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【後日談】暴君は恋人を大事にしたい1
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オレとマクシミリアンさまがおつきあいを始めて半月が経った。
おつきあい当初、なぜかオレだけが大興奮大喜び狂喜乱舞してて、アラステアくんとバイロンくんは全く驚きもしないであたりまえみたいに後方腕組み両親面してくるし、レイくんはこの話題には返事もしてくれないし、マクシミリアンさまもいつも通りどっしりかまえててオレとの温度差すごいし、なんだか世界中から裏切られた気分になった。
でも、マクシミリアンさまも実はけっこう浮かれてるってつい最近わかってきた。
学院の中庭は花卉もキレイだけど、なにより広々した芝生がすごい。実は専属の庭師までいるらしい。そのだだっ広い青い芝生の上に寝転がって日向ぼっこするのが最高にきもちいい。
前期の各課試験がやっと終わって、中庭にはオレ以外にもちらほらお茶したり飯食ったりしてる人がいる。オレもはりきりまくった試験勉強を全力でやりとげて、めちゃくちゃ気分がふわふわしてる。芝生のにおいをめいっぱい吸いこんで目をとじると、そっこう眠れそうだ。大の字で思う存分のびをする。
「クリフトン君、今少しいいかな?」
うとうとしてたら、知らない声に呼ばれた。陽気でぽかぽかしたまぶたをあけると、うっすら、記憶のすみっこに、いるようないないような、同じ篤学科、ではないな、たぶん、うーん、もしかしたら、普通科の生徒かなあってくらい顔に覚えのない男子生徒が三人いて、仰向けに転がってるオレをのぞきこんでた。
「なに?」
「俺たちこれから今日のテストの自己採点するんだけど、クリフトン君も一緒にどうかな?」
「クリフトン君頭良いから、一緒にやってもらえたら助かる」
「今なら食堂が空いてるからそこに行こうよ」
オレはもうぜんぶ自己採点やっちゃったんだけど、今日の分つきあうくらいならすぐ終わるだろうしどうしようか、と「うーん」とうなりながら悩む。
男子生徒のうち一人がしゃがみこんでオレと目線を合わせてから「俺ら頭悪いから困ってるんだよね」と、ほんとに困ってる顔をした。たしかに一人くらい、ある程度正答をだせてるやつがいる方が進みがいいもんな。
「ちょっとだけならいいよ」
オレがうなづくと三人は口々に礼を言いながらオレの手や肩をひっぱって立たせると、食堂のある別棟の方へオレの背中を押す。強引さに少しむっとするけど、オレがそれに抗議する前に背後から「おい」と聞き慣れた不機嫌そうな重低音がわりこんできた。
「どこに行く気だ」
ふり返ると、眦をつりあげて眉間にしわを寄せた雄偉な長身がいた。思ってたよりずっと早く会えて嬉しい。
「あれ。マクシミリアンさまもう用事おわったんですか?」
マクシミリアンさまは一瞬オレと目が合わせたあと、オレの背中と肩と腕に触れてる男子生徒たちの手を順繰りににらんだ。
「俺のもんに触んじゃねえよ」
そのひと言ではじかれるようにぜんぶの手が離れて、三人が面白いほどおどおどと距離をとってく。
本気だしたらマクシミリアンさまって目から光線だせそうだよな。光線で無双するマクシミリアンさま、かっこよすぎるだろ。よだれでそう。
オレがそんな妄想でうっとりしてたら、マクシミリアンさまがオレの二の腕をでっかい手で雑にわしづかんで引きよせた。
「お前ら、次こいつに話し掛けたら半殺しな」
すんごい横暴だ。ただ勉強に誘われただけだよ、って弁明してあげることはできるけど、そんなんでマクシミリアンさまは機嫌なおさないからなあ。男子生徒たちはなにか言おうとおそるおそる口をひらいたけど、「文句あんのか?」とマクシミリアンさまがすごむと、そろって苦い顔をして押し黙った。
男子生徒たちがすごすごと別棟の方へ歩いてくのを確認したマクシミリアンさまは、腹立たしそうに鼻をならすと、オレをつかんだまま無言できびすを返した。
ずんずん大股で歩くマクシミリアンさまにされるがまま、オレは木立と学舎の間にひっぱりこまれる。
「マクシミリアンさま」
オレを学舎の壁に押しつけたマクシミリアンさまの顔を見上げる。昼下がりの陽光に照らされて、オレの大好きな薔薇色がめらめら揺れてる。
はたから見たらまるで恫喝現場だけど、オレの顔はもう見るにたえないくらいヤニさがってることだろう。
「何笑ってんだよ」
「だって、俺のもんって言ってくれたから」
マクシミリアンさまの眉根がよって、大きな舌打ち。ついさっき荒っぽい悪態をついてたその口で、優しく優しく食むようなキスをしてくれる。嬉しくて気持ちよくて、背骨がぴりぴりしびれる。
「俺のもんなんだから大事にしろ」
「大事にしてますよ」
「バカ。知らねえ奴についてくんじゃねえよ」
唇同士がかする距離で、マクシミリアンさまが文句を言う。すごくかっこいいのにかわいい。たまらずオレからも触れるだけのやわっこいちゅーをする。
「あれはオレに興味があるんじゃなくて、ウワサが気になってるだけですって」
食堂でのオレたちの交際成立騒動は、実際に目撃した人間以外からは与太話扱いされてるらしくて、いまだに全然顔見知りじゃない人から「あの暴君と付き合ってるって本当?」って世間話のノリでよく聞かれる。別にそれはいいんだ。だいたいそのやりとりのあとは友達になるし、なぜかやたら労われるし。
おつきあい当初、なぜかオレだけが大興奮大喜び狂喜乱舞してて、アラステアくんとバイロンくんは全く驚きもしないであたりまえみたいに後方腕組み両親面してくるし、レイくんはこの話題には返事もしてくれないし、マクシミリアンさまもいつも通りどっしりかまえててオレとの温度差すごいし、なんだか世界中から裏切られた気分になった。
でも、マクシミリアンさまも実はけっこう浮かれてるってつい最近わかってきた。
学院の中庭は花卉もキレイだけど、なにより広々した芝生がすごい。実は専属の庭師までいるらしい。そのだだっ広い青い芝生の上に寝転がって日向ぼっこするのが最高にきもちいい。
前期の各課試験がやっと終わって、中庭にはオレ以外にもちらほらお茶したり飯食ったりしてる人がいる。オレもはりきりまくった試験勉強を全力でやりとげて、めちゃくちゃ気分がふわふわしてる。芝生のにおいをめいっぱい吸いこんで目をとじると、そっこう眠れそうだ。大の字で思う存分のびをする。
「クリフトン君、今少しいいかな?」
うとうとしてたら、知らない声に呼ばれた。陽気でぽかぽかしたまぶたをあけると、うっすら、記憶のすみっこに、いるようないないような、同じ篤学科、ではないな、たぶん、うーん、もしかしたら、普通科の生徒かなあってくらい顔に覚えのない男子生徒が三人いて、仰向けに転がってるオレをのぞきこんでた。
「なに?」
「俺たちこれから今日のテストの自己採点するんだけど、クリフトン君も一緒にどうかな?」
「クリフトン君頭良いから、一緒にやってもらえたら助かる」
「今なら食堂が空いてるからそこに行こうよ」
オレはもうぜんぶ自己採点やっちゃったんだけど、今日の分つきあうくらいならすぐ終わるだろうしどうしようか、と「うーん」とうなりながら悩む。
男子生徒のうち一人がしゃがみこんでオレと目線を合わせてから「俺ら頭悪いから困ってるんだよね」と、ほんとに困ってる顔をした。たしかに一人くらい、ある程度正答をだせてるやつがいる方が進みがいいもんな。
「ちょっとだけならいいよ」
オレがうなづくと三人は口々に礼を言いながらオレの手や肩をひっぱって立たせると、食堂のある別棟の方へオレの背中を押す。強引さに少しむっとするけど、オレがそれに抗議する前に背後から「おい」と聞き慣れた不機嫌そうな重低音がわりこんできた。
「どこに行く気だ」
ふり返ると、眦をつりあげて眉間にしわを寄せた雄偉な長身がいた。思ってたよりずっと早く会えて嬉しい。
「あれ。マクシミリアンさまもう用事おわったんですか?」
マクシミリアンさまは一瞬オレと目が合わせたあと、オレの背中と肩と腕に触れてる男子生徒たちの手を順繰りににらんだ。
「俺のもんに触んじゃねえよ」
そのひと言ではじかれるようにぜんぶの手が離れて、三人が面白いほどおどおどと距離をとってく。
本気だしたらマクシミリアンさまって目から光線だせそうだよな。光線で無双するマクシミリアンさま、かっこよすぎるだろ。よだれでそう。
オレがそんな妄想でうっとりしてたら、マクシミリアンさまがオレの二の腕をでっかい手で雑にわしづかんで引きよせた。
「お前ら、次こいつに話し掛けたら半殺しな」
すんごい横暴だ。ただ勉強に誘われただけだよ、って弁明してあげることはできるけど、そんなんでマクシミリアンさまは機嫌なおさないからなあ。男子生徒たちはなにか言おうとおそるおそる口をひらいたけど、「文句あんのか?」とマクシミリアンさまがすごむと、そろって苦い顔をして押し黙った。
男子生徒たちがすごすごと別棟の方へ歩いてくのを確認したマクシミリアンさまは、腹立たしそうに鼻をならすと、オレをつかんだまま無言できびすを返した。
ずんずん大股で歩くマクシミリアンさまにされるがまま、オレは木立と学舎の間にひっぱりこまれる。
「マクシミリアンさま」
オレを学舎の壁に押しつけたマクシミリアンさまの顔を見上げる。昼下がりの陽光に照らされて、オレの大好きな薔薇色がめらめら揺れてる。
はたから見たらまるで恫喝現場だけど、オレの顔はもう見るにたえないくらいヤニさがってることだろう。
「何笑ってんだよ」
「だって、俺のもんって言ってくれたから」
マクシミリアンさまの眉根がよって、大きな舌打ち。ついさっき荒っぽい悪態をついてたその口で、優しく優しく食むようなキスをしてくれる。嬉しくて気持ちよくて、背骨がぴりぴりしびれる。
「俺のもんなんだから大事にしろ」
「大事にしてますよ」
「バカ。知らねえ奴についてくんじゃねえよ」
唇同士がかする距離で、マクシミリアンさまが文句を言う。すごくかっこいいのにかわいい。たまらずオレからも触れるだけのやわっこいちゅーをする。
「あれはオレに興味があるんじゃなくて、ウワサが気になってるだけですって」
食堂でのオレたちの交際成立騒動は、実際に目撃した人間以外からは与太話扱いされてるらしくて、いまだに全然顔見知りじゃない人から「あの暴君と付き合ってるって本当?」って世間話のノリでよく聞かれる。別にそれはいいんだ。だいたいそのやりとりのあとは友達になるし、なぜかやたら労われるし。
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