僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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メイド長と優男シェフの慰安旅行

15話

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私たちは急いで店に駆け寄る。

既にあたりは静まり返っていて、歩く人達はほとんど居なかった。

「すまない、夜遅くにこんなことまで付き合わせちゃって。」
「いえ、お気になさらず。」

時刻は既に12時近くを回っていた。
いつもなら眠っている時間だったけど、今は寝ていられない……そんな感じがした。

お店に入り、金庫を空けてみると確かに封筒があった。
それをみると、尾崎 晃へ
という紙があって、私たちは恐る恐るこちらの遺書を見た。

そこには、少しだけ崩れた文字が綴ってあった。

晃へ

これは俺からの最後のメッセージとして書いています。
多分、晃がこれを見てる頃には俺はもうこの世の中にはいないでしょう。

俺はもう長くないです。
医者からはガンだと伝えられて日に日に弱っていくのを感じます。
前よりも手が動かなくなったり、突然ボーッとして言葉が出ない日もあります。
もう……もって数ヶ月くらいだと思っています。

思えば俺は晃にたくさん迷惑をかけてきました。
いやいやパチンコを打たせたり、手を挙げたこともありました。
きっと、沢山恨んでたでしょう。

母親が変わったり、俺が帰ってこないこともありました。
そんな時もお前は泣きはしなかったけど、俺への憎しみでいっぱいだったでしょう。

それでも、料理の道を進むと決めていた晃をみて俺は言葉には出せなかったですけど、誇らしかったです。

最後に、これだけは聞いてください。
どうしようもない父親で、本当に申し訳なかった。

あと、俺は先日晃の働いてる店で料理をこっそり食べに来たんだけど……どれも文句なしの味だった。
昔皿を投げたロスティーも食べたけど、あの頃とは比べ物にならないくらい美味かった。

お前なら、いい料理人になれる。
俺は、息子が晃で本当に良かった。


「…………。」
「……大丈夫ですか?あきらさん。」
「……少し、1人にしてもいいですか?」
「はい。」

私は店を出てタバコに火をつける。
その瞬間、男の号泣が聞こえてきた。
あきらさんの声だった。

普段、優しさに溢れた声とは違う。
年甲斐もなく、大きく乱れた男泣きというものだった。

どれくらい泣いたのだろう……20分くらいかな。
私も、文章を見て……少しあきらさんに釣られるように涙が出ていた。

あきらさんは立ち膝になって紙におでこを当て縋るように泣いていた。
きっと、それだけあきらさんも父親を愛していた。

あきらさんは間違いなく……愛されていた。
それは不器用で、ぶつかり合いもあったけど最後の最後で分かり合えた瞬間だったのかもしれない。
最後の最後であきらさんは憎んでた父親に認められていたのだ。

この時だけは何故か、セブンスターの味が分からなかった。
それだけ私も動揺していた。

私には知る由もない感情だったから、あきらさんになんて声をかけるべきか……この時ばかりは分からなかった。親の愛を知らないから、どんな人かも覚えてないし……忘れてしまったから。

私は、あきらさんの何になれるだろう。
こんなにも理解できてない自分が……情けない。

そう思うと、あきらさんが店を出て私に声をかけてくれた。

「……ごめん。もう入っていいよ。」
「大丈夫ですか?」
「もう大丈夫、少しだけ……取り乱したね。」

あきらさんは少し顔が赤くなっていて、顔は濡れていた。
目が少しだけうさぎのように腫れているのできっと相当の大泣きだったんだろう。

私たちは、テーブルに座ってしばらく無言だった。
一瞬のようで……永遠に感じる。

「ごめんなさい、こんな時……どんな声をかければいいのか分からなくて。」
「いや、一緒に居てくれるだけでいいんだ。ありがとう、俺はことねさんが背中を押してくれなかったら二度と親父の墓へ行くこともなかった。」

どうやら、あきらさんにとっては今の私は正解の行動だったみたいだ。
好奇心で親に合わせたけど、それが本当に分かり合えたきっかけになったみたいで感謝されていた。

「まさか、親父が俺の料理を知らない内に食べていたなんて驚きだったな~。言ってくれればサービスしたのによ~なんておもったり。」

「きっと、サプライズのつもりだったんでしょうね。きっとその場で美味しかったって言ったらあなたはそこで満足していたかもしれない。だからこそ、言わなかったのかもしれないですね。」

「あはは、さすがことねさんだ。確かに俺は親父の呪いが早く解けてたら成長が止まっていたかもしれない。これは、親父からの宿題のようなものだったのかもしれないな。」

あきらさんはいつも通り優しく、それでいて明るく接してくれる。
きっと、お父さんに認められない呪いが解けたのかもしれない。

「でもね、俺は包丁を研ぐのをやめないよ。だって……地獄で親父に俺の名前が聞こえるくらいの料理人にならなきゃだもんは!」
「流石あきらさんです。」
「さーて!慰安旅行もこれで終わりだ!明日から仕込みするぞ~!」

どこか張り切っているあきらさんを見ていると、私も笑みが零れてくる。
それでこそ、あきらさん。
私が好きになった人なのだから。

私はふと、彼を後ろから抱きしめる。
余りの愛おしさに、身体が動いてしまった。

「ちょっと、急に暑いよ!あはは。」
「嫌なら離れます?」
「いや、もう少しこのままでいよう。……ことねさん、これからもよろしくね。」

私は、彼の言葉を受け入れ、静かに頷く。
そして、彼と見つめ合いまた愛を紡ぎ接吻を交わす。

お店の灯りは消えて、夜とともに消えて行く。

街の中は、排気ガスとコンクリートが入りまじる都会の臭いで溢れている。

車の音がビルに反響をして、不気味に鳴り響く。
街ゆく人々はもう夜中なのかどこか意識は朧気で無気力で……その店の変化を目に留めるものはいなかった。

その様子は旅の非日常からいつもの日常へ変わっていくのを示唆するようだった。
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