とある神官の懺悔

文夜

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とある神官の懺悔

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どうか君が恨まれないように、自身で恨まないようであれ、

全ては私のせいなのです、あなたのせいではない

無知だったから貴方が悪いのではない、すべてを教えなかった私が悪いのです

だからどうか安らかに眠りなさい
貴方は善い子なのだから

------------------------------------------------------------


どうしてこんな無知な子供に残酷なことができようか、

魔族が人々を脅かしている時代


王国では、勇者として光の神の加護を持つ齢12の少年が選ばれた

その子は、いま自分の身に何が起きているのか、これからなにが起こるのか理解していない無知な子だった

そんな子を私は神官として

勇者にしなくてはならない


教皇様からはこの少年をな勇者にするように、それともう一つ、ご命令を承った、

な勇者といっても、扱いやすい操り人形の勇者という事なのだがね


どうして断らないかって、

まあ、私も俗に言うな神官だからね

その子とは違ってそのことを知っているけれども



でもまあ、この時代
客観的に見れば魔族は悪者ではない、悪いのはこの王国の奴らである

魔族の土地に無断で侵略し、食べ物を奪い、魔人を殺した

このことを何度も繰り返した、

その結果魔族が攻めてきたわけなのである

仕方がないというか、必然だと思った

しかし王国はそれを許さなかった

そこで勇者を作り上げた

勇者はそのことを知ってもなお、魔族を滅ぼさなくてはならない立場にある




だから私は、その子に勇者は絶対的な正義だと教えた

そして魔族は絶対的な悪であると、魔族が全て悪いのだと

教えた

そして、それ以外は何も教えなかった 

 
何故だって?

致し方あるまい、こんな子供に

悪いのは王国で、魔族は一切悪くないのだが、国の命令で魔族を滅ぼさなくてはならない、罪のない人々を殺さなければならない


教えられようか、


だから、私は、あの子が全ての魔人を殺して戻ってきたときは、笑顔で褒めてあげる

さすが貴方だと、貴方は素晴らしい勇者なのだと



え、可笑しいと、

いや、おかしくはないよ

私はあの子に喜びを、幸せを、ただそれだけを与えたい

苦しみも、後悔も与えたくない、

これは私のできる限り最大の贖罪である



あの子が勇者になり、3年が経った、

そしてついに魔王との対決を迎えた

魔王といっても、悪いことをしている魔人ではない、魔人の国の王である。


私もついに覚悟を決める時に来た、

教皇様からのもう一つの命令を遂行するために

それは勇者を殺すこと


だが、これだけは示しておこう
私は決して勇者を殺したいのではない、逆に愛している、
だからこそなのである


魔王を討伐し終えた勇者たちは、英雄として讃えられる

しかし、その強大な力に恐れをなすものたちもいる
国が奪われるのではないか、大きな力を使い我々を殺すのではないかと


だから、教皇様は

立派な勇者にしろという命令と魔人の王が死んだら勇者を殺せという命令を

勇者を育てる私に与えた


だから、私は初めから命令を遂行するつもりであった


だが、ばかばかしいこんな奴らのためではない、あの子のためだ


ほかの勇者の仲間たち、魔法使いと武闘家も同じ命令を受けているから

だから、私が殺すのだ

あの子が決して痛みのないように、そして裏切られたと気づかないように



勇者一行と魔王との戦いの終盤、あの子は魔王と相打ちとになり行動を止めた、

そして、私の名を呼んだ

私は聖の呪文、勇者と魔王を殺す呪文を唱えた


こうして、魔王を討伐した





私は、神官であるが神など信じない、

しかし、神に祈るしかない

あの子の行く末を

あの子は何も悪くない、全て私が悪いのです

あの子の罪は、私の罪、

どうかあの子が全てに気がつきませんように、
すべてを知って悲しみませんように


いまも、あの子が私の名を呼ぶ声が

あの子を抱きしめた時のあの体温も腕の中に

残っている



ああ、神さま

もし私に慈悲をくださいるならば、どうかあの子に安らぎを、お与えください



無知な子供と神官の献身





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