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廃墟脱出編

追い込まれる6人

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皆に緊張が走る……

 心のざわめきはやがて部屋中に蔓延するかの様に広がり皆の呼吸
音も激しくなっていった。
晴「……」
(限界か、もう駄目だな……)
小声「聞いてくれ、一番端に居る正人と俺でパーテーションを持ち
上げ、そのまま壁にしてゾンビを押し込む、その隙に陸は美香を時
男はユキを連れて外に出るんだ」
正人「お?俺?無理だよ」
晴「無理でもやるしか無いんだ」
正人「……わ、わかった」
陸「僕もユキさん支えながら行くなんて無理だよ……」
時男「支えながら何てゾンビの格好の餌だぞ俺は嫌だね」
晴「……時間が無い、正人1、2、3で行くぞ」
時男「お、おい!俺は嫌って言ってんだろ」
時男の言葉を無視して晴が掛け声を小声でかける
「1、2、3!それ!」
正人「ひぃいぃ」
パーテーションを持ち上げ渾身の力でゾンビを押し出した。
正人「おっ重い!」
晴「頑張れ!」
 力が足らない正人側に仕方なく歩幅を合わすのをやめ一気に晴が
パーテーションを押し込んだ、晴の予定してたゾンビを押し込む事
は出来なかったが3分の1を正人を軸に半円を描く様閉じ込める様
に押し込むのだった。

晴「今だ!」
 そのまま押し込みゾンビの動きを封じるが時男、陸は女性を抱え
ての動きは遅く2体がドア前で進路を塞いだ、
陸「晴さん!駄目だ!行けないよ!」
晴「正人!進路のゾンビ頼む!」
 挙動不審の様にどうしていいかわからない正人が棒を持ってゾン
ビに殴りかかろうとするが怖気付き、後退する……
晴「……正人!」
正人「無理無理無理!」
晴「……じゃこちらを抑え込んででくれ!」
正人「ゾンビの集団を!冗談じゃ無い!」
時男「そんな事言ってる場合か!行けよ!」

 動かない正人、女性を抱える陸、時男にゾンビが近づく、更に外
かのゾンビもドアに近づいて来ている様子が見えた。

 晴はパーテーションを蹴り倒れるゾンビに背を向けると正人の横
を猛ダッシュで通り過ぎ一気にドア前のゾンビ2体丸ごと外へ吹き
飛ばした。
「正人!陸と一緒に美香を支え、今の内に出るぞ!」
正人「わっ解った」
急ぎドアを出る6人
時男「ユキ!てめ歩きやがれ!」
ユキ「足が、血が……」
 錯乱状態のユキに失神する美香、女性2人は歩ける状況では無
かった、長さにして30m程の長い行き止まりにある廃墟から完全
脱出は先ず此処を抜け出す必要がある。

 通路にはゾンビ10体、パーテーションで封じたゾンビ、廃墟内
に居た者も一斉に出てきはじめていた……

ーー廃墟ビル屋上ーー

佐々木「おっ出て来やがったぜ、やるじゃん!しかし、おいおい何
だヘロヘロじゃねーか、バッドエンディング寸前てとこか」

ヨタヨタ歩きの晴達を見て佐々木が笑った。

 その行き止まりの道に小石を投げ誘導するも数の多くなった大通
りのゾンビ達自身の呻き声でかき消されうまく誘導する事が出来な
くなっていた。
栗栖「そんなうまくは毎回行かないか」
佐々木「追加注文だ佐藤!」
佐藤「一気に集める為の花火はもう無いぞ」
佐々木「えー!終わりかよ……じゃあもう殺ちゃう?」
不敵な笑いをする来栖が呟いた。
栗栖「アレやるか」
栗栖「じゃ次、佐藤よろしくアレだせ」
佐藤「アレってあれかマジでやんのか……」
佐々木「アレか!アヒャヒャこりゃいいや、早く行けよオラ」
佐藤「……解った、俺生きてかえれんのか」
栗栖「大丈夫だ、完全防御だからな隙間も埋めた」
佐藤「何かあったら助けてくれよ?頼むぜ?

ーー廃墟前ーー

晴「正人、美香を頼む、俺が活路を開くから大通りまで何とか運び
出してくれ」
正人「お前1人で前にいる10体倒すってのか無理だろ!」
晴「無理ってさっきから言ってるが、言葉にしたら無理が現実にな
るぞ、今はやるしか無い、やるしか無いならやるだけだ!」

 力強い晴の言葉に陸は持っていたポケットのナイフを晴に渡そう
とポケットに手を入れた、だが……再びしまい込み大事にナイフを
守る様に俯いた。

 晴は近くにあるビール瓶の入ったプラスチックケースを拾い
(ボトルコンテナ、ボトルクレート)それの隙間に左手を差し込み
盾にした、正人が持っていた棒を握り締め剣の代わりとしゾンビに
立ち向かう、横から叩くのではなく突く様にゾンビを倒す、棒の強
度からしてそれは有効な手段である、近寄る敵にボトルケースで力
任せに押し込むと晴の怪力にゾンビは勢いよく倒れ2体を巻き込ん
で激しく転倒する、うち三体が動きを封じられ前方が少し開いた、
今がチャンスとばかりに5人はその隙間から大通りへとーー

残り7体、後ろは迫るゾンビ集団、後退は無い。

 晴得意のタックル突進で飛ばす方向を計算に入れ激しく飛ばすと
更に三体が時男達の目の前から消える、そして残り4体。
時男「行ける!行ける!」
正人「すげーな彼奴、逆らわなくて良かった」
陸「晴さん凄い……」

 希望に抱える手に力が入る、支え痺れる腕の辛さをしばし忘れ見
る側にも晴の豪快な戦い方が彼等のアドレナリンを脳内に分泌させ
た、うち一体が晴の死角から彼等に近づく、それに気付き棒をゾン
ビの足に投げ込むと足をとられ転倒するゾンビ、だが武器を失った
晴の前を阻む残り2体が堂々と立つ、一体のゾンビが晴の腕をわし
掴みにすると逞しい肉に喰らいつこうとするが、力任せに強引に腕
を振る、あまりの力強さにゾンビがその勢いに体を引っ張られ豪快
にまるでオモチャの様に振り回されると埃をたて滑るように放り投
げられた。

ーー残り一体

しかしその前には……更なるゾンビ達が5体と彼等の予想もしない
異様な影が前に立っていた……
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