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静岡編

昔話 2

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 名前はリコ、クラスでも人気者だったが恵子と言う女の子に女子
全員からシカトすると言う虐めが流行っていた、こういったいじめ
は誰かを特定とする事が多いがイジメは時を経て移り変わる、人も
代わりまたそれがループする、その時期がリコだったらしい、時が
くれば解決するのだろうがいじめられた当人の時の感じ方は違う、
1日が長く、またループしたとて自分以外の友人も信じられなくな
る最低のイジメだ、さぞ辛かっただろう

 ある授業の最中、廊下に置いてあるバケツをスクっと立ち上がり
何をするか皆わからずジッと見ていた、それをおもむろにリコにか
けたという、当然、服もずぶ濡れ、周りのクラスメートにも水が飛
び散り床一面びしょ濡れとなったそうだ。

ハクは一言「お前ウザい」と呟いたそうだ……
 その女子は泣きながら先生に連れられて行った、大野はどうやら
リコが好きだったようでそれから虐めが始まったらしい。

ーーハクは何故そんな事をしたのかーー
 大野達は大野達の正義感から始まった虐めなのだろう、しかし多
勢に無勢もある、だからと言って虐めが成立する事は俺は容認は出
来ない、しかし、その事件は俺も目の前で見る事となる。

 3時間目国語の授業中の出来事だった。俺も気にはなって居たが
クラスメイトの大柳の顔色が優れない様だ。
晴「おい大丈夫か、気持ち悪いなら保健室行った方が良いぞ」
大柳「……」
声を掛けるも返事がない……
俺は先生に言った。
「先生!大柳君が体調悪いみたいだから保健室連れて行っていいで
すか?」
先生「大柳君、そうなの?晴君に保健室連れて行って貰いなさい」
 晴は立ち上がり大柳の腕を掴み立ち上がらせようとするも大柳は
頑なに何故か立たない。
晴「大柳?どうした?」
大柳「うぅ……」何故か泣き出す大柳に俺は困惑した。
晴はオロオロとするばかり、するとハクが大野の机の前にやってき
た嫌な予感しかしない。
先生「ハク君!席戻りなさい!」
ハク「……」
ハクは無言で大野のカバンの中をまさぐり出したのだった。
大野「おいテメェ!何すんだ!やめろよ!」
 無視してカバンを物色する、と、中から学校で禁止されている
カッコつけの定番、香水を取り出した、先生も慌ててハクの行為を
止めようとするも先生の腕を振り払い、教室を出て行ったが、どう
やら、またあの事件の再来らしくバケツを持ってきた、そのバケツ
には水は香水入りらしく、かなり匂いがキツい、すると大柳の頭に
水をまたかけたのだった、そして大柳は泣き出した。

 クラスはパニックとなり、教室に強烈な匂いが教室中に立ち込め
る、まぁ香水なので水で薄まった事もあり、そこそこいい匂いが充
満したという表現の方が正しいだろう、先生もハクを止めようとす
るが、静止を振り切り、丁寧にバケツの水を汲みに行き二発目の発
射、よもや俺もハクの行動の逸脱に思わず手が出た、殴り飛ばすも
ハクは殴り返す事はなかった……辺りはもう水浸しだ。

 授業は一時止まり、ハクは親の呼び出しを喰らいこっぴどく叱ら
れた様だった、ハクは『危ないヤツ』として周りに認識を強める事
となる。

 ある日、下校途中にクラスの男子が6年生に絡まれているのを見
た俺はすぐ様駆けつけた、だが前にハクがソレを見ていた、俺は思
わず立ち止まってしまった、するとハクはおもむろに小石を6年生
に向かって投げつけた。

晴「アイツ何してんだ!」
 思わず声が出た、当然6年生は怒り、ハクを当然追いかけたが、
ハクの身軽さは半端ない、俺もその後を追った、門に手を掛けヒラ
リと飛び越える、もたつきながらも6年生も遅れ乗り越えハクを懸
命追う、まるで刑事物のドラマだ。
晴「あ、その道は行き止まりだ!」
そうハクが逃げた道は、袋小路である。
6年「てめぇ!前にも同じこと俺達にしただろ、今日こそは逃がさ
ねぇし許さねぇぞ!」
吠える6年生に対しハクは無表情……

 突然舌を出したハクに6年生が怒り襲いかかった、袋小路の壁は
家の塀だ高さは2メートルにもなるも、空手で言う三角跳びの様に
スルッと壁越えを見せるハク。
晴「お!やるなぁ!ジャッ○ー映画で見たヤツだ!」
 流石に6年生もその壁は越えられず、散々暴言を吐き散らしたが
諦めたようだ。
その時6年生の後ろに居た俺が彼等に見つかってしまう。
6年「おいお前、何見てんだ、お前アイツの仲間か、代わりにお前
が罰を受けろや」
 そう言い放ち近寄る6年生、当然ガタイが大きい上に虐める奴ら
だ腕っぷしには自信がありげだった。
晴(相手は3人か……)
 いくら晴が年齢よりは大柄で空手をやってるといえど多勢に無勢
殴られるのを覚悟した……が晴も負けん気は強い、虐めをしている奴
らなら尚更引く気はなかった。
「丁度良い、俺のクラスのヤツ虐めてたろ、俺がお前らをやっつけ
てやる」
睨み合う子供達
晴「……」
6年「……この人数に勝てるとでも思ってやがるか」
晴「……勝てなくても負けない!」
「負け……ん?」
何やら背後から強烈な匂いが漂って来る。
晴「くっさ!この匂いは……まさしく」
 六年生が後退りするのを見て晴は背後を振り返ると其処には逃げ
た筈のハクが立っていた。
匂いの元はこれかとーー
 その正体は使い捨て手袋を纏ったハクの手には、握り潰され異臭
を放ちまくるお犬様のウンコだった、両手にしっかり握り潰された
ウンコの匂いは怒りをすっ飛ばす、6年生もその匂いに堪らず後退
りする、一歩進めばハクは二歩進む、目の前まで来たウンコの塊に
「クソ!覚えてろよ!」
 まさに言葉も現実もクソまみれに耐えれず逃げる6年生だった、
冷静に手袋を脱ぎ、丁寧に袋に入れ近くのゴミ箱に捨てると晴に呟
く。
ハク「ゴメンね、巻き込んで……」
 俺は思った、逃げれた筈なのに戻って来たハクの行動、ソレに俺
に謝った事、俺はコイツが悪い、ましてや感情に任せてキレるなん
て事をするのだろうかと……

 そして翌朝、その6年生に待ち伏せされた俺達2人は仲良くボコ
ボコにされた。
晴「いてて……おい大丈夫か?」
ハク「ごめん巻き込んで」
晴「……昨日も言ってたなソレ、俺が自分で首突っ込んでるんだか
ら気にする事はないぞ!」
何故か照れてるハクがいた、2人はボロボロになった姿を互いに見
て笑いが何故かこみ上げて笑い合った。
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