イカロスの探求者

多田羅 和成

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異端な医者10

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「ありがとう。ありがとう。助かったよ。ここから先は男性禁制だから、ローちゃんのお世話でもしてくれたら助かる。では、ベルちゃん行こか」

 ソフィアはベルを抱えて、女性用のテントの中へと入っていく。心配そうにしているルフを見てローは近づいていく。

「大丈夫だよ。ソフィアくんは態度は軽いけど、医療の腕は確かだから」

「ありがとう。ローだっけ? ソフィアとは姉弟なのかな」

「ううん、違うよ。ぼく捨て子でソフィアちゃんに拾われたんだ。今はソフィアちゃんの元で医者の勉強をしながら、助手してる」

「そうなんだ。偉いね」

 ローの気遣いに心が落ち着いたのかルフは漸く笑うことが出来た。その様子を見て、アランは安心をしいつもよりも多い量の料理の準備へと取り掛かる。その間、ルフは言われた通りにロンと座ってお話をしていた。

「そういえばルフくん達はどうして旅をしているの?」

「うーん、信じてくれるか分からないけど、俺達は太陽を探しているんだ」

「太陽!」

「ローは何か知っているのか?」

「うん、聞いたことあるよ。どこかの場所で太陽と月が存在するっておとぎ話を覚えているんだ」

「太陽と月?」

 太陽と聞いて大きな目を輝かせたローに自分達以外にも太陽を知る存在がいるのかと思いながら聞いていたが、ローから知らない単語が出てきたので、ルフは聞き返した。

「うん。おとぎ話によれば今は夜で、本来は月が空に昇っているんだって。で、朝になれば太陽が昇ってくるんだ。でも、この世界には太陽も月もない。だから、きっとおとぎ話に世界だけなんだと思った」

「その話は誰から聞いたんだ」

「忘れちゃった。ごめんね」

 ルフは誰からの話か気になって聞いたが、ローは小さな頃に聞いたのだろう。忘れたと言われて深追いはせず、ありがとうと言えばローは嬉しそうに笑った。

 ここでまたルフの中に謎が浮かんだ。1つは太陽と月は一体どこに消えてしまったのか。神の使者は盗まれたと言ったが、空にあるものをどうやって盗んだのか。そして、もう一つ神の使者以外にも太陽について知る者がいるということ。誰かが分かれば、太陽探しへのヒントを得られそうだが、これはまだ見つけれていないから、今は無理だろう。何故空は星だけしか存在しないのか。空を見上げても答えは出ない。
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