僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

文字の大きさ
188 / 369
僕の役割は文化祭実行委員

7話

しおりを挟む
その後……おれの日常は文化祭に1点集中でひたすら作業に没頭していた。

朝起きては一日のタイムテーブルをつくる作業をして、時にはオープニングムービーをつくったりもした。

各クラスに行ってはみんなに踊ってもらってそれを切り抜いたりなど……会長と俺のコンビネーションはとても良かった。

でも、会長との時間はギクシャクしていた……かもしれない。
俺はパソコン作業も慣れてきて一通りの仕事をこなしている。

「会長。」
「な……なんだい!天野くん!」

このように明らかに会長が挙動不審だった。
まあ……俺たちは行為こそしてないものの若気の至りで一夜を共にした。そんでもって人間関係を崩しているので気にしているのだろう。

まあ、最初の1週間こそ辛かったけど、俺は早乙女の後押してとにかく目の前のことに没頭をしていた。

「あの……こちらの書類のチェックと……あとこのファイルはどこにありましたっけ?」
「あ……ああ、それは共通ファイルの中にあるぞ!ほら……名前書いてあるだろ?」
「あ、ほんとだ!ありがとうございます!」

再びお互い無言になる。
状況はあんまり芳しくはないけど、俺はとにかく事務作業が向いているようだった。
人と話しをしたりするのも楽しいし、できないと思ってたことがやってみると意外とできたりもするのだ。

将来、こんな感じで企画系のサラリーマンをやってもいいのかもしれない。
実際、俺は会長より少し遅い程度のスピードで作業を終わらしていた。

しばらくして、俺たちは作業を終えて伸びをする。

「くう~、つっかれた~。」
「お疲れ様。こんな夜遅くまですまないな。」
「いえいえ、会長の教えの賜物です。」
「な!?なにを……全く、君は罪なヤツだな。」
「うわぁーひでぇ。」

人っていうのは一緒にいる時間が長いと不思議と打ち解けて来るもんだ。
俺は会長との一件はほとんど許していた。
実際、教え方も分かりやすいし勉強になる。

「……天野くん、今日もご飯どうだい?」
「いいですけど、ラブホはNGっすよ。」
「ああ、約束しよう。あれから君には罪悪感しかなおよ。」

俺たちは上着を着て生徒会室を出る。
そういえば、もう鈴虫の声も聞こえなくなってきて、上着が必要になってきたのだなと感じる。
夜のビル街は案外風が冷たく感じた。

そして、俺たちは例の中華屋さんでまたあの時と同じようなメニューを食べる。

「……あれから、例の彼女さんとは?」
「あれからずっと無視されてますね。」
「そうか……すまない、本当に……。」
「ああ、いや!大丈夫ですよ!今は誤解を解くために時間をかけて行こうと思ってますので。」
「…………君は強いな。私も君のようなメンタルがあればこんなにめんどくさいやつにならなかったのに。」

会長は、普段はめちゃくちゃ強い。
イケメンで女の子から黄色い声援を受けてるし、生徒会での仕事で書類作成やスピーチ、先生や部活とのやり取りなど全てにおいてハイスペックだ。

だけど、2人の時は少し自信のなさげな女の子だった。
この自己肯定感の低さは何か原因でもあるのだろうか?

「会長、もしかして最近嫌なこととかありましたか?」

すると、会長は目を見開いて静止する。
そして、下に俯いてからはは……と乾いた笑いを始めた。

「君には全てお見通しというわけか。」
「いえ、多分そこまでは分かってないです。」

会長、俺のことをエスパーだと思っていらっしゃる?
まだ出会って一週間なので全部は分かるわけないだろう。
会長は、続けた。

「前に……副会長と議長が付き合って生徒会を放棄した話を覚えているか?」
「あ~、そんなのありましたね。」
「私は……議長とは幼なじみだった。」
「……ほう。」

「ずっと好きだったんだ。私が彼を守って……いつもありがとうって笑ってくれてな、そうする度に私は彼に振り向いてもらうために沢山のことをして今の私になったのだ。」

なるほど、確かに会長は面倒見が良い。
こうやって人に与える事で彼女は自分の価値をあげることに必死だったのだろう。

「そしたら……だな、もう一人仲良かった副会長と駆け落ちをしてしまってな。生徒会の仕事をしない日も増えて、ついには2人とも学校にすら来なくなってしまったのだ。」
「つまり、会長は負けヒロインというこ」
「いいんだぞ、私を負けヒロイン認定したら君を襲って勝ちヒロインになっても。」
「……すみません。」

ちょっと言い方を間違えて怒らせてしまったようだ。

二人でしばらく無言になる。
俺たちは普段自分から喋らない性格のせいか適度に無言の時間があった。

「私はな、何のために生まれてきたのか分からない。」
「いや、何を言ってんすか。神は二物を与えないって言葉を見事に無視してるじゃないですか。」
「あはは、君は冗談が本当に上手い。」

いや、美形でモテて仕事が出来て、家が金持ちの人が何言ってるんだろう。

「でもな……親の期待に応えても、習い事や勉強、生徒会などをこなしても本当の私を見て褒めてくれる人が居ないんだよ。だからこそ、彼が必要だったのに……。」

会長は涙目だった。
きっと、みんなは彼女を完璧王子としか見てないのだろう。
憧れは理解から最も遠い感情なのだから。

「本当は、普通の女の子でいたかった。誰かに愛されたかった。それだけなんだ。」

やっと、俺は彼女を理解した。
きっと、様々なプレッシャーと孤独感を抱えて、それを俺が理解してくれそうだと思ったからなのだ。
そこはどこか今の俺にも少し似ているところがあった。

「なんでなんだよ~。私の……なにがいけないんだ。」
「なんででしょうね。」
「……やっぱり、鼻が高すぎるのか?」
「……え?」
「いや、私の顔は美形の黄金比なのだが、少しだけ鼻が0.1mmだけ黄金比より高いのだ。」

どうしよう、何言ってるか分からない。

「だーっ!会長、多分そんなものは関係ないと思います!」
「そう……なのか?」
「それよりも、例えば今の人間関係を大事にしたりとか、気になった人にアプローチをするとかの行動した方がいいですよ。会長は……行動力はあるのに恋愛面は受け身すぎるんです!」
「た……確かにそうかもしれない。」

会長は話しててたまに思うけど、この人……ド天然だ。
神は二物を与えないという言葉は、意外と的を得るようでもあった。

「あははは!意外と……私はアホなのかもしれないな!」
「会長は……アホですよ。」
「もっと言ってくれ!」
「アホ会長!」
「はぁ……はぁ……もっと。」

いや、なにかに目覚めとるがな。
どうしよう、この人罵られると喜ぶタイプだ。
ほっとくと手をつけられない。

「まあでも……とにかく文化祭が終わるまでは俺たち二人三脚でいましょう。今の俺には会長が必要ですし、会長も必要かもしれません。それが終わったら、自分の課題に向き合いましょう。これは協定です!」

すると、会長は俺を1点に見て静かに……そして嬉しそうに頷いた。

「ああ、これからも……頼む。」
「ええ、こちらこそ。」

問題は解決していない。
だけど、会長をキチンと理解したら少しだけ肩の荷がおりた。

文化祭まであと2週間……これが終わったら、俺も舞衣と向き合うとしよう。
それまで、あと少しだけ目の前のことに集中していきたい。

そう思って啜ったラーメンは少しだけ伸びておるけど、疲れた体に元気を与えるようでもあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...