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遥香と秘境の吊り橋物語
18話
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「畑薙湖……着いたーーーー!!」
慣れない道を進んでやっとのこと私たちは畑薙湖に到着する。
酷く険しい道だった。
道の舗装がボロボロなところはあるし、落石にはヒヤッとさせられるしとにかく肝を冷やされてばかりだったと思う。
私はしばし運転の疲れを癒すべくダムに乗りかかり体を休めていた。
畑薙ダムは片方は溜まった水が満ち溢れており、飛び込んだら水で体が冷やされて気持ちよさそうな深さをしていた。
反対側を見ると……妙にダムが作る人工の流線型が高さによって恐怖感を感じてしまうほどだった。
コンクリートは冷たく硬そうで奈落に落ちる恐怖感が本能をくすぐってしまう。
こんなものを大自然の中人間は作ってしまうのだ。
そりゃあ他の生物とは明らかに違う生態系を持ってしまうのも納得してしまう。
「さて……なんか疲れちゃったな。そろそろ下流に戻る?」
私はみんなを見て提案をしようと振り返る。
もうここまで来たのだ。後はゆっくりグルメ旅でもしながら……。
「直輝くん!ここまで来たら畑薙大吊橋まで行かなきゃ損だよ!」
「そうだね、彩奈!いやぁ……スリルがやばいって聞いたけどどんなとこなんだろうな。」
「……熊よけ鈴持ってきましたよ。」
いつの間にかみんなはその先の吊り橋を目指して歩き出していた。
「ちょ、待ってよ!私も渡るってば!!」
ダムの奈落に私の叫び声が反響してしまう。
こうして私たちは今回の旅の終着点である畑薙大吊橋を目指すことになったのだった。
☆☆
「それにしても……凄く酷い道だね。」
ここまで行くと、道の舗装はほとんどされていない。
道が少しぬかるんでる感じがするし、落ち葉も散らかってカーペットのようになっていたけど、泥が着いてるので少しくすんだ色をしている。
それだけでも、人の手入れが入らない土地なのだと感じる。
「熊とか出ないわよね?」
大自然にいると自分のテリトリーに外れてるせいか全身に緊張感が走る。
最近、ニュースで熊の事件が多発してるのを思い出すと余計に緊張し、手のひらが汗ばむ感覚があった。
「……熊にあった時には対処法があります。」
「あ、なんか聞いたことあるわね!どんなのだっけ?」
ことねさんは涼しい顔で歩いて先導してくれる。
博識な彼女のことだ、きっと正しい対処法で何とかするのだろう。
「……ぶちのめすんですよ。自然界では舐められたら終わりです。」
ヤンキーの世界かな?明らかに認識が違った気がするんだけど……。
「なにいってんすか!背中を見せないで正面をみて後退りするんですよ!とにかく逃げない事がマストです!」
そんなことねさんのボケを直輝が正す。
直輝は雑学に長けてるから確かにこの場をやり抜けそうだった。
そんな話題に舞衣ちゃんは難しい顔をしていた。
どうしたのだろう、直輝も認識違いとかあったのかな?
「………熊ってどんな味がするんだろう。お腹すいた。」
常軌を逸した発想に青ざめてしまう。
え、確かにジビエとして食べることは出来るけど今ここで食欲そそられる彼女の肝っ玉には私も驚愕せざるを得なかった。
そんな、バラバラなことを考えていたらついに畑薙大吊橋が目の前に現れた。
「「「な……なんじゃこりゃあー!」」」
畑薙大吊橋は夢の吊り橋よろしく木造の作りとなっていたのだけど長さは180m程度、高さは何と……30m程にもなっていた。
吊り橋は風になびいていて大きく揺れて落ちてしまいそうだった。
真ん中にはベコベコとした金属の板が2枚足場として並んでいる。
「……………どうしよこれ。」
みんなが橋の前で足を止めていた。
スリルなんて生ぬるいもんじゃあない!この橋には死を連想とさせるような凄みがある。
ここを渡るにはそれを飼い慣らす覚悟が必要だった。
「俺から行く。」
そんな中、直輝が先導する。
足は少しだけ振るえていたけど1歩また1歩と進んでいた。私達もそれに連れられ魔の橋を渡る。
風がまた吹き荒れ私達はゆっくり、またゆっくりと進んでいく。
私も橋を渡ると足がガクガクに震えてしまう。
下を見ると、まるで宙に浮いてるかのような少し開放感抜群すぎる景色が私に戦慄を走らせた。
でも、確かにこの橋は怖いのだけれど……よく見るとそれ以上にあるものが目に入った。
「待って……よく見たらめちゃくちゃいい景色じゃない!」
私を上下左右を見渡す。
確かに高さの恐怖はあるけれど、四方八方に紅葉が見えていた。
赤、緑、黄色と複数の紅葉が吊り橋という細い道を包んでまるで万華鏡の中にいるかのように様々な色が私たちを包んでいた。
川のせせらぎも心地よく、吊り橋だからこその景色がより自然の美しさを際立たせていた。
「こりゃあ……恐怖の対価としてはデカすぎる報酬かもね。」
「……綺麗。」
「写真……撮りますか!」
こうして私たちは目的の橋を渡りきる。
すると、目の前にはまだまだ道が続いていた。
どうやらこの先には登山道があり、更なる猛者はここを乗越えて行くようだったけど、私たちはここで足を止めることになった。
これ以上は、行く理由がないからだ。
旅は深追いせずに、適度な距離の方が良い。
「じゃあ……帰りますか!」
「そだな、お腹すいたし……。」
「……私も満足です。」
こうして、私たちは道を引き返す。
もうこれ以上ハードな道は無いはずだから……。
「でも……その前に、このやばい吊り橋……もっかい渡らなきゃだ。」
すぐ目の前にハードな道、ありました。
というか……今までの険道を戻るのかと思うと、少しだけ私は青ざめてしまう感覚があった。
まだまだ私たちの旅は続く。
慣れない道を進んでやっとのこと私たちは畑薙湖に到着する。
酷く険しい道だった。
道の舗装がボロボロなところはあるし、落石にはヒヤッとさせられるしとにかく肝を冷やされてばかりだったと思う。
私はしばし運転の疲れを癒すべくダムに乗りかかり体を休めていた。
畑薙ダムは片方は溜まった水が満ち溢れており、飛び込んだら水で体が冷やされて気持ちよさそうな深さをしていた。
反対側を見ると……妙にダムが作る人工の流線型が高さによって恐怖感を感じてしまうほどだった。
コンクリートは冷たく硬そうで奈落に落ちる恐怖感が本能をくすぐってしまう。
こんなものを大自然の中人間は作ってしまうのだ。
そりゃあ他の生物とは明らかに違う生態系を持ってしまうのも納得してしまう。
「さて……なんか疲れちゃったな。そろそろ下流に戻る?」
私はみんなを見て提案をしようと振り返る。
もうここまで来たのだ。後はゆっくりグルメ旅でもしながら……。
「直輝くん!ここまで来たら畑薙大吊橋まで行かなきゃ損だよ!」
「そうだね、彩奈!いやぁ……スリルがやばいって聞いたけどどんなとこなんだろうな。」
「……熊よけ鈴持ってきましたよ。」
いつの間にかみんなはその先の吊り橋を目指して歩き出していた。
「ちょ、待ってよ!私も渡るってば!!」
ダムの奈落に私の叫び声が反響してしまう。
こうして私たちは今回の旅の終着点である畑薙大吊橋を目指すことになったのだった。
☆☆
「それにしても……凄く酷い道だね。」
ここまで行くと、道の舗装はほとんどされていない。
道が少しぬかるんでる感じがするし、落ち葉も散らかってカーペットのようになっていたけど、泥が着いてるので少しくすんだ色をしている。
それだけでも、人の手入れが入らない土地なのだと感じる。
「熊とか出ないわよね?」
大自然にいると自分のテリトリーに外れてるせいか全身に緊張感が走る。
最近、ニュースで熊の事件が多発してるのを思い出すと余計に緊張し、手のひらが汗ばむ感覚があった。
「……熊にあった時には対処法があります。」
「あ、なんか聞いたことあるわね!どんなのだっけ?」
ことねさんは涼しい顔で歩いて先導してくれる。
博識な彼女のことだ、きっと正しい対処法で何とかするのだろう。
「……ぶちのめすんですよ。自然界では舐められたら終わりです。」
ヤンキーの世界かな?明らかに認識が違った気がするんだけど……。
「なにいってんすか!背中を見せないで正面をみて後退りするんですよ!とにかく逃げない事がマストです!」
そんなことねさんのボケを直輝が正す。
直輝は雑学に長けてるから確かにこの場をやり抜けそうだった。
そんな話題に舞衣ちゃんは難しい顔をしていた。
どうしたのだろう、直輝も認識違いとかあったのかな?
「………熊ってどんな味がするんだろう。お腹すいた。」
常軌を逸した発想に青ざめてしまう。
え、確かにジビエとして食べることは出来るけど今ここで食欲そそられる彼女の肝っ玉には私も驚愕せざるを得なかった。
そんな、バラバラなことを考えていたらついに畑薙大吊橋が目の前に現れた。
「「「な……なんじゃこりゃあー!」」」
畑薙大吊橋は夢の吊り橋よろしく木造の作りとなっていたのだけど長さは180m程度、高さは何と……30m程にもなっていた。
吊り橋は風になびいていて大きく揺れて落ちてしまいそうだった。
真ん中にはベコベコとした金属の板が2枚足場として並んでいる。
「……………どうしよこれ。」
みんなが橋の前で足を止めていた。
スリルなんて生ぬるいもんじゃあない!この橋には死を連想とさせるような凄みがある。
ここを渡るにはそれを飼い慣らす覚悟が必要だった。
「俺から行く。」
そんな中、直輝が先導する。
足は少しだけ振るえていたけど1歩また1歩と進んでいた。私達もそれに連れられ魔の橋を渡る。
風がまた吹き荒れ私達はゆっくり、またゆっくりと進んでいく。
私も橋を渡ると足がガクガクに震えてしまう。
下を見ると、まるで宙に浮いてるかのような少し開放感抜群すぎる景色が私に戦慄を走らせた。
でも、確かにこの橋は怖いのだけれど……よく見るとそれ以上にあるものが目に入った。
「待って……よく見たらめちゃくちゃいい景色じゃない!」
私を上下左右を見渡す。
確かに高さの恐怖はあるけれど、四方八方に紅葉が見えていた。
赤、緑、黄色と複数の紅葉が吊り橋という細い道を包んでまるで万華鏡の中にいるかのように様々な色が私たちを包んでいた。
川のせせらぎも心地よく、吊り橋だからこその景色がより自然の美しさを際立たせていた。
「こりゃあ……恐怖の対価としてはデカすぎる報酬かもね。」
「……綺麗。」
「写真……撮りますか!」
こうして私たちは目的の橋を渡りきる。
すると、目の前にはまだまだ道が続いていた。
どうやらこの先には登山道があり、更なる猛者はここを乗越えて行くようだったけど、私たちはここで足を止めることになった。
これ以上は、行く理由がないからだ。
旅は深追いせずに、適度な距離の方が良い。
「じゃあ……帰りますか!」
「そだな、お腹すいたし……。」
「……私も満足です。」
こうして、私たちは道を引き返す。
もうこれ以上ハードな道は無いはずだから……。
「でも……その前に、このやばい吊り橋……もっかい渡らなきゃだ。」
すぐ目の前にハードな道、ありました。
というか……今までの険道を戻るのかと思うと、少しだけ私は青ざめてしまう感覚があった。
まだまだ私たちの旅は続く。
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