シュリンさんはどこかに消えていった。
自分で言うのはいいけど人に言われるのはダメなのね……。
「……ふぅ、はぁ、うん。少し落ち着いたから敵のいる場所に案内するわ。私がこの里を出る前からある区画の結界を強いモンスターが攻撃してて、追い払えはするんだけど倒せないからなかなか敵が減らないのよね……。だから……そのぉ……」
「うんうん、私に任せて。サブリナは戦わなくていいんだよ」
「なっ! さっきはビックリして戦えなかっただけで私は勇敢な戦士なのよ! そんな余所者だけに戦いを任せるなんてプライドが許さない!」
「そうそう、その調子。サブリナはこうでなくっちゃ」
「なに親友面してるのよ! 私のことがわかったつもり!? そんな簡単に底が見える薄っぺらい女じゃないわ!」
「私はただ元気なサブリナが一番だなって思っただけだよ」
「うっ、それは……そうかもね。そこは認めてあげるわ! あ、あと強いことも認めてあげる……。さっきは虫を倒してくれてありがとう……」
「んー? 最後の方が聞き取れなかったなぁ? もう一回言って!」
「二度も言うかこんなこと! さあ移動するわよ! ついて来なさい!」
駆け出したサブリナの後を追い里の中を駆け抜ける。
ときおり建物や物陰から視線を感じた。悪意とまでは言わないけどトゲトゲしいものが私に向けられていると勘でわかった。
シュリンさんの言ってたことが今更ながら気になってきた。
……この拳は敵を倒すためのものだから出来ればエルフの里の人たちは殴りたくないなぁ。
1
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~
TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ!
東京五輪応援します!
色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる